表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妖国伝エルソラーナス ― 剣と石の叙事詩 ―  作者: 美刀 尊志


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
29/33

湖岸の影

※活動報告にて物語の舞台となるロワン地方の地図を公開しました。位置関係の参考にどうぞ。

草地が揺れた。



次の瞬間。


低い影が、一気に飛び出す。


速い。



近衛兵の哺乳獣が短く嘶いた。



キリムの剣が、ほとんど反射のように抜かれる。


青白い剣閃。



だが。


影はその斬線を避けるように地を滑った。



「……っ!」


イストハックが身を捻る。



その脇を、黒灰色の巨体が駆け抜けた。


ギゼリオン。


だが、通常種とは違う。


身体が低い。


四肢が異様に長く、背面には骨針のような突起が並んでいる。


しかも二体。



「散ってはいけません!」


ミリナスの声。



二体は群れ行動を取っていた。


一体が正面へ現れた瞬間、もう一体が側面へ回り込む。



「右から来ますぞ!」


ユンタスが前へ出る。



その瞬間。


側面側の個体が、不自然に跳んだ。


高い。


まるで重さがない。


近衛兵の一人へ飛びかかる。



だが。


その直前。


空気が、静かに沈んだ。



ゼルナの右中指の“ストーン”が淡く黄色を帯びる。


黄金色の光が、静かに周囲へ広がった。


生じた風圧に、ゼルナの淡い青緑の外套が大きくはためく。



跳躍していた巨体が、空中で急激に軌道を失った。


重い音。


地面へ叩き落とされる。



キリムが即座に踏み込んだ。


青白い斬撃。


前脚が断ち切られる。


そこへミリナスが、正確な鋭い切先を数度浴びせる。


ギゼリオンは低く絶叫し、崩れ落ちる。


やがてそれは泡立ち始め、黒紫の石へと変わった。



もう一体は真正面から迫る。


一直線にクヮデューゥ側へ突っ込む。


調査員たちの空気が張る。



その時だった。


「右へ三歩」


クヮデューゥが静かに言った。


調査員たちが反射的に従う。



次の瞬間。


突進してきたギゼリオンが、横転した荷車の残骸へ激突した。


木材が砕け散る。



イストハックが笑う。


「ハッハッハァッ! クヮデューゥ、ヤツの動きを読んでやがったのか!」



「単純です」


クヮデューゥは視線を逸らさない。


「視線が固定されていた」



そこへ。


エリムスの左中指の“ストーン”が淡い黄色に輝き、周りが黄金に歪む。


ギゼリオンの動きが、空間感覚を失ったように大きく乱れる。


足運びそのものが狂い、よろけ始める。



そこへユンタスの重い斬撃が叩き込まれた。


骨が砕ける音。


巨体が地面へ崩れ落ちる。



初め急激に泡立ち、それから静かに石化していく。


風だけが、草地を揺らしていた。



イストハックが倒れた個体を見下ろす。


「タラサの連中より、よっぽど獰猛だな」



「好戦的でしたな」


ユンタスがフルーグリッターの剣先を見つめ、鞘に素早く滑り込ませる。



「サグアスと見ましたが、狩猟型ですね」


クヮデューゥが答える。



キリムは黄金のフルーグリッターを鞘に納め、戦いの跡を確認している。


「少数で急所を崩すことへ特化している」



エリムスが倒れたサグアスへ視線を向ける。


「……北側で増えている型に近い」



ミリナスが眉を寄せる。


「これが南へ?」



「タリデューサ山脈を越え始めています」


エリムスの声は低かった。


「思ったより早い」



ゼルナは、石化したギゼリオンをずっと見つめていた。


その眼は、サグアスそのものと言うより、もっと別の何かを見ているようだった。

※物語の舞台となるロワン地方の地図を公開しました。イルージ砦戦の位置や、この先の旅路も分かりやすくなると思います。活動報告よりご覧いただけます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ