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第4話 “天然”は作れない


天界にて。


「……足りぬ」


創造神ゼルヴァグは、今日も重々しく言い放った。


「“究極のかわいい”には、まだ一要素欠けている」


静まり返る天使たち。

その中で、一人の大天使が一歩前に出た。


「恐れながら申し上げます」

「“天然”が不足しております」


場がざわついた。


「天然……だと?」


ゼルヴァグの声が低く響く。


「はい。“計算ではないかわいさ”——それこそが究極の一手かと」



沈黙。




「……採用」


軽かった。




「新たな教育係を任命する」


呼ばれたのは——


「はーい!任されましたぁ〜」


ふにゃっとした笑顔の天使、ポヨンナ。

隣で、ミルフィナが固まる。


「ちょっと待ってください!?“かわいい”は理論です!!」


「え〜?感覚じゃないですか〜?」


開始前から戦争だった。




■下界


少女は、ベンチでパンを食べていた。

そこへ、二人の天使が同時に現れる。


「今日もレッスンです!」


「今日もゆる〜くいきましょ〜」



少女、パンをかじりながら一言。


「帰っていい?」


「ダメです!!」「だめですよ〜」


ハモった。



■天然講座、開幕


ポヨンナが胸を張る。


「“天然”は、考えないことです!」


少女、即答。


「それただのバカでは?」


「違いま〜す。結果的にかわいければOKです〜」


ミルフィナが割り込む。


「ダメです!戦略なき可愛さは再現性がありません!」


「再現しなくていいんですよ〜?」


火花が散った。



■実践①:会話


「質問にちょっとズレた答えを返しましょう〜」


通行人「いい天気ですね」

少女「地球は回ってるらしいよ」


通行人、困惑。

ミルフィナ絶叫。


「ズレすぎです!!ただの哲学!!」




■実践②:うっかり


ポヨンナ、石につまずく。


「わ〜ころんだ〜」


無傷。


「これが天然です〜」


少女、同じ石を見る。

避けて通る。


「回避したら終わりです!!」


ミルフィナも混乱し始めた。



■実践③:食レポ


「素直な感想を言いましょう〜」


少女、一口食べる。



「……味がする」


「情報量!!」


ミルフィナが崩れ落ちる。



■教育係バトル勃発


「あなたのは“事故”です!!」


「そっちは“作り物”ですよね〜?」


「かわいいは設計できます!」


「かわいいは漏れ出るものです〜」


言い合いがヒートアップ。


「証明しましょう!」


「いいですよ〜?」




なぜか腕まくり。




光と光がぶつかる。

完全に無駄な神聖バトルが始まった。



その横で——

少女は普通にパンを食べていた。


「……騒がしい」



その時だった。


近くで、小さな子どもが風船を離してしまった。


「あっ……」


風船は、ふわふわと空へ。


少女はそれを見る。


少しだけ考えて——




走った。




ジャンプ。




届かない。




「あ」


そのまま、普通に転んだ。


「……痛っ」


間抜けだった。

完璧じゃなかった。


でも、次の瞬間。

少女は立ち上がって、笑った。


「ごめん、取れなかった」


子どもは一瞬きょとんとして——


「ううん、ありがとう!」


笑った。


少女は少しだけ驚いて。

そして、また少し笑った。


その様子を見て

ミルフィナも、ポヨンナも、動きを止めていた。


「……今の」


「……ですね〜」




天界。


ゼルヴァグがそれを見ていた。


「……なるほど」


ラフィエルが問う。


「“天然”とは何でしたか」


神は静かに答える。


「狙わぬことだ」


「失敗すら、受け入れることだ」



遠くで小天使がささやく。


「珍しくちゃんと核心ついてる」


「たまに当たる」




下界。


少女は空を見上げる。


「……そっか」


完璧じゃなくていい。

うまくやろうとしなくていい。

そのままで、いい。


「これが、“天然”か」


ミルフィナが近づく。


「今のは……計算ではありませんね」


ポヨンナも笑う。


「でも、かわいかったですよ〜」


少女、少しだけ考えて——


「……まあ、悪くないかも」


風が、少しだけ優しく吹いた。




そして天界。


ゼルヴァグが、ぽつりと呟く。


「……次は“あざとい”だな」


天使たちの絶望が、空に響いた。


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