なんで俺たち、指名依頼来てるの?
新章スタートです!
三人パーティ、
ついに周囲から“名前付き”で認識され始めました。
レンはちょっと浮かれています。
でもたぶん今回も、
百合の空気からは逃げられません。
朝。
ギルドへ入った瞬間、
空気が少し違った。
「……見られてない?」
俺が小声で言う。
「見られてる」
ミアが即答した。
フィアは困ったように笑う。
周囲の冒険者たちが、
ちらちらこちらを見ている。
なんだ。
また何かやったか俺たち。
「レンさんたち!」
受付嬢が慌てた様子で手を振る。
「ちょうど探してたんです!」
「え、何かありました?」
「指名依頼です!」
…………はい?
「指名?」
俺は素っ頓狂な声を出した。
初心者パーティだぞ俺たち。
しかも結成してまだそんな経ってない。
「北街道の護衛任務なんですが、“風使いの少年と黒髪剣士、聖職者の三人組に頼みたい”って」
「風使いの少年って俺!?」
「たぶん」
受付嬢が頷く。
なんかちょっと嬉しい。
俺、
ちゃんと認識されてる。
「すごいですね!」
フィアがぱっと顔を明るくした。
「レンさん、名前覚えられてますよ!」
「いやお前らもだからな!?」
すると後ろのテーブルから声が飛ぶ。
「有名だもんな、お前ら」
「特に黒髪剣士と聖職者の子」
「雰囲気がな」
「やめろその言い方!!」
ミアが露骨に顔をしかめた。
フィアは耳まで赤い。
最近ギルド全体が察し良すぎる。
「でも実際強いよな」
「連携えぐいし」
「あと風使いの兄ちゃん、囮性能高い」
「褒めてる!?」
微妙。
かなり微妙。
⸻
依頼主は商人の男だった。
「君たちが“三つ星の灯”か」
「……え?」
俺たちは揃って固まる。
「なんですかそれ」
「通り名だよ」
商人が当然みたいに言う。
「最近噂になってるじゃないか。“黒髪の剣と白魔法、風使いの三人組”って」
知らん。
初耳だ。
「特に夜の討伐戦、かなり話題だったぞ」
「あー、ブラッドベアの件ですか」
「見事な連携だったらしいな」
フィアが少し照れたように笑う。
ミアは無言。
でもちょっとだけ嬉しそうだった。
「それで?」
ミアが聞く。
「護衛対象は?」
「この荷車だ。薬品を隣町まで運びたい」
商人は少し真面目な顔になる。
「最近、“夜盗蜘蛛”が出る」
嫌な名前来た。
絶対嫌なやつ。
「蜘蛛かぁ……」
俺ちょっと苦手なんだよな。
「レン、顔青い」
「蜘蛛デカいの嫌だろ普通!」
「私は平気」
「強い」
「フィアは?」
「わ、私も少し苦手です……」
その瞬間。
ミアが自然にフィアの肩を軽く叩いた。
「……私が守る」
さらっと言った。
呼吸みたいに。
フィアが少し笑う。
「うん」
…………。
俺は思った。
こいつら、
もう無自覚でイチャついてる。
⸻
依頼の説明を終えた帰り道。
俺たちは並んで歩いていた。
「“三つ星の灯”かぁ」
俺は呟く。
「なんか冒険者っぽいな」
「嫌?」
フィアが聞く。
「いや、ちょっと嬉しい」
実際、
悪くない名前だと思った。
三人組って感じするし。
「レン」
ミアがこちらを見る。
「ん?」
「……ちゃんと三人の名前だった」
一瞬。
意味が分からなかった。
でも。
そのあと気づく。
“黒髪剣士と聖職者”じゃなく。
“風使いも含めた三人”。
ミアはそれが言いたかったんだ。
「……そっか」
なんか。
胸の奥が少し熱くなる。
フィアがふわっと笑った。
「はい。三人の名前です」
夕方の風が吹く。
街の灯りが少しずつ増えていく。
俺は思った。
恋愛の形は、
たぶん俺の理想とは違った。
でも。
この三人で進む物語は、
ちゃんと俺のものでもあるんだって。
第14話ありがとうございました!
ついに通り名が付きました!
「三つ星の灯」
個人的に、
かなりこの三人らしい名前になった気がします。
そして今回大事なのは、
ミアが
「ちゃんと三人の名前だった」
って言ったところ。
レン、
今までずっと
“二人の関係の外側”にいる感覚を持っていたんですよね。
でもミアもフィアも、
ちゃんとレンを“パーティの一員”として大切に思っています。
恋愛ではなくても。
隣にいてほしい相手として。
あと蜘蛛回が近づいています。
レン、がんばれ。




