霧の街アルセリア
いつも読んでいただきありがとうございます。
今回から、
新章「霧の街アルセリア編」スタートです。
見た目は綺麗なのに、
空気の奥にずっと不穏さがある。
そんな、
“静かに怖い街”を目指して書きました。
そして今回、
リオンに少しだけ違和感が出始めています。
でもまだ、
誰も核心には触れません。
それでは、第45話。
よろしくお願いします。
霧の街アルセリア。
「絶対ヤバい街の名前だろ」
街門を見上げながら、レンは真顔で言った。
空は曇っている。
しかも街全体を、白い霧が薄く覆っていた。
視界が悪い。
嫌な空気。
「でも雰囲気は綺麗だね」
ミアが周囲を見る。
石造りの建物。
古い街灯。
静かな街並み。
確かに見た目は綺麗だった。
問題は。
「人少なくない?」
リオンが呟く。
その通りだった。
街は妙に静かだ。
視線だけは感じる。
でも誰も近づいてこない。
「……警戒されてる?」
レンが小声で言う。
「違う」
フィオが霧を見る。
「怖がってる」
その言葉に、空気が少し重くなる。
すると。
「お兄さんたち、旅人?」
後ろから声。
振り向くと、小さな少女が立っていた。
フード付きの服。
赤い瞳。
「お、おう」
「この街、夜は出歩かないほうがいいよ」
「うわぁフラグ」
レンが頭を抱える。
少女は不思議そうに首を傾げた。
「フラグ?」
「気にしないでくれ」
すると少女は少しだけ迷う顔をしたあと。
「……“霧喰い”が出るから」
その瞬間。
フィオの表情が変わった。
「霧喰い……?」
「夜になると、人が消えるの」
「はいラスボス候補追加ぁ!!」
レンが叫ぶ。
リオンが肩を叩いた。
「落ち着け主人公」
「最近イベント密度おかしいだろ!!」
すると少女が、じっとリオンを見る。
「……お姉さん、綺麗」
「ぶっ」
レンが吹いた。
リオンが固まる。
「え、あ、俺男……」
「……?」
少女は不思議そうだった。
ミアが耐えきれず笑い始める。
「ふ、ふふっ……!」
「笑うな!!」
「いやだって!」
フィオも少しだけ口元を隠していた。
絶対笑ってる。
「リオン、かわいい」
「フィオまで!?」
リオンが崩れ落ちる。
その時だった。
通りの奥。
鎧の音が響く。
カシャン。
カシャン。
重い足音。
レンたちが振り向く。
霧の向こう。
数人の兵士が歩いていた。
銀色の鎧。
そして。
その紋章を見た瞬間。
「……っ」
リオンの顔色が変わった。
一瞬だった。
でも。
レンは見逃さなかった。
「リオン?」
「……え? あ、なに?」
いつもの笑顔。
でも少しだけ、不自然だった。
フィオも静かにリオンを見ている。
兵士たちはそのまま通り過ぎる。
しかし。
すれ違う瞬間。
一人の兵士が、僅かに足を止めた。
そして。
リオンを見た。
「…………」
「…………」
一瞬の沈黙。
でも兵士は何も言わず、再び歩き出す。
リオンは静かに息を吐いた。
「……なんか疲れた」
「まだ街入ったばっかだぞ?」
「だからだよ……」
小さな呟き。
レンは眉をひそめる。
今の反応。
絶対何かある。
でも。
リオンはそれ以上何も言わなかった。
代わりに、いつもの調子で笑う。
「まあいいや!
とりあえず宿探そ!」
「切り替え早っ」
レンはツッコミながらも、
もう一度だけ兵士たちの背中を見た。
霧の街。
黒騎士。
そして、リオンの反応。
嫌な予感が、
また少しだけ強くなっていた。
第45話、ありがとうございました。
ついに霧の街へ入りました。
この街、
今までよりかなり“異質”です。
人の気配はあるのに静か。
視線はあるのに誰も近づかない。
じわじわ不安になるタイプの街をイメージしています。
そして今回のポイントは、
やっぱりリオンですね。
兵士を見た瞬間の反応。
普段軽い彼が、
一瞬だけ完全に笑えなくなる。
まだ詳細は出ませんが、
「何かある」
だけは伝わり始めたかなと思います。
あと少女に
「お姉さん綺麗」
って言われたところ、
個人的にかなり好きでした。
リオン、
たぶん人生で数え切れないくらい言われてます。
でも毎回ちょっと複雑。
そしてレン、
だんだん“嫌な予感センサー”だけは主人公級になってきました。
残念ながら大体当たります。
次回から、
霧の街の異変と、
“霧喰い”について少しずつ触れていきます。
……もちろん百合とギャグもあります。
次回もよろしくお願いします。




