ホワイテスの”ストーン”
はじめまして。
本作をお読みいただきありがとうございます。
世界観重視のハイファンタジーです。長い旅の始まりですが、ゆっくりと広がる物語を楽しんでいただけたら嬉しいです。
「ユンタス、私はモナ・ゼフリのところへ行って来ます。話したいことがおありとのことです」
ユンタスは視線を落とし、朝の光を受けてきらめくゼルナの青い瞳を見つめた。
「分かりました。私は装備の準備に取り掛かります」
「よろしく頼みます」
柔らかな表情を残し、ゼルナはエティルーダの塔へと戻っていった。
塔に入ると、白雷石で造られた階段が左右にゆるやかに湾曲しながら上へと続いている。
ゼルナはそれを静かに昇り、白い扉を押し開けた。
黄色い宝石の光に導かれながら、大会議場へと続くホールを進む。
やがて、ユスランの影刻が施された白い扉が見えてきた。
小部屋に入ると、ゼフリがエルダーの一人と話をしている。
「おお、ゼルナか。これへ」
ゼルナは穏やかな表情のまま歩み寄った。
「ここへお主を呼んだのは――”ストーン”のことじゃ」
ゼフリは髭を撫でながら言う。
「良いかゼルナ。お主はイルージ最高の白の属性――ホワイテスのレキシミリードじゃ。
わしの知る限り、この大陸において他にはおらぬ」
ゼルナは黙って聞いていた。
その意味は、十分に理解していた。
”ストーン”。
それは、神宝石のみで形作られた透き通る指輪。
人の手では容易に加工できぬとされ、その由来も明らかではない。
レキシミリードは、自らの属性に応じた”ストーン”しか扱えない。
異なる属性のものは、指に通すことすら叶わない。
反発するように、拒まれるのだ。
だが――
「ホワイテスは別じゃ」
ゼフリの声が、わずかに重くなる。
「白はすべてを内包する。
黄、青、緑、燈、赤、紫――あらゆる属性の”ストーン”を扱うことができる」
「そして、ホワイテスの”ストーン”は、それらすべての“力”を内に宿しておる」
ゼルナの瞳が、わずかに揺れた。
イルージ随一のレキシミリードであるゼフリですら、持つのはイエロネス――黄の”ストーン”のみ。
それは黄の属性を示すに過ぎず、他の”力”を内包しているわけではない。
ゼフリは大卓に肘をつき、手を組んだ。
「他国の者と会う際には、用心に用心を重ねるのじゃ」
その眼光が強まる。
「お主の”ストーン”を見て、特別な関心を示す者が必ず現れる。
無用に人の目に晒すでない」
「モナ・ゼフリ、承知いたしました」
ゼルナは静かに応じる。
「出来得る限り、“ホワイテスの力”は隠します。
別の属性の”ストーン”を持ち歩いた方がよろしいでしょうか」
ゼフリはわずかに笑った。
「さすがじゃの。
わしと同じイエロネスを使うがよい。お主には可能なはずじゃ」
塔を出た後、ゼルナは、ゆっくりと歩みを進めながら考えていた。
自分のもとに集いつつある”ストーン”。
白――ホワイテス
黄――イエロネス
そして――
力が――偏りすぎている。
ゼルナはエティルーダの塔を振り返った。
イルージに無用の関心を向けさせてはならない――その気配すら、悟らせぬように。
お読みいただきありがとうございます。
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