表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/14

第3話 “かわいい”は作れない


天界に、静かな怒りが満ちていた。


「……まだだ」


創造神ゼルヴァグは、玉座で低く唸る。


「これは“究極のかわいい”ではない」


下界の少女は、たしかに変わり始めていた。

優しくなり、少し笑えるようになり、ほんの少し愛嬌も出てきた。


だが——


「“究極”には届いていない」


神の要求、無駄に高い。



「教育係をつける」

その一言で、すべてが決まった。



呼ばれたのは——


「お任せくださいっ☆」


やたらテンションの高い上級天使、ミルフィナ。


「“かわいい”は作れますっ!」


根拠はなかった。



少女の前に現れるミルフィナ。


「今日からあなたの“かわいい”をプロデュースします!」


少女は真顔。


「帰っていい?」


「ダメです☆」


こうして、地獄の教育が始まった。




■第一講座:モテ仕草


「まずはこれ!上目遣いです!」


ミルフィナが実演する。

完璧すぎて逆に腹立つ。


「こうやって……ちらっ」


少女、やる。


「……ちらっ」


完全に睨んでる。


「違います違います!敵じゃないです!」



■第二講座:ぶりっ子会話


「語尾に“♡”をつけましょう!」


「おはようございます♡」


少女、棒読み。

通行人、距離を取る。


「心が!!こもってません!!」


「♡って心でどうこうなるものなの?」


正論だった。



■第三講座:守ってあげたくなるムーブ


「ここで転びます!」


「は?」


ミルフィナが派手に転ぶ。


「きゃっ♡」


誰も助けない。

少女も無視。


「世の中そんな甘くありませんね!!」


自分で言った。



■第四講座:ギャップ萌え


「普段クール→たまに笑う!これです!」


少女、無表情で一日過ごす。

そして、夕方。


「……ふっ」


通行人、ざわつく。


「今の何!?」「レアすぎる!!」


ミルフィナ、ガッツポーズ。


「方向性は合ってます!!」


少女、納得してない。


「ねえ」


ある日、少女が言う。


「これ、全部“誰かにどう見られるか”じゃない?」


ミルフィナ、固まる。


「“かわいい”って、それだけ?」


その時だった。

近くで、またあの子どもが転んだ。


ミルフィナ、ささやく。


「チャンスです!今こそ“完璧なかわいい”を!」


少女は少しだけ考えて——


駆け寄った。


「大丈夫?」


自然な声だった。

子どもは、泣きながら頷く。

少女は、少し迷ってから。

そっと手を差し出した。


「ほら」


子どもはその手を掴んで、立ち上がる。


「ありがとう」


その笑顔は、とてもまっすぐだった。


少女は、少しだけ照れて——


「……どういたしまして」


その瞬間。

ミルフィナは、何も言えなかった。



そして、天界。

ゼルヴァグは、それを見ていた。


長い沈黙のあと。


「……あれか」


ラフィエルが問う。


「“究極”に、届きましたか?」


神は静かに頷く。


「“究極”とは、作るものではない」

「生まれるものだ」



遠くで小天使がざわつく。


「またいい感じにまとめたぞ」

「いつものだ」



下界。


少女は、ふと呟く。


「……そっか」


誰かに好かれるためじゃなくて。

誰かを想ったときに、自然と出るもの。


それが——



「かわいい、か」


彼女は、少しだけ笑った。

今度は、誰も怖がらなかった。


ミルフィナは空を見上げる。


「……完敗です」


そしてぼそっと言う。


「でも、私の講座も……ちょっとは役に立ちましたよね?」


「三つくらいは無駄だった」


「えっ三つで済んでる!?」


笑い声が、少しだけ広がった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ