表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妖国伝エルソラーナス ― 剣と石の叙事詩 ―  作者: 美刀 尊志


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
28/34

湖岸街道

※活動報告にて物語の舞台となるロワン地方の地図を公開しました。位置関係の参考にどうぞ。

タラサを発って二日。


一行は、レジイ湖の南岸沿いを西へ進んでいた。


右手には、広い湖面が続いている。


風が吹くたび、水面が鈍く白く揺れた。


街道は、かつて戦闘のあったヤン砦方面へ向かって伸びている。



哺乳獣の足音が、乾いた街道へ重く続いていた。


先頭を進むのはキリム。


その左右を、ユンタスとイストハックがやや広がるように進んでいる。


中央にはミリナスとクヮデューゥ。


その周囲を調査員四名と、ミリナス付きの近衛兵三名が固めていた。


少し後方では、ゼルナとエリムスが並んで周囲へ目を配っている。


総勢十四名。


誰が指示を出すまでもなく、隊列は既に固まっていた。


誰も完全には気を緩めていない。



途中ですれ違ったキャラバンは、どれも護衛を増やしていた。


街道脇で見かけた小村のいくつかは、昼間にも関わらず門を閉ざしている。



空気が、変わり始めていた。



イストハックが周囲を見回す。


「静かすぎるな」



「明らかに山脈北側の影響でしょう」


エリムスが答えた。


「すでに噂は広がっています」



ミリナスが小さく息を吐く。


「北のギゼリオン……」



「おそらくはギャリスが大きく絡んでいます」


エリムスの声は静かだった。


「群れに統制がある」


「ただのギャリオン――いや、ギゼリオン暴走ではありません」



クヮデューゥも頷く。


「昨夜の襲撃者も同様です」


「タラサ周辺だけで、偶発的に起きているとは考えにくい」



キリムが低く問う。


「ヤン砦へ侵入した、赤と紫の“ストーン”の持ち主達もか」



エリムスは少しだけ視線を細めた。


「可能性は高いでしょう」


「少なくとも、単独行動には見えません」



ゼルナは黙ったまま湖面を見ていた。


レジイ湖は穏やかだった。


だが、その静けさとは裏腹に、世界全体が少しずつ軋み始めている気がする。



その時だった。



キリムが、不意に哺乳獣の足を緩めた。


「……止まれ」


空気が変わる。


ユンタスとイストハックが、ほぼ同時に左右へ視線を走らせる。


街道脇。


草地の向こう。


何かが倒れていた。


一行は慎重に近づく。



キャラバンだった。


荷車は横転し、積荷は散乱している。


護衛らしき男たちが数人、周囲へ倒れていた。


だが、奇妙なことに。


積荷には、ほとんど手が付けられていない。



ユンタスが地面へしゃがみ込む。


「……爪痕ですな」



深い。


しかも複数。



イストハックが周囲を見回す。


「ギゼリオンか?」



「おそらく」


エリムスが低く答える。


その表情は僅かに険しかった。



「普通ではありません」


クヮデューゥも周囲を観察していた。



倒れた位置。


血痕。


襲撃方向。


逃走痕。



やがて、小さく呟く。


「数が少なすぎる」



ミリナスが眉を寄せた。


「少数で襲ったと?」



「ええ」


クヮデューゥの目が細くなる。


「二体……多くても三体」


「ですが、それで護衛を崩している」



風が止む。



ゼルナの視線が、ゆっくり丘陵側へ向いた。


ほぼ同時に。


キリムの手が剣へ伸びる。



草地の奥。


低い影が、静かに動いた。

※物語の舞台となるロワン地方の地図を公開しました。イルージ砦戦の位置や、この先の旅路も分かりやすくなると思います。活動報告よりご覧いただけます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ