お前、今ちゃんと幸せ?
いつも読んでくださってありがとうございます。
少しずつ変わっていく距離感と、言葉にできない感情を丁寧に描きたくて書いています。
今回は、これまで積み重ねてきた関係が少しだけ動く回です。
静かな空気の中にある“小さな揺れ”を楽しんでもらえたら嬉しいです。
それでは、第22話。
よろしくお願いします。
夕方。
依頼帰りの道は静かだった。
フィアとミアは少し先を歩いている。
フィアが何か話して、
ミアが短く返す。
その繰り返し。
でも楽しそうだった。
「……ほんと自然だね、あの二人」
隣でリオンが呟く。
「まあな」
俺は苦笑する。
「最近もう隠す気あるのか分かんねぇ」
「ないんじゃない?」
「やっぱそう見える?」
「うん」
即答だった。
風が吹く。
草が揺れる。
なんか穏やかな時間だった。
その時。
「レン」
「ん?」
リオンが珍しく真面目な声を出した。
「お前さ」
「おう」
「今、ちゃんと幸せ?」
一瞬。
言葉が止まる。
思ってもなかった質問だった。
「……急に重いな」
「気になっただけ」
リオンは前を向いたまま続ける。
「お前、ずっと笑ってるから」
「まあ楽しいし」
「でもさ」
少しだけ間。
「無理してない?」
図星だった。
……いや。
正確には、
“昔は”図星だった。
俺は少し考える。
最初。
ミアとフィアが特別だって気づいた時。
正直しんどかった。
寂しかったし、
悔しかったし、
「俺じゃないんだ」って思った。
でも。
「今は」
俺は前を歩く二人を見る。
夕日に照らされた背中。
並んだ距離。
「なんかもう、見てると安心するんだよな」
リオンが黙る。
「二人とも、ちゃんと笑うようになったし」
ミアは前より柔らかくなった。
フィアは前より素直に甘えるようになった。
その変化を、
一番近くで見てきた。
「それに」
俺は少し笑う。
「俺も、一人じゃないし」
リオンがちらっとこちらを見る。
「……そっか」
その声は、
少しだけ安心したみたいだった。
⸻
その時。
前からフィアの声が飛んできた。
「レンさん、リオンさん!」
「ん?」
「こっち、夕日すごいですよ!」
小高い丘。
空が赤く染まっている。
ミアがその隣に立っていた。
風で黒髪が揺れている。
「ほんとだ」
俺は思わず呟いた。
綺麗だった。
空も。
二人も。
この時間も。
全部。
「レン」
ミアがこちらを見る。
「来ないの?」
「行く行く」
俺は丘を登る。
その後ろから、
リオンがぽつりと言った。
「……やっぱ変なやつ」
「褒めてる?」
「かなり」
⸻
丘の上。
四人で並んで夕日を見る。
静かな時間。
「こういうの、悪くないですね」
フィアが微笑む。
「……ん」
ミアも小さく頷く。
リオンは隣で空を見上げていた。
「キミたちさ」
「ん?」
「ほんと不思議な関係」
「今さらだな」
俺が笑う。
すると。
リオンも少し笑った。
「でも嫌いじゃないよ。そういうの」
夕日が沈んでいく。
長く伸びた影が、
四人分並んでいた。
その景色を見ながら。
俺はふと思った。
たぶん今の俺は。
ちゃんと幸せなんだと思う。
第22話、読んでいただきありがとうございました。
派手な戦いよりも、「相手の一言で心が乱れる瞬間」を大事に書いている作品なので、今回もその空気を感じてもらえていたら嬉しいです。
ここから先、二人の関係は少しずつ形を変えていきます。
まだ名前のついていない感情が、どんなふうに繋がっていくのか、ぜひ見届けてください。




