エピローグ ほどほどの世界
天界は、今日も変わらず荘厳だった。
「……最近」
創造神ゼルヴァグが、ぽつりと呟く。
「下界からの信仰、減っていないか?」
ラフィエル、即答。
「減ってます」
「なぜだ」
「下界ばかり見て、仕事してないからです」
沈黙。
ゼルヴァグ、少しだけ考える。
「……仕事はしている」
「何をですか」
「みつを見守ること」
ラフィエル、ため息。
「違います」
「あなたの仕事は、“世界を創造し、維持すること”です」
「……」
「今、下界では飢饉が起きています」
「人々は疲弊し、助けを求めています」
静かだった。
ゼルヴァグは、ゆっくり頷く。
「……なるほど」
「では」
少し考えて
「豊穣の神に連絡する」
ラフィエル。
「嫌な予感しかしません」
■数日後・下界
「……え?」
畑が、爆発的に実った。
米、山。
果物、山。
野菜、山。
とにかく
「多い」
収穫量、限界突破。
市場。
「安い!!」
「いや安すぎる!!」
「タダみたいな値段になってる!!」
■崩壊
供給、過多。
価格、急落。
農家、困惑。
商人、混乱。
経済、崩壊。
「助かったけどダメになった!!」
■天界
ラフィエル、静かに報告。
「……経済が壊れました」
ゼルヴァグ。
「なぜだ」
「やりすぎです」
「適量という概念はないのか」
「あります」
沈黙。
■下界
みつと和は、スーパーにいた。
「……安いね」
「助かるけど、ちょっと怖いな」
普通の会話だった。
でも、ちゃんと生活している。
みつは少し考えて
「……ほどほどがいいね」
和、笑う。
「うん、ほどほどが一番」
二人は、普通に買い物をして帰る。
特別じゃない。
でも、それがいい。
■天界
ゼルヴァグは、その様子を見ていた。
「……ほどほど、か」
少しだけ考える。
そして
「難しいな」
ラフィエル、即答。
「だから仕事なんです」
神、腕を組む。
「……次は、ほどほどにする」
遠くで天使たちがざわつく。
「信用できない」
「絶対またやる」
ゼルヴァグは、また下界を見る。
みつと和が、並んで歩いている。
その姿に、少しだけ満足そうにして。
そして、ぼそりと呟く。
「……まあ、いいか」
世界は、今日も少しだけズレながら
それでも、ちゃんと回っていた。




