主人公っぽく助けたら、百合イベントが始まった
レン、
ついに“主人公っぽい活躍”をしました。
なお今回も、
恋愛フラグの行き先はだいぶ怪しいです。
少しずつ、
ミアとフィアの空気が育ち始めます。
初クエストを終えた帰り道。
俺たちは街へ続く石畳を歩いていた。
夕方の風が涼しい。
フィアは隣で鼻歌を歌っていて、
ミアは相変わらず静かだった。
でも。
なんというか。
二人の距離が近い。
歩く速度まで自然に揃ってる。
付き合い長い夫婦か?
「依頼達成報酬、楽しみですね」
フィアが笑う。
「初心者依頼でも、お肉食べられるくらいにはなりますよ」
「マジ!?」
異世界最高か。
命かけてるけど。
「レン、単純」
「食事は大事だろ!」
ミアが小さく笑った。
……今笑った?
俺、
初めて見たかもしれない。
ちょっと嬉しい。
「でも今日はレンさんも頑張ってましたよ」
フィアがそう言う。
「え?」
「ちゃんと前に出てくれましたし」
「まあね」
俺は咳払いする。
ここで謙遜しすぎるのも違う。
主人公は適度に余裕を見せるものだ。
「俺、将来的にはかなり強くなる予定だから」
「まだ予定なんだ」
ミアが言う。
「お前さっきからそこ擦るな!?」
その時だった。
「きゃっ……!」
少し前方から悲鳴。
見ると、小さな女の子が転んでいた。
荷物のリンゴが坂道を転がっていく。
そして。
リンゴを追いかけるように、
一匹の角ウサギが飛び出した。
「危ない!」
考えるより先に身体が動く。
俺は駆け出した。
風属性強化。
まだ上手く使えないけど、
身体が軽くなる。
角ウサギが少女へ飛びかかる寸前。
俺は剣を振った。
ガキィン!
衝撃。
手が痺れる。
けど、弾けた。
「っ、うおおおお!!」
勢いのまま押し返す。
角ウサギが怯んだ瞬間。
後ろから銀色の斬撃。
ミアの剣だった。
一瞬で決着。
角ウサギは倒れた。
少女が涙目でこちらを見る。
「おにーちゃん、ありがとう……!」
「へへっ、気をつけろよ」
俺はちょっとカッコつけて言った。
……決まった。
今の絶対決まった。
命を張って人を助ける。
異世界主人公ポイント高い。
これは来る。
感謝。
尊敬。
好感度。
全部来る。
俺がちらっと後ろを見ると。
フィアが、泣きそうな顔をしていた。
「レンさん……!」
来た。
これは完全に“心配して駆け寄ってくるヒロイン”の顔。
俺は内心ガッツポーズした。
「大丈夫だって。これくら――」
その瞬間。
フィアは俺を通り過ぎた。
「ミア、怪我してない!?」
「……してない」
「よかったぁ……」
え?
俺、
結構危なかったんだけど。
むしろ最前線だったんだけど。
ミアはフィアの頭を軽く撫でた。
「心配しすぎ」
「だってミア、無茶するから……」
柔らかい空気。
なんだこれ。
俺の周囲だけ恋愛ジャンル違わない?
少女はそんな二人を見て、
きらきらした顔になった。
「おねーちゃんたち、すっごく仲良しなんだね!」
「――っ」
フィアが固まる。
ミアは無言で視線を逸らした。
え。
なんでそこで照れるの?
なんで?
普通そこ、
「そんなことありません!」
とか言う流れじゃないの?
フィアは顔を赤くしながら小さく咳払いした。
「え、えっと……その……」
ミアがぼそっと呟く。
「……否定はしない」
少女がわぁっと笑う。
フィアの顔がさらに赤くなる。
俺は思った。
もしかして。
いや。
まさか。
そんなわけ――
「レンさん?」
「……なんでもない」
俺は空を見上げた。
夕焼けが綺麗だった。
なんかちょっと、
目に染みた。
第3話ありがとうございました!
レンは本当に頑張っています。
ちゃんと人助けもするし、
危ない場面では前に出るし、
かなり主人公です。
ただ。
ヒロインたちの視線だけ、
どうしてもお互いに向いています。
そしてついに、
レンの中で“ある疑惑”が生まれ始めました。
でもまだ認めません。
認めたら終わるので。
次回はギルド回!
たぶんレンがまた勘違いします。




