朝焼けより先に
いつも読んでいただきありがとうございます。
今回は、“朝”の回です。
夜よりも隠せない空気ってあるなと思っていて、
寝起きのぼんやりした距離感や、無防備な会話を大事に書きました。
少しずつ、でも確実に変わっていく二人の関係を楽しんでもらえたら嬉しいです。
それでは、第25話。
よろしくお願いします。
目が覚めたとき。
最初に感じたのは、温かさだった。
「……ん」
ぼんやりした意識のまま、ミアは小さく身じろぎする。
柔らかい。
近い。
あと、いい匂いがする。
そこでようやく違和感に気づいた。
「……?」
ゆっくり目を開ける。
至近距離に、フィオの顔があった。
「……………………は?」
脳が停止する。
数秒かけて状況を理解した。
同じベッド。
肩がくっついている。
というか。
ミアの腕が、完全にフィオを抱き寄せていた。
「っっっ!!?」
飛び起きかける。
でもその瞬間。
「……ミア?」
眠そうな声。
フィオが薄く目を開けた。
金色の瞳が、朝焼けの光を映してぼんやり揺れる。
終わった。
人生が。
「ご、ごめん!! 違うの!!」
「……?」
「いや違わないけど違くて!? これはなんか、その、寝相というか!!」
ミアは顔を真っ赤にしながら後退する。
ベッドの端にぶつかり、そのまま落ちそうになった。
するとフィオが反射的に腕を掴む。
「危ない」
「ひゃっ!?」
ぐい、と引かれる。
結果。
さらに距離が近くなる。
「…………」
「…………」
近い。
近すぎる。
朝の静かな空気の中で、互いの呼吸だけが変に鮮明だった。
フィオが瞬きをする。
「ミア、顔すごい」
「見ないで!!」
無理だった。
こんなの平静でいられる人間いる?
しかもフィオはまだ半分寝ぼけているせいか、妙に無防備だった。
髪も少し乱れているし、声も柔らかい。
破壊力が高すぎる。
「……でも」
フィオが小さく呟く。
「嫌じゃなかった」
「っ」
またそれだ。
心臓に悪いことを普通の顔で言う。
ミアは顔を覆った。
「フィオ、それ自覚して言ってる?」
「何が?」
「そういうところ!!」
本当に分かっていない顔だった。
フィオは少しだけ首を傾げる。
「ミアといると、落ち着く」
「〜〜〜〜っ!!」
限界だった。
ミアはそのまま毛布に突っ伏す。
すると、くすっと小さな笑い声が聞こえた。
「……笑ったな?」
「ちょっと」
「絶対楽しんでる……」
「うん」
「認めるんだ!?」
フィオは珍しく、少し悪戯っぽい顔をしていた。
そんな顔もするんだ。
そう思った瞬間、胸がまた変に熱くなる。
窓の外では、朝焼けがゆっくり広がっていた。
空が青から橙へ変わっていく。
旅の朝。
本当なら、支度をして出発する時間だ。
なのに。
二人とも、なかなかベッドから動けなかった。
「……今日、どこ行く?」
フィオが聞く。
ミアは毛布から顔だけ出した。
「……まだ決めてない」
「じゃあ、ゆっくり考える?」
「……そうする」
たぶん今は。
旅の行き先より。
隣にいるこの人のことのほうが、ずっと頭を占めていた。
第25話、ありがとうございました。
ついに「同じベッドで朝を迎える」というイベントまで来ました。
でもこの二人、まだ正式には何も始まってないんですよね。
なのに空気だけは完全に恋人寸前。
今回のフィオはかなり強かったです。
無自覚なのか、分かってやってるのか、作者でも少し怪しくなってきました。
そしてミアは、そろそろ限界です。
ここから先は、
“気づかないふり”がどこまで続くのかが鍵になってきます。
次回もよろしくお願いします。




