プロローグ8 綾、城へ
「……わかりました、一緒に行きます……」
「ふん、最初からそう言っておけば良いのだ」
「は、はい……」
「良し、行くぞ。ついてこい」
「は、はい……」
渋々ながら同意してきた綾を見た何者かは、面倒そうに二、三度首を横に振った後、城に向けて歩き始めていった。
そうして先に進み始めた何者かについて行きながら、綾は何者かに名前を尋ねてみる。
「……」
「……」
「……」
「……あ、あの~……少しだけ、よろしいでしょうか……?」
「……なんだ?」
「あ、あの、あなたのお名前は、なんというのでしょうか……?」
「……名を、名乗れと言うか?」
「ひっ! あ、は、はい……名前を、教えてほしいですぅ……」
綾が名前を尋ねた次の瞬間、何者かが物凄い形相で綾を睨んでいく。
これに綾は震え上がりながらも、再度名前を教えてほしいと頼んでいった。
しかし何者かはこの綾の頼み事を一蹴してきたのである。
「ふん、断る」
「……ど、どうして、でしょうか……?」
「まだお主が間者ではないと証明されたわけでは無いからな。間者かもわからん者に、名など教えられるか」
「は、はは……そ、そうですか……」
「ふん……それよりもだ、ここから登城となる」
「……あ、はい……どうも……」
「ふん。遅れずについてくるのだぞ! 良いな!?」
「ひいっ!? わかっています! わかっていますから、一々怒鳴らないでください! 体がビクッ! ってなりますから!」
綾の頼み事を、間者かもしれない者に名は教えられない、と言って一蹴してきた何者かが、城に続く道の前で急に立ち止まった。
そうして綾の方に顔を向けると、遅れずについてこいと言ってもはやお決まりとなった怒鳴り声を綾にぶつけてくる。
これに綾はわかったと答えながら、怒鳴らないでほしい、と頼んでいく。
「……ふん、行くぞ」
「……はい……」
綾の頼みに答える事無く、何者かは先に進んでいった。
そんな何者かの言動を見た綾は一回だけ大きな溜め息を吐いた後で、何者かの後を追って城への道を歩き始めていく。
そうして城へ進んでく途中で綾は、自身が今向かっている城の名前がなんなのか? と何者かに尋ねていった。
「……あの、教えてくれないかもしれないと思いながら質問するのですが……」
「……なんだ」
「今向かっているお城の名前は、なんというのでしょうか……?」
「……」
「……やっぱり、お城の名前も話せませんか……?」
「……吉田郡山城」
「……え?」
「吉田郡山城だ! 聞こえなかったのか!?」
「い、いえ、聞こえました! ど、どうも、ありがとうございました!」
「ふん!」
突然城の名前を教えてくれた何者かに、綾は深く頭を下げながら感謝の言葉を伝えていく。
そんな綾の言葉を、何者かは不機嫌そうな様子で受け取っていった。
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