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妖国伝エルソラーナス ― 剣と石の叙事詩 ―  作者: 美刀 尊志


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七つの旗

お読みいただきありがとうございます!


南部連合エピナスが勢揃いしました。七カ国が集い、北の脅威に備えようとしています。


キリムやゼルナはその渦中に巻き込まれていきますが、この続きはまたの機会に…。


これまでお読みいただきありがとうございました。

午後。



街道の先に。


クグルスが見えた。


最初に見えたのは、城壁ではなかった。


旗だった。



一つ。


二つ。


そして。


丘を越えるたびに、その数が増えていく。



イルージ。


ケレス。


テスネリーク。


ジンクラッド。


マリヒュート。


ベカリオン。


ベルネ。



南部連合エピナスを構成する七つの国。



それぞれの旗が。


クグルスを囲むように、風を受けて翻っていた。



イストハックが大型哺乳獣の上から身を乗り出す。


「こりゃまた、とんでもねぇな」



ユンタスも周囲を見渡す。


「これほどの軍勢が集まるとは」



街道の両側には。


各国の兵。


哺乳獣。


荷車。


輜重隊。


使節団。


伝令。



行き交う人々の声が重なり。


静かだった旅路は、いつの間にか巨大な軍都の入口へ変わっていた。



キリムは何も言わず、その光景を見ていた。


八千八百のイルージ軍。


八千五百のケレス軍。


そして。


その向こうには。


すでに到着した各国の軍勢が、幾重にも陣を構えている。



遠く。


緋色の旗が見えた。


テスネリーク。


その中央。


ほんの一瞬だけ。


緋色の外套が風に揺れたように見えた。


エリムシュラーナ。


別の道を進んだ者たちも。


結局。


ここへ集まっている。



エステラーザが、青い外套を揺らしながら前方を見る。


「ようやくだな」



キリムが頷く。


「ああ」



タラサ。


ヤン砦。


サグアス。


焼けた監視所。


十二人。


そして。


夜の湖岸。


いくつもの出来事を越えて。


ようやく。


ここまで来た。



ミリナスも静かにクグルスを見つめている。



その背後には。


ケレスの青と銀の旗。


デンニルが率いてきた八千五百の将兵が、整然と続いていた。



クヮデューゥは、目の前の光景を記憶へ刻むように見渡している。



エリムスは。


各国の陣。


軍勢の配置。


旗の位置。


その全てを静かに見ていた。



やがて。


クグルスから一騎の使者が近づいてくる。


キリムたちの前で哺乳獣を止める。


「イルージ代表、キリム将軍」


「ケレス王女、ミリナス殿下」



二人が視線を向ける。



使者は深く頭を下げた。


「各国代表が揃いつつあります」


「明朝」


「七国による会議を開きます」



風が吹く。


七つの旗が。


一斉に大きく揺れた。



南部連合エピナス。


長く南部を支えてきた七つの国。


明日。


その全てが、一つの卓につく。



何を守るのか。


どこまで進むのか。


誰と戦うのか。


そして。


タリデューサ山脈の向こうで。


今。


何が起きているのか。


すべての方針が。


ここで決まる。



キリムは、クグルスの城壁を見上げた。


旅は。


ここまでだった。


だが。


戦いは。


まだ始まってすらいない。



その少し後ろで。


ゼルナだけは。


クグルスを見ていなかった。


紫がかった青い瞳は。


遥か北へ向けられている。


タリデューサ山脈。


その向こう。


誰もまだ知らない大地。


そして。


もっと遠く。


人も。


国も。


ギゼリオンも。


まだ触れたことのない何か。


ゼルナは。


何も言わなかった。


風だけが。


黒い髪を静かに揺らしている。



やがて。


クグルスの門が開いた。


七つの旗が翻る。


南部連合エピナス。


その運命を決める日が。


始まろうとしていた。

ここまで読んでいただきありがとうございます!


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