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第10話 名前で呼ぶということ


夕方の風が、少しだけやわらかい日だった。


「……みつ」

多井和が、少しだけ緊張した声で呼ぶ。


「なに、和くん」

河合みつは、いつものように隣にいる。

特別じゃない時間。



でも



和にとっては、特別だった。


「俺、みつと一緒にいる時間が好きです」


みつは、静かに聞いている。


「何でもない時間でも、ちゃんと楽しくて」


「……安心できて」


少し言葉を探して。


「これからも——」



その時だった。



「ちょっと待ったーーー!!!」

空間、割れる。


みつ。

「……来た」



キラッキラの男が現れる。

「初めて見た時から決めてました!」

ポーズ、完璧。

「君は僕のものだ」


みつ。

「初対面」


終了。



もう一人、優雅系イケメン登場。

「僕が、君をもっと輝かせてあげる」


みつ。

「今で足りてる」


即終了。



■天界


ゼルヴァグ、食い入るように見ている。

「今度こそ……」


ラフィエル、無言。



■下界


二人の“かっこいい”が和を見下ろす。

「君には無理だ」

「彼女には、もっと相応しい存在がいる」

空気、少しだけ張り詰める。



和は

少しだけ考えて。


そして、普通に言った。


「……そうかもしれません」


みつ、少し驚く。



「でも」


和は、まっすぐみつを見る。

「それでも、俺はみつと一緒にいたいです」

静かだった。


「すごいことはできないし」

「特別でもないけど」

「ちゃんと隣にいることは、続けたい」


「……だから」


「俺と、付き合ってください」


言い切った。



風が、少しだけ吹く。

神作イケメンたち

何も言えない。



みつ

少しだけ、考える。


今までのこと。

学んできたこと。

全部じゃなくていい。


ただ


目の前の人を見る。


「……うん」

小さく頷く。


「よろしく、和くん」


その笑顔は、自然で。

ちゃんと、かわいかった。



■完全敗北


神作イケメン①

「……初手で負けた」


神作イケメン②

「輝かせる前に終わった」


同時に崩れる。



■天界


ゼルヴァグ、沈黙。




長い沈黙。




そして



「……負けた」

認めた。


ラフィエル、少しだけ優しく言う。

「相手が悪かったですね」


「……ああ」


神は、下界を見る。


みつと和が、少し照れながら並んで歩いている。


その姿を見て


「……よかったな」

声が、少し震える。


そして


涙。


止まらない。



■天使たち


「出た!!」

「ティッシュ!!早く!!」

小天使たちが走る。

床に落ちるティッシュ。

拾う係、配る係、補充係。


完全に業務化していた。


「新しい仕事増えてる!!」



■神


鼻をすすりながら。

それでも、目はずっと下界。


「……幸せそうだ」


少しだけ、誇らしげに。

「我の創造物だからな」


ラフィエル、ぼそり。

「半分は本人の努力です」


神、聞こえないふり。



■下界


和が、少し照れながら言う。

「……改めて、よろしく」


「うん」


そして、少しだけ。

自然に、距離が近づく。


手が


触れそうで、触れない。



でも、それでいい。


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