霧の街は眠らない
いつも読んでいただきありがとうございます。
今回は、
アルセリア編の中でもかなり緊迫感強めです。
霧喰いの正体に少し近づきつつ、
レンがまた無茶をし始めます。
この男、
本当に危ない時ほど前へ出る。
でもそれが、
レンの主人公らしさでもあるんですよね。
そして今回は、
ホラー感もかなり増量しています。
……レンの悲鳴と一緒に楽しんでください。
それでは、第49話。
よろしくお願いします。
ケタケタ。
ケタケタケタ。
霧の奥から響く笑い声。
街全体が笑っているみたいだった。
「……無理」
レンが真顔で呟く。
「帰りたい」
「まだ十分も経ってない」
リオンが冷静にツッコむ。
「ホラーイベント濃度が高すぎるんだよ!!」
レンは剣を握り直した。
震えている。
でも逃げられない。
目の前には、泣きそうな少女がいた。
「お兄ちゃん……」
少女の声が震える。
ミアはそっと少女を後ろへ下げた。
「見ないで」
「でも……!」
「大丈夫」
ミアの声は優しかった。
でも剣を握る手は強く力が入っている。
フィオが静かに霧を見る。
「……来る」
「え?」
次の瞬間。
霧の中から、無数の影が現れた。
「うわ増えたぁぁぁ!?」
レン絶叫。
顔のない人影。
腕が曲がっているもの。
身体が半分溶けているもの。
足がないもの。
全部笑っていた。
「待って待って待って!!
敵デザインの倫理観どうなってんの!?」
「レン、今そこじゃない!!」
ミアが叫ぶ。
霧喰いたちが一斉に動く。
速い。
「フィオ!!」
「うん」
銀色の魔法陣。
氷の壁が展開される。
霧喰いたちがぶつかる。
しかし。
壁の向こうから、
無数の手がにゅるりと伸びた。
「ぎゃぁぁぁぁ!!!」
レンが全力で後退した。
「レンうるさい!!」
「怖いんだからしょうがないだろ!!」
すると。
リオンが短剣を投げる。
一体の霧喰いへ直撃。
でもやっぱり霧になって散るだけ。
「チッ……」
珍しくリオンが舌打ちした。
「物理効きづらいのほんと厄介」
「レンだけ効くんだっけ……?」
ミアがレンを見る。
レンも見た。
「……嫌な主人公属性生えてきた」
「でも今は助かる」
フィオが真顔で言う。
その瞬間。
霧喰いたちが、一斉にレンを見た。
「え」
嫌な沈黙。
「……なんで?」
次の瞬間。
全員レンへ突っ込んできた。
「うわぁぁぁぁぁ!!!
ヘイト管理どうなってんの!?」
「レン走れ!!」
レンは全力疾走した。
後ろから霧喰いの笑い声。
「無理無理無理!!」
「レン右!!」
リオンの声。
レンは反射で飛ぶ。
直後。
霧の腕が通り過ぎた。
「死ぬぅぅぅ!!」
すると。
フィオが小さく呟く。
「……見えた」
「え?」
「核」
金色の瞳が霧の奥を見つめる。
「霧喰いの中心、あそこ」
霧のさらに奥。
何かが脈打っていた。
赤い。
心臓みたいな塊。
ぐちゃぐちゃに絡まった霧の中心。
「うわ気持ち悪っ!?」
「レン黙って!」
ミアが叫ぶ。
でも顔は青かった。
たぶんみんな同じ感想である。
フィオが静かに言う。
「あれ壊せば、全部止まる」
レンは息を飲む。
つまり。
あそこまで行かなきゃいけない。
この大量の霧喰いを突破して。
「……」
「レン?」
ミアが振り向く。
レンは数秒黙って。
そして。
「……俺、おとりやる」
「は!?」
三人の声が揃った。
レンは引きつった笑顔を浮かべる。
「だ、だってあいつら俺ばっか狙うし……!」
「だからって!!」
「レン、それ死亡フラグ」
「知ってる!!」
めちゃくちゃ怖い。
怖いけど。
「でも、今行けるの俺だけだろ」
静寂。
フィオがじっとレンを見る。
その瞳が少し揺れた。
「……また無茶する」
「いや俺もしたくないよ!?」
本音だった。
本当に怖い。
でも。
レンは剣を握る。
「仲間守るためだし」
その瞬間。
ミアが深くため息を吐いた。
「……ほんとバカ」
「否定できない」
リオンまで頷く。
そして。
フィオがそっとレンの手を握った。
「絶対戻ってきて」
静かな声。
でも。
今までで一番強い声だった。
第49話、ありがとうございました。
今回は、
かなり“逃げ場のないホラー”を意識していました。
特に、
* 無数の霧喰い
* 全員笑っている
* しかもレンだけ狙われる
この辺り、
レン視点だと本当に地獄です。
でも今回大きいのは、
フィオが“核”を見つけたこと。
つまり霧喰いは、
ただの怪物ではなく、
何か一つの中心から動いている。
アルセリア編、
少しずつ裏側が見え始めています。
そしてレン。
また無茶します。
でも今回、
「かっこいいから」じゃなく、
“自分しかできない”
と思って動いてるのがレンらしいんですよね。
怖い。
逃げたい。
でも行く。
そこが、
この主人公の良さだと思います。
あと最後。
フィオの
「絶対戻ってきて」
かなり本音です。
黒騎士戦の時より、
もっと怖くなっています。
レンが無茶するたびに、
この二人の心臓も削られてます。
次回、
レンのおとり作戦決行です。
……絶対トラブル起きます。
次回もよろしくお願いします。




