プロローグ10 綾、殺されそうになる
振り下ろされた刀を、綾は全力のバックステップを行う事で、かろうじて避ける事に成功する。
そうしてなんとか殺されずにすんだ綾は、自身のスポーツ経験に心からの感謝の言葉を伝えていくと、どうして自分が殺されそうになったのか、その理由を猛スピードで考え始めた。
「ひ、ひいぃっ!?」
「ぬうっ、逃げるな、この不届き者が!!」
(あぶねー!! よ、良かった、バスケをやってて! もしも何も体を動かす事をやってなかったら間違いなく斬り殺されてたよ! でもなんで!? 私、特に何か、この人の気に障るような事をした覚えは無いんだけど!?)
なんとか理由を考え始めた綾であったが、その理由が思い当たらずに、混乱してしまう。
するとそんな綾に、何者かが斬り掛かっていった理由を話してきた。
「……あ、あの……私、何かしちゃいましたか……?」
「……何かしちゃいましたか、だと……? ふざけるな!!」
「ひ、ひいっ!?」
「女……主は大殿の諱を口にした。主を斬る理由などそれだけで充分よ!!」
「……え? あっ!?」
(やっべー!! そ、そうだった、戦国時代だと諱は目上の人しか言っちゃいけないんだったー!! ど、どうする!?)
何者かが話した理由を聞いた綾は、戦国時代の名前事情を思い出して頭を抱えていく。
そうしてすぐにその思考を名前事情の事からどうやれば自身がここで斬り殺されずに生き残る事が出来るのか? という方向に切り替える。
一方の何者かは、一太刀目で仕留める事が出来なかった綾を今度は確実に斬り殺す為、ゆっくりジリジリと綾との距離を縮めてきていた。
「……女、次は外さぬ。必ず斬り殺す」
「……」
(考えろ! 死ぬ気で考えろ、綾! じゃないと本当に斬り殺されるぞ!!)
「……」
「……あっ!?」
(そうだ! 良い事かどうかはわからないけど、一つだけ思い付いた! どうなるかはわからないけど、とにかくやるしかない!)
なんとか自分が助かりそうな方法を思い付いた綾は、すぐにその方法を試していく。
綾は何者かの目の前で土下座をすると、誠心誠意の謝罪をしながらとある言葉を口にしていった。
「も、申し訳ありませんでした!!」
「……もう遅いわ」
「すみません! なにぶん南蛮暮らしが長かったものですから、日本の慣習をすっかり忘れてしまっておりました!!」
「……ぬ……南蛮暮らしが……」
「は、はい!! 申し訳ありませんでした!! これからは諱を呼ぶ、等という無礼な真似は絶対にいたしません!! ですからどうか、今回だけは……!」
「……ぬう……」
頭を地面に擦り付けながら必死で謝罪をしていく綾。
するとそんな綾の姿を見ている何者かの表情が少しずつ緩やかな物になっていった。
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