選ばれたくなかった
いつも読んでいただきありがとうございます。
今回は、
リオンにとってかなり大切な回です。
今まで冗談っぽく流されていたこと。
ずっと言えなかったこと。
それを、
ようやく本人の口から語る回になりました。
白の塔編も終盤に入り、
物語の核心へ近づいています。
それでは、第62話。
よろしくお願いします。
巨大な目。
それだけだった。
口もない。
身体もない。
ただ。
塔の奥の闇の中に、
巨大な目だけが浮かんでいた。
『白の巫子』
声が響く。
頭の中へ直接流し込まれるみたいだった。
「っ……」
リオンが顔をしかめる。
レンは反射的に前へ出た。
「リオンから離れろ!」
言ったあとで思った。
目しかない相手に何を言ってるんだ俺。
でも。
巨大な目は少しだけ動いた。
『邪魔だ』
「うわ返事した!?」
レンが飛び上がる。
その瞬間。
見えない衝撃。
「がっ!?」
レンの身体が吹き飛んだ。
床を転がる。
「レン!!」
ミアが駆け寄る。
フィオの魔法陣も展開される。
でも。
目は気にも留めなかった。
『白の巫子』
ただ。
リオンだけを見ている。
『帰ってこい』
静かな声。
でも。
命令みたいだった。
「……嫌だ」
リオンが答える。
目が細くなる。
『なぜ』
「なぜって」
リオンが笑った。
乾いた笑い。
「俺は道具じゃない」
空気が張る。
「塔のために生きろ」
「国のために生きろ」
「姫として生きろ」
リオンは目を閉じる。
「全部嫌だった」
レンは黙る。
たぶん。
これが本音だ。
ずっと抱えていた本音。
『お前は選ばれた』
巨大な目が言う。
『お前だけが特別だ』
「だから嫌なんだよ!!」
リオンが叫んだ。
初めてだった。
こんな感情をむき出しにするのは。
「選ばれたくなかった!」
塔が揺れる。
声が響く。
「普通でよかった!!」
静寂。
リオンは震えていた。
「男として笑って」
「仲間と旅して」
「バカみたいな話して」
涙は出ていない。
でも。
今にも泣きそうだった。
「やっと見つけたんだよ」
小さな声。
レンはその背中を見る。
いつもふざけていた相棒。
いつも笑っていた相棒。
でも。
ずっと苦しかったんだ。
『理解できない』
巨大な目が呟く。
『特別を捨てる理由が』
「そりゃそうだろ」
レンが立ち上がった。
頭が痛い。
身体も痛い。
でも。
前へ出る。
「お前、人の気持ち全然分かってないじゃん」
巨大な目がレンを見る。
怖い。
めちゃくちゃ怖い。
でも言う。
「リオンが嫌だって言ってんだから嫌なんだよ」
『――』
「それで十分だろ」
静寂。
フィオが小さく頷く。
ミアも剣を構えた。
そして。
セレナが少しだけ笑った。
「……そうね」
塔が震える。
巨大な目が揺れる。
初めて。
感情みたいなものが見えた。
『理解不能』
「だろうな」
レンは笑う。
「だって仲間だし」
その瞬間。
巨大な目の奥で、
何かが蠢いた。
そして。
塔全体が大きく揺れた。
ドクン。
ドクン。
ドクン。
心臓の音が加速する。
セレナの顔色が変わった。
「まずい……!」
「え?」
「心臓が目覚める!」
次の瞬間。
塔の最奥から、
巨大な扉がゆっくり開き始めた
第62話、ありがとうございました。
今回の主役は、
間違いなくリオンでした。
今まで、
* 姫様
* 白の巫子
* 特別な存在
と呼ばれてきた彼ですが、
今回初めて、
「選ばれたくなかった」
と本音を叫びました。
この言葉、
リオンの根っこの部分なんですよね。
周りから見れば、
選ばれた人は羨ましい。
特別な力があるのはすごい。
でも本人からしたら、
それがずっと重荷だった。
だから逃げた。
だから旅に出た。
だからレンたちと出会えた。
今回の叫びは、
そういう全部が詰まっています。
そしてレン。
今回かなり主人公してました。
特別な理屈じゃなく、
「リオンが嫌だって言ってるから」
で立つ。
これ、
レンらしい強さだと思っています。
難しい理屈じゃなくて、
目の前の仲間を信じる。
それがレンです。
あと今回の巨大な目。
完全に
「人の心が分からない存在」
として描いています。
だからこそ、
リオンの気持ちが理解できない。
そこが、
これからの大きな対立になっていきます。
そして最後。
ついに。
塔の心臓へ続く扉が開きました。
白の塔編、
いよいよクライマックスです。
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いつも読んでくださってありがとうございます。
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