男二人、距離感バグに巻き込まれる
いつも読んでいただきありがとうございます。
今回は、
かなり「この作品らしい空気」に戻ってきた回です。
甘々な百合。
それを最前列で浴び続ける男二人。
そして本人たちは、だんだん隠す気がなくなっている。
そんな、
ラブコメと百合が混ざった温度感を楽しんでもらえたら嬉しいです。
それでは、第36話。
よろしくお願いします。
昼。
レンは静かにパンをかじっていた。
「……」
「……」
隣ではリオンが無言でスープを飲んでいる。
男二人、遠い目。
なぜこうなった。
「レン」
「なんだ」
「俺さ」
「うん」
「最近、“恋人って怖い”って思い始めた」
「分かる」
即答だった。
向かいの席。
フィオとミアが座っている。
問題は。
その距離である。
「フィオ、近いって……」
「だめ?」
「だめじゃないけど……!」
ぴったり肩がくっついていた。
しかもフィオ、
最近ほぼ無意識でミアに触る。
袖掴む。
髪触る。
手繋ぐ。
頻度がおかしい。
「……レン」
「なんだよ」
「俺たち今、
異世界ラブコメじゃなくて百合観察日記読まされてない?」
「やめろ」
でも否定できない。
するとフィオがこちらを見る。
「百合観察日記?」
「フィオは知らなくていい!」
レンとリオンの声が揃った。
ミアが吹き出す。
「息ぴったりじゃん」
「そりゃ毎日百合浴びてたらな」
「変な耐性つき始めてるよな……」
リオンが真顔で呟く。
恐ろしい話だった。
するとその時。
「ねえ、お姉さんたち!」
元気な声。
小さな女の子が、フィオとミアへ駆け寄ってきた。
「わっ」
「どうしたの」
フィオがしゃがむ。
女の子は目をきらきらさせながら言った。
「ふたりって恋人!?」
「ぶっ」
レンが盛大にむせた。
早い。
子供の勘が鋭すぎる。
ミアは一瞬で真っ赤になった。
「ち、違っ……いや違わなくて……!」
「恋人」
フィオが普通に頷く。
「言い切るなぁ……」
レンは額を押さえた。
女の子は「やっぱりー!」と嬉しそうにはしゃぐ。
「だってね!
ずっと手ぎゅーってしてたもん!」
「っ!!」
ミアが固まる。
見ると。
机の下。
フィオとミア、しっかり手を繋いでいた。
「…………」
「…………」
男二人、静かに空を見る。
「レン」
「なんだ」
「もう隠す気なくない?」
「たぶんない」
リオンが遠い目をする。
ミアは慌てて手を離そうとした。
でも。
フィオが離さなかった。
「フィ、フィオ!?」
「恋人だから」
「その言葉で全部突破しないで!?」
フィオは不思議そうだった。
本当に悪気がない。
女の子はきゃっきゃと笑っている。
「お姉ちゃんたちかわいい!」
「〜〜〜〜っ!!」
ミアが完全に沈んだ。
机に突っ伏して動かない。
フィオはそんなリナの髪をそっと撫でる。
「ミア、赤い」
「誰のせいだと……!」
そのやり取りを見ながら。
レンは静かに思った。
……もうこれ、
完全に俺たち“保護者席”では?
「レン」
「なんだよ」
「俺さ」
「うん」
「ちょっとこの百合、応援したくなってきた」
「分かる」
悔しい。
でも。
目の前の二人が幸せそうすぎて、
否定する気になれなかった。
第36話、ありがとうございました。
ついにレンとリオン、
“百合観測者”として完全に仕上がってきました。
特に今回、
二人のツッコミが入ることで、
作品のテンポ感がかなり戻ってきた気がします。
そしてフィオ。
最近ずっと強いです。
「恋人だから」
で全て突破していくので、
ミアのライフがどんどん削られています。
あと個人的に好きなのは、
子供に「恋人?」って聞かれるシーン。
本人たちより、
周りのほうが先に空気を察してるんですよね。
そしてレンとリオンも、
最初は脳を焼かれていたのに、
少しずつ“応援側”へ回り始めています。
この、
「俺のハーレムが消えた」
から、
「でもこの百合は見守りたい」
へ変わっていく感じが、
この作品の大事な軸かもしれません。
次回もよろしくお願いします。




