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第2話 “かわいい”を知らない少女

天界は、今日もやたらと神々しかった。


そしてその中心で、創造神ゼルヴァグは満足していた。


「完璧だ」


目の前には、一人の少女。

黒髪、整った顔立ち、柔らかい雰囲気。


どこからどう見ても“かわいい”。


「これが……“プリティー”」


神は頷いた。

周囲の天使たちも拍手している。

(見た目は)


少女はゆっくりと目を開けた。


「で?」


第一声だった。


沈黙。


「ここどこ?あとあんた誰?」


態度が、完全に可愛くなかった。


小天使が慌てる。


「えっと、あなたは創造されし存在で——」


「長い。三行で」


ゼルヴァグは固まった。


「……これは、どういうことだ」


ラフィエルが資料をめくる。


「外見の“かわいい”は完全に再現されています」


「中身は?」


「……調査対象外でした」



天界に、気まずい風が吹いた。


少女は玉座に座る神を見上げる。


「で、私なにすればいいの?」


「……“かわいく”在れ」


少女は無表情で言った。


「それ、どうやるの?」


誰も答えられなかった。



結果。


「現地で学ばせるしかない」


という、いつもの丸投げ結論に至った。

少女は、そのまま下界へ送られた。



最初に降り立ったのは、小さな街だった。


「……で?」


腕を組みながら、周囲を見る。

通行人がちらちらと振り返る。


(かわいい……)

(でもなんか怖い……)


少女はそれに気づく。


「見てくるわりに、誰も話しかけてこないのね」


そこへ、小さな子どもが転んだ。


「うわっ」


泣きそうになっている。

少女は近づく。

そして、無表情で言った。


「立てば?」


子ども、泣いた。


「……は?」


遠くで見ていた天使が頭を抱える。


「違う違う違う!!そこは優しく!!」



数日後。


少女は“かわいい”を理解しようと試みていた。


「笑えばいいのね」


にこっ


通行人、ざわつく。


「え、急に笑った……怖……」


「声を柔らかく?」


「お、おはよぉ〜……」


自分でも引いた。


「無理じゃない?」


そんなある日。

また、あの子どもと出会った。


今度は、転んではいなかった。

でも、少しだけ不安そうな顔をしていた。


少女は少しだけ迷う。

そして、しゃがんだ。


「……大丈夫?」


ぎこちない言葉だった。


子どもは、少し驚いてから


小さく頷いた。



その瞬間。

少女は、ほんの少しだけ理解した。


(ああ、“こういうこと”か)


それから少しずつ。

少女は学んでいった。


無理に笑わなくてもいいこと。

相手を見ること。

言葉を選ぶこと。


完璧じゃない。


でも、少しずつ変わっていく。



ある日。

同じ子どもが、笑って言った。


「おねえちゃん、すき」


少女は、少しだけ驚いて。

少しだけ照れて。

そして、自然に笑った。


それは、最初に作られた“かわいい”よりもずっと——

柔らかかった。



天界。


ゼルヴァグは、その様子を見ていた。


「……なるほど」


ラフィエルが問う。


「いかがでしたか」


神は静かに言った。


「“かわいい”とは、形ではなく……過程か」


遠くで、小天使たちがざわつく。


「深いこと言ってる風でまとめたぞ」


「いつものやつだ」


神は咳払いをした。


「……次は最初から中身も設計する」


天使たちの悲鳴が、再び天界に響いた。


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