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48/50

48 狂騒するテロップ

第6章 浮かび上がる輪郭  第48話 狂騒するテロップ


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


=======

ブランドン・ポーカー(公式)


東シナ海で予定されていた軍事演習については、

計画を変更する。


それをアメリカの後退と呼ぶ人間がいるらしい。

笑わせるな。

アメリカは今も世界にネットワークを形成している。

必要であれば、我々はいつでも行動を起こす。


第七艦隊は佐世保へ移動する。

沖縄の海兵隊との合同演習も実施する予定だ。


ミサイル発射訓練。

強硬揚陸訓練。

及び統合作戦訓練。


我々は準備する手を止めない。

平和を守るには、アメリカの力が必要だ。

そして、その力は神の祝福と共にある。


#第七艦隊

#AmericaFirst

#沖縄

=======


ポーカー大統領の投稿が公開された。


すると——

報道各社は、まるで号砲でも鳴ったかのように速報を打った。


テレビ局。

新聞社。

ネットメディア。


次々とテロップが流れ、専門家たちが解説を始める。


結局のところ、

東シナ海のEEZで予定されていた軍事演習を取りやめ、

訓練の主軸を日本国内へ移した。

それによって、中国海軍との正面衝突の危険性は、ひとまず遠のいた。


しかし——


佐世保へ集結する第七艦隊。

沖縄で実施される大規模合同演習。

そして、繰り返されるミサイル発射訓練。


南シナ海から東シナ海、

そして極東へと続くシーレーンの混乱は、

依然として収まる気配と見せていなかった。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


ポーカー大統領には、

繰り返し口にする聖書の一節があった。

「日の出る方から来る王たち」

それが何を意味しているのか。

側近たちでさえ、正確には理解していなかった。

だが、東シナ海への第七艦隊軍事展開構想に、

その思想が影響していたことだけは確かだった。


だがそれが、彼の口から語られることはなかった。


その代わり、

アメリカ国内報道各社の紙面には、

MEC推進に反発する勢力による、妨害活動の激化が報じられていた。


建設予定地周辺での妨害活動。

関連企業への襲撃。

各地で広がる反対運動。


それらは単なる抗議活動の域を超え始めていた。


さらに——

そこには“影の船団”とされる関連組織の関与や、

東側諸国が背後で糸を引いているとする陰謀論までもが飛び交っていた。


また依然としてホルムズ海峡で続いている、

海上の安全確保のためとされる“通行規制”までもが、

MECを封じ込めるための戦略として、始められたことなのだと報じていた。


=======

The New York Tribune(公式)


MEC(地中海エネルギー回廊)の真実


これは中東和平の象徴なのか。

それとも、新たな地政学的覇権構想なのか。


ポーカー政権が推進するMECは、

表向きには中東各国の経済統合と、

戦後復興を目的とした巨大インフラ計画として説明されている。


イラク北部から地中海へ至るエネルギー輸送網。

アラブ諸国を結ぶガスパイプライン。

そして湾岸から欧州へと続く新たな物流回廊。


ホワイトハウスはこれを

「平和のための経済基盤」と位置付けてきた。


だが——

本当にそうなのだろうか。


当初、

MECの地中海側ハブ港として有力視されていたのは、

トルコ南部のメルスィン港だった。


トルコ領内であること。

アラブ諸国との政治的均衡を保ちやすいこと。


複数の専門家は、それが採用理由だったと説明している。

しかし現在、

ワシントンやテルアビブの政策関係者の間では、

別の見方が広がっている。


最終的な受益者は、

イスラエルなのではないか——


というものだ。


近年急速に整備が進むハイファ港。

イスラエル政府主導による物流投資。

そしてパレスチナ和平後に進められた制度改革の数々。


それらは偶然にしては、あまりにも整合性が高い。

もしMECの真の目的が、

中東全域のエネルギーと物流を

ハイファへ集約することにあったとすれば——


イスラエルは単なる参加国ではない。


もし仮説が正しければ、制度設計者そのものとなる。


さらに、一部のアナリストは、

ポーカー政権が当初から、この構図を想定していた可能性を指摘する。

まずはメルスィンを表向きのハブ港として提示し、関係国の理解を得る。

その後、

建設効率や輸送コストを理由として、段階的にハイファへ機能を移転する。


そうしたシナリオが、水面下で検討されていたのではないか——


というのである。


もちろん、現時点でそれを裏付ける決定的証拠は存在しない。


だが、

現在続いている海上輸送網の混乱。

ホルムズ海峡の通行規制。

そして“影の船団”による活動。


これらがMEC構想の進展と、

奇妙なほど同じ時間軸で発生していることも事実である。


東側諸国は、MECの本質をすでに見抜いていたのではないか。

もしそうだとすれば、

現在の“事実上のシーレーン封鎖”とも呼ばれる状況は、単なる地域紛争ではない。


新たなエネルギー秩序を巡る、

“名もなき戦争”は、すでに始まっているのかもしれない。


#MEC

#パレスチナ特別就労圏

#海上輸送混乱

=======


そして数日後——


今度はホワイトハウス側が動いた。


『ホワイトハウス、ニューヨーク・トリビューンの記事差し止めを要求』


そんな速報テロップが、再び全米を駆け巡る。


ポーカー大統領の投稿に各報道機関が飛び付き、

連日のように憶測と分析を繰り返した。

その矛先がMECへ向けられると、今度はホワイトハウスが強く反発する。


まるで互いに牽制し合うかのように——


政治が言葉を放てば、メディアが追いかける。

メディアが疑問を投げかければ、政治が打ち消そうとする。


テロップは流れ続け、

その騒音が日ごとに大きくなると、

この騒動の発端や原因を忘れてしまうのだった。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


日本国内では、

先日行われた鷹内首相と

日本被団協・中田照臣との対談について、

その内容を扱ったコラムが新聞に掲載されるより先に、

西日本通信社による予告動画が配信されていた。


『新たな平和構想は築かれるのか』


そんな挑発的なタイトルだった。


進化したFOIPは、

核兵器を含む軍事的脅威から日本を守る構想となり得るのか。

動画は公開直後から注目を集め、SNS上でも議論を呼んでいた。


だが——


この動画とは全く別のルートから、

新たな平和構想の必要性を想起させる情報が公開されていた。


日本国内のOSINT系調査チャンネル『DEEP SEARCH CAST』である。


衛星画像解析と公開情報分析を専門とする彼らは、

此度公開された原子力潜水艦の進水式の映像と、

中国海軍基地の最新画像を照合し、ある懸念について警告を発していた。

そして、その調査動画は、平和構想とは別の形で世間を騒がせ始めていた。


動画内で示されたのは、

まず中国側が公開した進水式の映像だった。

通常であれば秘匿されるはずの映像が、なぜ今回に限って公開されたのか。

彼らはまず、その点こそ注目すべきだと指摘していた。


映像内では、原子力を動力源としながらも、

従来型と比較して飛躍的に向上した静音性について説明がなされていた。

さらに、唐級と呼ばれる新型原子力潜水艦について、

射程1万kmを超えるSLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)の

運用能力を備えている可能性が高いと分析していた。


つまりそれは、

中国が単に新型艦を建造したという話ではない。

核抑止戦略そのものを、次の段階へ進めようとしている可能性を意味していた。


そして、彼らが次に示したのは、

中国本土沿岸部に建設された新たな軍事施設だった。

衛星画像からは、大規模な地下施設群に加え、

潜水艦用桟橋の拡張工事や、周辺インフラの整備も確認されていた。


それらを総合的に分析した結果、

戦略原潜部隊の拡張準備である可能性が極めて高い——

彼らはそう結論付けていた。


もちろん、

その施設が核弾頭保管庫であることを示す証拠は存在しない。

公式な発表もない。

確証はどこにもなかった。


だが——


「もしそうだとしたら」


その一言が、ネット上で急速に独り歩きを始める。

原子力潜水艦の遠洋常時展開。

潜水艦発射型核ミサイル。

第二撃能力。

核抑止。

専門家による解説が繰り返されるたびに、

議論はさらに先へ進んでいく。

もし中国が新たな戦略原潜部隊を整備しているのだとすれば。

もしそのSLBMが推定される通りの性能を有しているのだとすれば。

アメリカ本土の主要都市すべてが、その射程圏内に収まることになる。


そうした分析が拡散されるにつれ、危機論は徐々に姿を変えていった。

軍事分析は軍拡論へ。

軍拡論は危機論へ。

そして危機論は、

最悪の未来予測へと変貌していく。


やがてSNSでは、


『中国、核戦力を大幅増強か』


『米中核対決が始まる』


そんな言葉まで飛び交い始める。

それは、次なる戦争が起きた時、

核兵器の使用が現実の選択肢として語られていることを意味していた。

本来であれば、

それは米中だけの問題ではない。

核兵器が使用される可能性そのものが、

日本を含めたすべての国にとって、等しく脅威であるはずだった。

そして人々は、

未知なる恐怖によって、事実を見失い、

理性は雑音に埋もれ、平穏は、少しずつ蝕まれていくのだった。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



日頃よりご愛読いただき、心から感謝しております。

当面のあいだ更新が不定期となりますこと、何卒ご容赦ください。

今後ともよろしくお願い申し上げます。


※ 本作は近未来を舞台にしたフィクションです。

現実の政治・社会と重なる部分があるかもしれませんが、

登場する団体・人物・名称はすべて創作であり、

特定の組織や個人を批判する意図はありません。

また本作は『国家再編計画書』の理念と制度設計を参照し、

国家構造の再構成をめぐる可能性を探る仮想的シナリオとして

構成されています。


※ 作中の政党名はリアリズムを高めるため、以下のように置き換えています。

自由党・公免党・民立党・民国党・参節党・一心の会・れいの真誠組・共同党・

社守党・日本維持党・チーム将来・中革連 など

(ストーリーの進行に応じて変動・追加される場合があります)


※ 本作は物語の進行にあわせて加筆・修正を行う場合があります。

大きな変更については適宜お知らせいたしますが、

主に文章表現やニュアンスの調整を目的とした軽微なものです。。


※ 本作の文章推敲や表現整理の一部にはAI(ChatGPT)を活用しています。

物語の構想・内容はすべて作者自身のものであり、

AIは読みやすさの調整や資料整理の補助として利用しています。

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