塔へ向かう条件
いつも読んでいただきありがとうございます。
今回は、
“白の塔”について本格的に話が動き始める回です。
今までの敵とは違って、
今回は
「何がいるのか分からない」
怖さが強くなってきています。
そして今回、
リオンの空気も少しずつ変わり始めています。
まだ誰も気づいていません。
でも、
何かを抱えているのは確かです。
それでは、第53話。
よろしくお願いします。
宿の空気が張り詰める。
王都騎士団。
銀色の鎧を着た男は、静かにレンたちを見ていた。
「……改めて」
騎士が口を開く。
「霧喰い事件を解決していただき、感謝します」
「お、おう……」
レンは妙に緊張していた。
こういう“ちゃんとした人”苦手である。
リオンは黙ったまま。
帽子を深く被っていた。
「私は騎士団第三部隊隊長、ゼクト」
低い声。
いかにも強そう。
「現在、白の塔について調査を行っています」
「調査って……
誰も帰ってこないんだろ?」
レンが聞く。
ゼクトは頷いた。
「塔へ入った者は、全員消息不明」
「内部構造も変化するため、地図も役に立たない」
「最悪ダンジョンじゃん……」
リオンが引いた顔をした。
するとゼクトはフィオを見る。
「ですが、あなた方は霧喰いを退けた」
「……たまたま」
フィオが静かに答える。
「いいえ」
ゼクトの声は真剣だった。
「我々では不可能だった」
空気が少し変わる。
レンは違和感を覚えた。
騎士団。
かなり強いはずだ。
なのに。
この人、
本気で困ってる。
「……塔の中に何があるんだ?」
リナが聞く。
ゼクトは少し黙った。
そして。
「分かりません」
「は?」
レンが固まる。
「分からないの!?」
「正確には、“見た者が戻らない”」
静寂。
嫌すぎる。
「ですが」
ゼクトが続ける。
「二十年前、一人だけ帰還した人物がいます」
その瞬間。
フィオの目が細くなる。
「誰」
「当時の聖女です」
空気が変わった。
「……聖女?」
レンが首を傾げる。
リオンだけが、
一瞬だけ顔を上げた。
「彼女は塔から戻った後、こう言いました」
ゼクトの声が低くなる。
「“塔は人を選ぶ”」
ぞわり。
嫌な寒気。
「選ぶって……」
「分かりません」
ゼクトは静かに首を振った。
「ですが塔が開いた時、必ず大きな災厄が起きる」
黒騎士。
霧喰い。
全部繋がる。
レンは無意識に剣を握った。
「……つまり俺たちに行けって?」
「お願いしたい」
ゼクトが頭を下げる。
騎士団の隊長が。
レンは目を丸くした。
すると。
「断ることも可能です」
ゼクトが真っ直ぐ言う。
「本来、旅人に背負わせるべき問題ではない」
静寂。
ミアはフィオを見る。
フィオは塔の方向を見つめていた。
「……行く」
「フィオ」
「放っておけない」
静かな声。
でも迷いはなかった。
ミアも小さく笑う。
「まあ、そう言うと思った」
レンは頭を抱えた。
「待って待って、
俺まだ心の準備が」
「レン」
フィオがこちらを見る。
「怖い?」
「めちゃくちゃ怖い」
「うん」
フィオは少しだけ笑った。
「私も」
「え」
意外だった。
でも。
「だから、一緒に行こ」
その言葉で、
レンの胸の怖さが少しだけ軽くなる。
ずるい。
この子たち、
最近ナチュラルに人の心を動かしてくる。
すると。
「……」
ずっと黙っていたリオンが、
小さく塔を見ていた。
その横顔。
なぜか少しだけ、
苦しそうだった。
第53話、ありがとうございました。
ついに“白の塔”へ向かう流れが固まりました。
今回の塔、
普通のダンジョンではなく、
かなり“異常存在”寄りです。
特に、
* 中を見た人が帰らない
* 構造が変わる
* 人を選ぶ
この辺り、
かなり不気味な設定になっています。
そして今回、
「聖女」という単語も出てきました。
この世界、
まだまだレンたちが知らないものがたくさんあります。
そしてリオン。
今回かなり静かでした。
でも逆に、
その静けさが違和感になり始めています。
特に最後、
塔を見る横顔。
たぶん本人も、
少しずつ逃げられなくなってきています。
あと今回好きなのは、
フィオの
「私も」
です。
この子、
怖がらないように見えて、
実はちゃんと怖い。
でも、
一人じゃないから進める。
それが、
今のパーティの強さになってきています。
次回、
塔へ向かう前の準備回になります。
……たぶん平和には終わりません。
次回もよろしくお願いします。




