白の塔は招いている
いつも読んでいただきありがとうございます。
今回は、
アルセリア編の“不穏さ”がさらに強くなる回です。
霧喰い事件が終わったと思ったら、
今度は“白の塔”。
この街、
本当に休ませてくれません。
そして今回は、
リオンの違和感が少しずつ濃くなってきています。
でもまだ、
誰も核心には届きません。
それでは、第52話。
よろしくお願いします。
「……行きたくねぇ」
レンは心の底から言った。
窓の向こう。
霧が晴れたことで姿を現した“白の塔”。
空へ突き刺さるみたいに高い。
しかも。
嫌な雰囲気しかしない。
「でも行くんだろ?」
リオンがパンをかじりながら言う。
「その聞き方ずるくない?」
「最近のレン、
“嫌だぁ!”って言いながらちゃんと行くし」
「否定できないの悔しい」
ミアが笑った。
フィオは窓の外をじっと見ている。
「……あそこ、変」
「もう見た目から変だろ」
「そうじゃない」
フィオの表情は真剣だった。
「あの塔、生きてるみたい」
静寂。
「はい怖い」
レンが即答した。
すると。
ゴォン――。
また鐘の音。
街の空気がざわつく。
宿の主人が青い顔で呟いた。
「白の塔が開くなんて……
二十年ぶりだ……」
「え?」
レンたちが振り向く。
主人は震える声で続けた。
「あの塔に入った人間は……
誰も戻ってこない」
「うわもう完全にダンジョンだ」
リオンが真顔になる。
ミアも眉をひそめた。
「なんでそんな場所が放置されてるの?」
「壊せないんだよ……」
主人の声が小さくなる。
「近づくだけで、人が消える」
レンは喉を鳴らした。
嫌すぎる。
でも。
黒騎士。
霧喰い。
全部あの塔へ繋がっている気がする。
するとフィオが静かに言う。
「行かなきゃ」
「うん」
ミアも頷く。
レンは天井を見上げた。
「……俺の異世界生活、
もっとこう……
平和なハーレムとかじゃなかった?」
「まだ言ってる」
リオンが呆れた顔をする。
「今のレン、
百合に挟まれてホラー塔攻略する男だぞ」
「字面終わってる」
その時だった。
宿の外。
鎧の音が響く。
カシャン。
カシャン。
「……っ」
一瞬。
リオンの表情が固まった。
まただ。
レンは見逃さない。
窓の外。
昨日見た兵士たちが立っている。
銀色の鎧。
そして王家の紋章。
「……」
リオンが無意識に、
帽子を深く被った。
「リオン?」
「……なんでもない」
笑う。
でも。
明らかに無理している笑顔だった。
すると兵士の一人が宿へ入ってきた。
「旅人の方々ですね」
低い声。
空気が張る。
「我々は王都騎士団」
「うわ絶対面倒事」
レンが小声で呟く。
騎士は構わず続けた。
「白の塔について、
少しお話を――」
その瞬間。
騎士の視線が、リオンへ向いた。
止まる。
空気が凍った。
「……あなたは」
「っ」
リオンの指先が僅かに震える。
レンは眉をひそめた。
フィオも静かに騎士を見ている。
数秒の沈黙。
でも騎士はすぐ目を逸らした。
「……失礼しました」
何事もなかったみたいに。
でも。
リオンの顔色は、
明らかに悪くなっていた。
レンは小さく息を吐く。
やっぱり。
リオンには、
何かある。
第52話、ありがとうございました。
ついに“白の塔”が本格的に動き始めました。
今回の塔は、
普通のダンジョンというより、
「存在そのものが不気味」
な方向を意識しています。
特に、
* 生きているみたい
* 近づくと消える
* 二十年間閉じていた
この辺り、
かなり嫌な感じです。
そして今回、
リオンの伏線もまた少し増えました。
兵士を見た瞬間の反応。
帽子を深く被る仕草。
そして、
騎士が“何かに気づきかけた”こと。
まだ詳細は出ませんが、
読者側にはかなり違和感が積み上がってきたかなと思います。
あと今回好きなのは、
「百合に挟まれてホラー塔攻略する男」
です。
レンの異世界転生、
かなり方向を間違えています。
でも本人はなんだかんだ、
ちゃんと仲間についていくんですよね。
そこがレンらしい。
次回、
騎士団との会話、
そして“白の塔”について、
さらに深い話が始まります。
次回もよろしくお願いします。




