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異世界転生した俺は資産50億円を使い切りたいのに、リターンのせいで全然0にならない  作者: 鏡まやたか
第2章 ガルドリア王国編

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第29話 獣闘儀開幕

決戦当日の朝。

レイは、静かに目を閉じたまま昨夜の出来事を思い返していた。


サーニャの状態は、もはや疑いようがないほど回復していた。

それどころか――ガルムとの戦闘、そして最後に見せた剣技から判断するに、本人もかつての全盛期に限りなく近い――いや、それすら超えている可能性を自覚していた。


(……あいつ、ずっと抑えてたのか)


自分自身の力を信じきれずに無意識にブレーキをかけ続けていたようだ。


だが、それが外れた。


そして今、サーニャはその力を自分のためではなく、この国を変えるために使うと決めている。


レイは小さく息を吐いた。


(――十分だ)


これで、盤面は整った。


やがてレイたちは、決戦の地――王都中央に位置する巨大な決闘場へと足を運んだ。


決闘場に着くとその光景は、圧巻の一言だった。

観客席は、すでに人で埋め尽くされている。

というより通路や階段にまで人が溢れ、押し合うようにしてその場に留まっていた。


「うおおおおお!!」

「やっちまえええ!!」


野太い歓声が、地鳴りのように響き渡る。


レイは思わず目を細めた。


「……すごいな。ここまで人が入るのか」


隣でルミナが言う。


「この国最大のイベントだからね。それに今回は、四天王と国王が直々に出てくる特別試合……そりゃこうなるよ」

「なるほどな」


納得しながらもレイはその熱気を静かに観察していた。


視線の先の席。

そこには国王が座していた。


獅子の威圧をそのまま体現したかのような存在感でこちらを睨みつけている。


その隣にはゼルド。


そして――


「おいおい……本当に生きてたのかよ、サーニャ」


低く、嘲るような声が響く。

振り向くとそこに立っていたのはバルガだった。


巨躯。圧倒的な質量。

象の獣人――純粋な“力”の象徴。


「まあいい。どうせ今日、ここで死ぬんだからな」


舌を覗かせながら笑う。


そして、その視線がルミナへと移る。


「それと……てめぇだ。裏切り者」


空気が一瞬で冷えた。


「容赦はしねぇぞ」


だがルミナは、その視線を一瞥しただけで――無視した。


完全な拒絶。

それがバルガの癇に障った。


「……チッ」


 舌打ちとともに踏み出そうとするが――


「よせ」


ゼルドが低く制した。


「どうせこのあと、嫌でもやることになる」


バルガは不満げに鼻を鳴らしながらも、踵を返した。


「……あいつらが残りの四天王か」


レイが呟く。

そして、ルミナへと視線を向ける。


「よし。予定通り先鋒は任せた」

「任せて」


やがて審判が中央へと進み出る。

場内のざわめきが、徐々に収束していく。


「――これより、第一試合を開始する!」


張り詰めた空気。


「ルミナ対――バルガ!!」


歓声が爆発する。


「はじめッ!!」


その瞬間、バルガが地面を踏み砕くように踏み込み、一瞬で距離を詰めた。


「嬉しいぜ……!」


口元が歪み、舌なめずりをする。


「一度、お前とは本気でヤりたかったんだ!」


巨大な腕が振りかぶられる。


「勝った後も、その体で楽しませてくれよなぁ!!」


次の瞬間――早く勝利後のルミナを愉しみたいバルガは、小細工なしにいきなり一撃必殺の拳を放ってきた。


「――破壊拳!!」


空気を裂き、地面を震わせる一撃。

それはまるで、隕石が落下してくるかのような圧力を伴っていた。


観客席から悲鳴に近い声が上がる。


だが、ルミナは、微動だにしなかった。


「……はぁ」


小さくため息をつく。


「……ワンパターンね」


そして、迫り来る拳の“中心”へ、静かに掌底のような一撃を合わせる。


次の瞬間。

バルガの掌に触れる。


「――《砕芯掌(コアシャッター)》」


衝撃は、外ではなく“内側”へと流れた。

そしてバルガの拳が静止した。


バキッ。


鈍く、嫌な音が響く。

それは拳の先から始まり、腕を伝い、肩へ、そして全身へと連鎖していった。


バキバキバキッ!!


「があああああああああああッ!?」


バルガが絶叫する。

その巨体が崩れ落ちる。


次の瞬間には、泡を吹きながら地面に倒れ込み――息絶えていた。


あまりの一瞬の出来事に会場は静寂に包まれた。

先ほどまでの熱狂が、嘘のように消え去る。


誰も、声を出せなかった。

ただ、目の前の光景を理解できずにいる。


ルミナは、ゆっくりと審判の方へ視線を向けた。


「……まだ何か?」


その一言で、審判の身体がびくりと跳ねる。


「ひ、ひぃっ……」


震える声。


「しょ、勝者……ルミナァァ!!」


その宣言と同時に場内がざわめきに包まれる。


ルミナが戻ってくる。


レイは思わず苦笑した。


「……すごいな。今の何をしたんだ?」


ルミナは淡々と答える。


「相手の力に合わせて、急所を突いただけ」

「いや、“だけ”って……」


レイの顔がわずかに引きつる。

だが、すぐに表情を引き締めた。


「……とりあえず、これで一勝だ」


ここまでは想定通り。


そして、レイは一歩、前へ出る。


「――次は、俺の番だ」

最後まで読んでいただき本当にありがとうございます。

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