次の街、フラグしかない
いつも読んでいただきありがとうございます。
今回は、
“次の章へ向かう前の準備回”です。
黒騎士との戦いを経て、
レンたちは少しだけ変わりました。
でもこのパーティ、
空気が締まりきらない。
シリアスな話をしていても、
気づけば誰かがツッコミを入れています。
そして次の舞台は、
いかにも危なそうな「霧の街」。
嫌な予感しかしません。
それでは、第44話。
よろしくお願いします。
「……で」
朝食を食べながら、レンは地図を広げた。
「次どこ行く?」
黒騎士事件のあと、
街の人たちはかなり混乱していた。
でも同時に、
レンたちを“助けてくれた冒険者”として見始めてもいる。
ちょっと照れる。
いや、かなり照れる。
「レン、にやにやしてる」
ミアがじとっとした目を向けてくる。
「してない!」
「してる」
フィオまで頷いた。
なんで二対一なんだ。
リオンはパンをかじりながら笑っている。
「いやでも実際すごかったよなー。
街の人、レンのこと“英雄様”って呼んでたし」
「やめろ恥ずかしい!!」
レンは机へ突っ伏した。
昨日まで“主人公向いてない”って言われてた男である。
英雄とか急に重い。
「でもレン、頑張った」
フィオが静かに言う。
「……まあ、ちょっとだけ見直した」
ミアも小声で続ける。
「なんで上からなんだよ」
「調子乗りそうだから」
ひどい。
でもちょっと嬉しかった。
するとリオンが地図を覗き込む。
「次の街さ、“霧の街”行かね?」
「うわ、絶対なんかある名前」
レンは即座に嫌な顔をした。
「しかもこういう名前の街、大体イベント起きる」
「メタいこと言うな」
リオンが笑う。
フィオは地図の一点をじっと見ていた。
「……ここ」
「ん?」
「黒騎士の魔力、こっちから流れてた」
空気が少し変わる。
ミアも真面目な顔になった。
「つまり、原因があるってこと?」
「たぶん」
レンは地図を見る。
霧の街アルセリア。
嫌な予感しかしない。
「なあリオン」
「なんだ」
「これ絶対また面倒事だよな」
「でも行くんだろ?」
「……まあ」
レンは小さく息を吐く。
怖い。
正直、かなり。
黒騎士クラスがまた出たら、
次は本当に危ないかもしれない。
でも。
フィオとミアを見る。
二人とも、
もう行くつもりの顔をしていた。
リオンもニヤニヤしている。
……逃げられない。
「よし」
レンは立ち上がった。
「行くか、霧の街」
その瞬間。
「おおー!」
リオンが拍手する。
「主人公っぽい!」
「茶化すな!!」
するとフィオが小さくレンの袖を掴む。
「レン」
「ん?」
「もし次も危なかったら」
金色の瞳が、真っ直ぐこちらを見る。
「今度はちゃんと逃げて」
「……」
レンは少し黙る。
たぶんフィオ、
本気で怖かったんだ。
昨日。
レンが斬られた時。
ミアも静かに口を開く。
「レン、すぐ無茶するし」
「してない!」
「した」
「したな」
「したね」
三人揃った。
なんで敵より味方のほうが連携いいんだ。
レンは頭を抱える。
「……分かったよ」
渋々答える。
すると。
フィオが少し安心したみたいに笑った。
その顔を見て、
レンは少しだけ胸が温かくなる。
「……あ」
リオンが突然何かに気づいた顔をした。
「どうした」
「今の、完全に“帰ってきてね”イベントだった」
「違う!!」
ミアが即座に叫ぶ。
でも顔は真っ赤だった。
フィオは首を傾げる。
「違わない」
「フィオぉぉぉ!!」
宿中にリナの悲鳴が響く。
レンとリオンは静かに顔を見合わせた。
「……レン」
「なんだ」
「霧の街行く前に、
俺たち精神削られてない?」
「もう手遅れだろ」
第44話、ありがとうございました。
ついに次の目的地、
「霧の街アルセリア」が出てきました。
名前からしてもう危ない。
こういう街、
絶対イベント起きます。
そして今回、
フィオとミアがかなり“レンを失うこと”を怖がっているのが見え始めています。
特にフィオの
「今度はちゃんと逃げて」
は、
かなり本音でした。
レンって、
自分より仲間優先で動くタイプなので、
見てる側は普通に怖いんですよね。
あと今回好きだったのは、
三人揃って
「した」
って言ったところ。
このパーティ、
戦闘より日常の連携のほうが強い気がします。
そしてリオン。
完全に
「百合の空気を実況する男」
として完成してきました。
たぶん一番楽しそうです。
次回から、
霧の街編が始まります。
百合とギャグを挟みつつ、
少しずつ物語の核心へ近づいていく予定です。
次回もよろしくお願いします。




