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妖国伝エルソラーナス ― 剣と石の叙事詩 ―  作者: 美刀 尊志


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9/20

ヤン川の渡船砦

はじめまして。

本作をお読みいただきありがとうございます。


世界観重視のハイファンタジーです。長い旅の始まりですが、ゆっくりと広がる物語を楽しんでいただけたら嬉しいです。

クールゥ門を後にした一行は、巨大な城壁を背に、白緑色の石畳の道を進んでいた。


わずかに起伏のある舗装路を、哺乳獣たちは速足で進んでいた。


目指すはヤン川の渡船場。


そこから船でクリュージ川へ入り、北岸へ渡る。


レジイ湖とクリュージ川に挟まれた狭い岸辺に築かれた砦――ヤン砦。


イルージから北へ向かう者にとって、そこは最初の要衝だった。


本日の行程は、そこまでだ。



この街道でギゼリオンに出会うことは、まずない。


少なくとも――これまでは。


ロワン地方は、城壁の外にあっても治安が良いことで知られている。

街道も整備され、半日の行程ごとにレキシミリードの守る砦が置かれている。


旅人やキャラバンにとって、それは当たり前の安心だった。



――だが、その前提が揺らぎ始めている。



「ところでよ」


イストハックが、巨大な哺乳獣の手綱を軽く引きながら口を開いた。


「イルージの砦に行くってことはよ――戦になるってことか?」



「よく分からずに付いてきたのか?」


ユンタスが呆れたように言う。



「ああ、それは私が説明していなかった」


キリムが苦笑する。


「何しろ、彼は二つ返事で来ると言ってくれたからね」



イストハックは眉を吊り上げ、口をへの字に曲げた。


怒りを爆発させまいと、かろうじて抑えているのが分かる。



「南部連合――エピナスの“会議”が招集された」


キリムの声が、わずかに低くなる。


「北方で、何かが起きている」


「私は戻る途中で、スカードルに遭遇した」



「……何だと?」


イストハックの目が見開かれる。


「あの羽根の生えた化け物か。そいつに出会うってのは、ただ事じゃねえな」



軽口は消えていた。



「それじゃあ――」


イストハックの口元が歪む。


「そいつらを殺りに行くってわけか?」



「まずは砦だ」


キリムは静かに言った。


「第3師団と合流する」


「指揮官はエステラーザだ」



その名が出た瞬間、イストハックの表情が変わる。



「エステラーザの野郎か!!」


目が輝いた。


「話が早ぇ!!あいつがいるなら――血祭りだ!!」



その咆哮に呼応するように、哺乳獣が石畳を軋ませる。



だが――



「そう単純な話ではないんだ、イストハック」


キリムの声が、それを断ち切った。



「問題は、“なぜ”だ」


「なぜギゼリオンが各地に現れているのか――それが分かっていない」



ユンタスが言う。


「ここ二百年、タラサ付近での出現はなかったはずです」


「それにしても、どういうわけでタラサなどに行かれたのですか?」



キリムはユンタスに視線を向ける。


「ベカリオンで聞いた話だが、タラサ近辺で遺跡調査をしている者たちがいるらしい」


「ケレスの調査隊だ」


「接触を試みたが――会えなかった」



「そこで、スカードルと遭遇した」


キリムは眉をひそめた。


「ギゼリオンすら現れなかった地で、だ」



偶然とは、思えなかった。



ゼルナは、しばらく何も言わなかった。


思考の奥で、何かを組み立てているようだった。



やがて、ふと顔を上げる。



「――サーメルが出迎えていますね」



ヤン川の渡船砦。


その物見台に立つレキシミリードを見据える。



「ですが――」



紫がかった青い瞳が、わずかに細められる。



「いつもと様子が違うようです」

お読みいただきありがとうございます。


今後も更新していきますので、よろしければブックマーク等していただけると励みになります。

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