霧の中の”誰か”
いつも読んでいただきありがとうございます。
今回は、
かなり“ホラー回”です。
霧喰いの不気味さだけではなく、
「この街で消えた人たちはどうなったのか」
にも少し踏み込んでいます。
ここからアルセリア編、
空気がどんどん不穏になっていきます。
……でもレンは相変わらず叫びます。
それでは、第48話。
よろしくお願いします。
「ミア!!」
レンは霧の中を駆けた。
視界は真っ白。
数メートル先すら見えない。
「ちょ、待ってレン!」
リオンの声が後ろから飛ぶ。
でも止まれなかった。
さっきのミアの声。
あれは明らかに普通じゃなかった。
「レン」
フィオが袖を掴んだまま走る。
「前」
「え?」
次の瞬間。
ぐにゃり。
霧の中から、白い腕が伸びた。
「うわぁぁぁ!!?」
レンが全力で飛び退く。
霧喰い。
顔のない頭部。
裂けた口。
笑っている。
「また来たぁ!!」
霧喰いが笑う。
ケタケタケタ。
その音だけで鳥肌が立つ。
「レン下がって」
フィオの魔法陣が展開される。
銀色の光。
氷槍が霧喰いを貫く。
しかし。
また霧になって散った。
「うわ復活系!?」
「めんどくさいタイプ」
リオンが嫌そうな顔をする。
すると。
霧の奥から、小さな声。
「……お兄ちゃん」
空気が止まる。
少女の声だった。
昼に会ったあの子。
「え……?」
レンが目を凝らす。
霧の向こう。
誰か立っている。
小さな人影。
「お兄ちゃん、いた……」
その瞬間。
フィオの表情が変わった。
「違う」
「は?」
「レン、あれ見ちゃだめ」
「え?」
ぞわり。
本能が警鐘を鳴らす。
でも。
レンは見てしまった。
霧の中の“それ”。
最初は人間に見えた。
でも違う。
首が、曲がっていた。
ありえない方向へ。
顔は半分崩れ、
霧が溶けるみたいに流れている。
なのに。
笑っていた。
「――っ!!?」
レンの背筋が凍る。
「うわ無理無理無理!!」
リオンまで顔を引きつらせた。
珍しい。
いつも余裕あるリオンが、本気で引いている。
その“お兄ちゃん”は、ゆっくり手を伸ばした。
「……おいで」
少女が震える。
「お、お兄ちゃん……?」
すると。
ミアが飛び出した。
「近づいちゃダメ!!」
剣閃。
一瞬で“それ”を斬り裂く。
霧が散る。
でも。
声だけは残った。
ケタケタケタ。
「っ……!」
ミアの顔が青い。
レンは初めて見た。
ミアが、ここまで怯えてる顔。
「ミア?」
「……あれ、人じゃない」
声が震えていた。
「人だったもの、だよ」
静寂。
霧が、ゆっくり街を流れていく。
フィオが静かに呟く。
「霧喰いは、“消えた人”を使ってる」
「は……?」
レンの喉が鳴る。
つまり。
この街で消えた人たちは。
全部。
まだ霧の中にいる。
その瞬間。
霧の奥。
無数の笑い声が響いた。
ケタケタ。
ケタケタケタ。
まるで。
街全体が笑っているみたいだった。
第48話、ありがとうございました。
今回はかなり怖めでした。
特に、
“お兄ちゃん”のシーン。
人間に見えるのに、
どこか決定的に壊れている。
あの「見ちゃいけない感じ」を意識して書いています。
そして今回判明したのは、
霧喰いがただの怪物ではないこと。
“消えた人”を使っている。
つまり、
この街で起きていることは、
思ったよりずっと悪質です。
ミアがかなり強く反応したのも、
「あれが元は人間だった」
と理解してしまったからなんですよね。
あと今回、
リオンまで本気で引いていました。
この男、
基本メンタル強めなんですが、
さすがに今回は無理だったらしいです。
そして最後。
霧の中の笑い声。
アルセリア編、
ここからさらに異常さが増していきます。
……レンの悲鳴も増えます。
次回もよろしくお願いします。




