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妖国伝エルソラーナス ― 剣と石の叙事詩 ―  作者: 美刀 尊志


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ケレス軍

※活動報告にて物語の舞台となるロワン地方の地図を公開しました。位置関係の参考にどうぞ。

丘を下ると。


青と銀の旗が、風を受けて大きく翻っていた。


整然と並ぶ八千五百の将兵。


歩兵。


長槍隊。


弓兵。


哺乳獣隊。


どの隊列にも乱れはない。



キリムは静かに見渡す。


「よく整っている。」



隣のエステラーザも頷いた。


「変わらぬな。」



その時だった。


軍勢の中央から、一騎の哺乳獣が静かに進み出る。


飾り気のない鎧。


使い込まれた剣。


真っ直ぐに伸びた背筋。


男はイルージ軍の前で哺乳獣を止める。


迷いのない動きだった。


静かに哺乳獣から降りる。


まずミリナスの前へ進み、深く一礼した。


「王女殿下。」


「お待たせいたしました。」


「全軍、異状ございません。」



ミリナスは穏やかに頷く。


「ご苦労でした、デンニル。」



その一言に。


デンニルは静かに頭を上げた。


視線がキリムへ移る。


互いに顔を見合わせる。


「久しいな、キリム。」



キリムも頷く。


「ああ。」


「変わりないようだな。」



二人は右手を差し出す。


固く握る。


それだけだった。


長い言葉はいらない。


互いの顔を見れば、それで十分だった。



エステラーザが静かに口元を緩める。


「また肩を並べることになったな。」



デンニルも頷く。


「心強く思います。」



イストハックが豪快に笑う。


「今度も思い切り暴れようじゃねぇか!」



デンニルの口元にも、わずかに笑みが浮かぶ。


「ほどほどにな。」



その一言に。


その場へ小さな笑いが広がった。



ユンタスも微笑む。


「皆さんがお変わりなく、何よりです。」



クヮデューゥは静かに頷く。


「デンニル殿らしい。」



その横で。


エリムスは軍勢全体へ視線を向けていた。


整然と並ぶ隊列。


兵たちの表情。


歩調。


そのどれにも乱れはない。



デンニルが軍へ向き直る。


「整列。」


その一言だけだった。


八千五百の将兵が、一糸乱れぬ動きを見せる。


槍が揃う。


盾が揃う。


哺乳獣隊も同時に止まる。



ユンタスが感嘆する。


「見事です。」



エステラーザは静かに頷いた。


「これがデンニルの軍だ。」



その時だった。


前方から、一騎の伝令が駆けてくる。


哺乳獣は一直線にキリムの前まで駆け寄ると、鋭く身を翻して止まった。


「キリム将軍。」


「クグルスより報告です。」



キリムが頷く。


「申せ。」



「ジンクラッド軍は、すでに到着。」


「各国代表も、続々とクグルス入りしております。」



北へ向かう街道には。


次々と新たな旗が加わっていた。



南部連合エピナス。



七つの国は。


いま、一つの地へ集おうとしていた。

※物語の舞台となるロワン地方の地図を公開しました。イルージ砦戦の位置や、この先の旅路も分かりやすくなると思います。活動報告よりご覧いただけます。

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