俺の相棒、姫だったらしい
いつも読んでいただきありがとうございます。
今回は、
ついにリオンの過去へ少し触れる回です。
今まで軽くて、
ふざけていて、
百合実況していた彼が、
初めて本気で怒ります。
そして今回、
レンたちも
「リオンが何を嫌がっていたのか」
を少しずつ知り始めます。
それでは、第56話。
よろしくお願いします。
「…………」
「…………」
「…………」
沈黙。
広場の真ん中。
空気が止まっていた。
レンは数秒考える。
整理しよう。
今起きたこと。
王都騎士団登場。
リオンを見る。
そして。
『姫様』
「……は?」
もう一回声に出た。
「いや待って待って待って」
レンが頭を抱える。
「え、リオン?」
「うん」
「姫?」
「まあ……」
「まあ!?」
軽っっっ!?
ミアも完全に固まっていた。
「え、えぇ……?」
フィオだけ静かだった。
むしろ。
「やっぱり」
「気づいてたの!?」
レンが叫ぶ。
「なんとなく」
「なんとなくで流す情報量じゃない!!」
騎士が一歩前へ出る。
「リオナ・ルクレツィア様」
その名前。
リオンの肩が僅かに揺れた。
レンは目を見開く。
「リオナ……?」
「……昔の名前」
リオンが小さく呟く。
いつもの軽さがない。
その瞬間。
レンは初めて気づいた。
リオン、
本当に嫌そうだ。
「王が、お戻りを望まれています」
騎士の声は静かだった。
「塔が開いた今、
あなたのお力が必要です」
「断る」
即答だった。
空気が張る。
リオンは帽子を深く被った。
「俺はもう王族じゃない」
「しかし――」
「俺は男だ」
低い声。
レンたちは黙る。
初めて聞く声だった。
いつもの軽いリオンじゃない。
「姫として生きろって言われても無理」
「ドレス着ろって言われても無理」
「笑えって言われても無理」
リオンは騎士を睨む。
「俺はもう、あそこ戻る気ないから」
静寂。
レンは胸がざわついた。
今まで。
ずっと冗談みたいに見えてた。
“可愛い”とか、
“女の子みたい”とか。
でも。
リオンにとっては、
笑い事じゃなかったんだ。
騎士はゆっくり目を閉じる。
「……ですが、あなたは“白の巫子”です」
その瞬間。
フィオの表情が変わった。
「白の……?」
リオンは舌打ちした。
「その名前で呼ぶな」
空気が重い。
レンは完全についていけてない。
「待って情報量!!」
「レンうるさい」
ミアが小声で言った。
「今ちょっと黙って」
「はい……」
すると騎士が再び口を開く。
「塔はあなたを必要としています」
「知らない」
「姫様――」
「その呼び方やめろって言ってんだろ」
初めて。
リオンが本気で怒った。
空気が震える。
騎士も黙る。
その時だった。
「リオンは」
静かな声。
フィオだった。
全員が振り向く。
フィオは騎士を真っ直ぐ見ていた。
「リオンは、リオン」
静かな声。
でも強い。
「嫌がる名前で呼ばないで」
騎士が僅かに目を見開く。
ミアも前へ出た。
「そうそう。
うちの仲間なんだけど」
「……」
レンは少し遅れて。
そして頭を掻いた。
「まあ俺も……
相棒取られるの困るし」
「レン……」
リオンが目を丸くする。
リオンは数秒黙って。
それから。
小さく笑った。
今度は。
ちゃんと、
いつもの笑い方だった。
第56話、ありがとうございました。
ついに、
リオンの本名が出ました。
“リオナ・ルクレツィア”。
そして、
「姫様」
「白の巫子」
という言葉。
今までぼんやりしていた違和感が、
一気に形になり始めています。
でも今回一番大事なのは、
リオンが
「俺は男だ」
と、
ちゃんと自分の言葉で言ったこと。
たぶんこの子、
ずっと否定され続けてきたんですよね。
周りから決められて、
役割を押し付けられて、
“姫”として扱われて。
だからこそ、
今の“リオン”は、
自分で選んだ姿なんだと思います。
そして今回、
フィオとミアが即座に
「リオンはリオン」
と言ったのもかなり大きいです。
このパーティ、
恋愛だけじゃなく、
“居場所”の話でもあるので。
あとレン。
完全に情報量に負けてました。
でも最後、
ちゃんと
「相棒」
って言ったの、
かなりレンらしかったです。
次回、
騎士団との話がさらに進み、
“白の塔”と“白の巫子”の関係も少しずつ明かされていきます。
次回もよろしくお願いします。




