勇者じゃなくても
いつも読んでいただきありがとうございます。
今回は、
“戦う理由”がはっきり見えてくる回です。
勇者じゃない。
最強でもない。
それでも前へ出る。
そんなレンの姿と、
それを支える仲間たちを書きました。
……あと、
シリアスな空気の中でも、
このパーティはずっとうるさいです。
それでは、第40話。
よろしくお願いします。
黒騎士が剣を振り上げる。
黒い霧が、街全体を震わせた。
『排除する』
「うわ、ちゃんとラスボスみたいなこと言った!」
レンが叫ぶ。
「レンうるさい!」
「今ツッコまないと怖いんだよ!!」
実際かなり怖かった。
威圧感が異常だ。
空気が重い。
それでも。
レンは剣を握り直した。
逃げるわけにはいかない。
後ろには仲間がいる。
「リオン!」
「了解!」
リオンが駆ける。
一瞬で黒騎士の側面へ回り込む。
速い。
さすが元盗賊。
「こっち見ろ鉄くず!!」
短剣が閃く。
黒騎士が剣で受ける。
その瞬間。
「フィオ!!」
「うん」
銀色の魔法陣。
次の瞬間、地面から無数の氷槍が突き出した。
『――!』
黒騎士が飛び退く。
そこへ。
「はぁぁぁっ!!」
ミアの斬撃。
爆音。
「火力おかしいってぇ!?」
レンが叫ぶ。
「うるさい!」
「戦闘中ずっと怒られてるんだけど俺!?」
でも。
少し安心していた。
みんな動けてる。
戦えてる。
黒騎士は強い。
だけど。
前みたいな絶望感は、もうなかった。
『なぜ抗う』
黒騎士の声が響く。
『お前には力がない』
その言葉。
レンの動きが、一瞬止まる。
確かにそうだ。
フィオみたいな魔法もない。
ミアみたいな剣技もない。
リオンみたいな速さもない。
俺には何もない。
でも。
「……だから何だよ」
『――』
「勇者じゃなくても」
「最強じゃなくても」
レンは前へ出る。
怖い。
でも。
「仲間守れれば、それでいい」
黒騎士の剣が振り下ろされる。
レンは歯を食いしばった。
「レン!!」
ミアの叫び。
――その瞬間。
ガキィン!!
金属音。
レンは目を見開く。
フィオの氷壁が、剣を止めていた。
「フィオ!?」
「レン、一人で受けない」
静かな声。
でも少し怒っている。
その横へ、ミアも並ぶ。
「そういうのは三人でやるの」
「……三人」
ミアが笑う。
戦闘中なのに、
どこかいつもの笑い方だった。
「レン、主人公向いてないけど」
「ひどくない!?」
「でも」
ミアが剣を構える。
「仲間想いなのは、本物だから」
胸が熱くなる。
黒騎士が動く。
同時に。
三人も駆けた。
リオンが後ろで叫ぶ。
「ちょっと待って!?
なんで俺だけ置いて感動空間入ってるの!?」
「リオンもいる!!」
「雑ぅ!!」
次の瞬間。
レンの剣が、黒騎士へ届いた。
『――!!』
初めて。
黒騎士の身体が大きく揺れる。
「入った!!」
「レン!」
「今だよ!」
フィオの魔法陣が広がる。
銀色の光。
ミアが地面を蹴る。
そして。
「レンのこと、馬鹿にしたの」
ミアが笑う。
完全に怒っていた。
「ほんとムカつく」
黒騎士の身体へ、
ミアの全力の一撃が叩き込まれた。
第40話、ありがとうございました。
今回かなり、
「この作品の戦闘スタイル」
が固まってきた気がします。
ただ能力で勝つんじゃなく、
関係性で戦う感じ。
レンはたしかに勇者向きじゃありません。
かっこよく決めようとしても、
途中でツッコミ入るし、
ビビるし、
すぐ叫ぶ。
でも、
仲間を守るためなら前へ出られる。
そこが、
レンの“主人公らしさ”なんだと思います。
そして今回、
リナの
「レンのこと、馬鹿にしたのほんとムカつく」
は、
かなり感情乗ってました。
普段ツン気味なのに、
仲間を傷つけられると一直線になるタイプです。
あとリオン。
完全に
「感動シーンに置いていかれる男」
になっています。
でもたぶん、
一番このパーティを客観視してるのも彼です。
次回、
黒騎士との決着が近づいていきます。
そして戦いのあと、
少しだけ“敵の正体”にも触れ始めます。
次回もよろしくお願いします。




