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第一章エルフの里② 第2回有識者会議①

 夕方。

「そろそろロッジ、出しますか」

 と言ってもまだ空は明るい。

 北欧舞台と言ってもいい世界観だそうで、しかもユーリ曰く夏至も近い。ともなれば陽は沈みにくく、夜半過ぎでも空が明るかったりする。

 だいぶ慣れたとはいえ、このタイミングはいつもユーリの決定。

 やっぱベテランに任せるべきよ。

「それで、夜の食事ですが、メルリさんがまだお休み中ってことで、いかがいたしますか?」

 メルリのこと、これからの行き先のこと、先々の心配ばかりしていて、眼前の問題を忘れていた。

 皆の視線がグランディールとリリアに注がれる。

「オスカレッテさん、リリアさん、お料理って…」

 メルリの料理に感涙を流したヒミコが尋ねる。

「我らは…」

「朝昼晩、寮か団の食堂っすもんね」

「つまり…」

「すまぬ。期待に沿えず…」

「い、いえ…」

 ヒミコの顔が見る見る曇る。

「では久しぶりに僕が腕を振るうとしましょう。楽しみですねぇ」

 代案がない以上、誰もヤツを止められない。

 ユーリはルンルンとキッチンへ消えた。


◆


 誰一人口を聞かぬ夕食が終わる。

 『ユーリ飯』初体験のグランディールとリリアも表情無く口を閉ざす。

「では食事も済んだところで、第2回メルリさん有識者会議を始めようと思います」

 ん?

「なんだ、その、メルリの有識者会議って」

「ああ、カナートは初参加でしたね。まぁ僕も分かってないんですが」

 司会がそれじゃダメだろ。

「メルリちゃんを知ってる人が集まってあれこれお話しする会議だよ」

 とヒミコが説明してくれるが。

 それってメルリの知り合いの寄合、じゃねぇかな?

「まさしく、それで正解です。それでは始めたいと」

 何か聞こえる…羽音?

「おはようございますでしてぇ~」

「「「「フルル」」」」「「さま!」」

「ほへぇ~。やっとでられたのでしてぇ~」

「フルルちゃん! メルリちゃんは?!」

「もうすぐおきるのでしてぇ~」

 そうフルルが言い終わったかどうか。

「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアア」

 悲鳴。

「ね?」

 ね?じゃねぇッ!

 オレは即座に立ち上がり、メルリの部屋へ直行するが。

 うっすら開いてるドアの前でストップ。

「どわぁっ!」

 パイセンがオレに玉突き衝突。

「アイタタタぁ…どったのー? カナっち?」

「あ、いや、先に女性陣、どうぞ」

 中のメルリがどうなってるか分からんで突っ込んだら何がどうなるか分からんもんな。

「あはは、なるほど。それではお先にー」

「メルリちゅわーん!」

「失礼する」

 と、3人入室。

 フルルとリリアは?

 振り返るとリリアがフルルと話している様子。

 フルル警護の民生部の名はダテじゃない。

 さて、ドアの隙間から覗いてみると…

「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!」

「おー、よしよしよし。どうしたのー? 怖かったのー?」

 と、大泣きで抱きつくメルリをパイセンがあやしている。

 お母さん感すげー。

 それを見ていたヒミコ。

 オレ@覗き中のとこへくると、グイッと袖を引っ張り

(カナートくん、ちょっと来て!)

 と耳打ち。

 なんの用

「うわああぁあぁぁあぁ」

 袖を掴んだままオレを引っ張り猛ダッシュ。

 そしてヒミコの部屋の前。

「ちょっと待ってて!」

 ヒミコ、部屋に消える。

 いや、出てきた。

「今すぐこれに着替えて。ズボンも」

 これ…メルリが買ったシャツ?

 でもこれ、エラく綺

「つべこべ言わずに今すぐ着替えるっ!」

「は、はい! …ここで?」

「どこでもいいから今すぐ!」

「こっち…見ないでよ? もう、男子ってエッチなんだから…」


ドスっ


 蹴られた。

「そんなの少なくとも14年は見てたんだから今さら」

「…それもそうか。ちんこも見る?」

「…こういう時に悲鳴を上げる練習もしておいた方が良いのかな?」

「女優でも練習してなきゃ悲鳴ってなかなか出ないらしいぞ。で、これ、なんかキツいんだが」

 胸回りがパッツパツ。

「まぁ気にしない、気にしない! 着替えた? さ、行こ!」

「どこへ?」

「メルリちゃんの部屋に決まってるじゃん!」

「おわああぁあぁぁあぁ」

 腕を引かれて再びダッシュ。


◆


 二人で隙間から様子を見る。

「よし、行くよ!」

 とヒミコ突入。

 というか、オレも引っ張り込まれた。

 …入って良かったのかな…?

「ほらっ! カナートっ! くんっ!」

 と、グイグイ背中を押される。

「や、やあ」

 なるほど、こういう時って案外洒落た挨拶ってできないもんだな。

 まるで仮面を着けた赤い軍服の少佐殿だぜ。

 もうちっと気の利いたこと、言えねぇもんかって思うけど。

「あ、ご主人様。 …ッ! そのシャツ…!」

「あぁ、これね、わたしががんばってお洗濯しておいたから」

「でも…血の…」

「血液のシミ汚れって、大根おろしで吸わせるとよく落ちるの。乙女の嗜みってやつ?」

「へぇぇぇぇぇぇ! そうなんですかぁっ!」

 メルリ、感心すること頻り。

「スゴいです! ヒミコさん! 尊敬しちゃいますっ!」

 メルリ、感心ヒートアップ。

 しかし

「キャァーッ! メルリちゃんに褒められちゃったよぉーッ! どうしようーッ?!」

 と、もっとヒートしてるのがヒミコ。

 そしてその興奮そのままに

「カナートくん! メルリちゃんに褒められちゃったッ!」

 と、グイグイ袖を引っ張るもんだから


ビンッ ビンッ


「あ…」

 パツパツだったシャツの、胸のボタンが弾け飛んだ。

 すっげー…

 巨乳キャラのアニメ表現、男のこの身で体験するとは思わなかった…


◆


「サイズがね…無かったんだ…」

 メルリがお着替えということで、少なくともオレは席を外すことになるのだが、それにヒミコが着いてきた。

 二人してロッジのお外で待機。

 というのも今のシャツの件、聞いておこうと思ってな。

 メルリの耳に入らない方がいいのかな?って。

「洗濯したんじゃないの?」

「したよ? でもさすがに白地にあの量の血は、無理だったんだ…騙すつもりはなかったんだけど…」

「でもわざわざ買ってまで?」

「だって! あの日、メルリちゃん、すごく楽しそうだったの! 前の日、すごく落ち込んでて、でもカナートくんとお出掛けできるってなったら、笑顔になって! …わたし、ミキ姉さんに負けないくらい、メルリちゃんが好き。女の子のお手本、ってだけじゃなくて。メルリちゃんの笑顔見ると、なんだか胸があったかくなって、わたしも笑顔になっちゃう。それなのにあんなことになって…楽しい思い出になるはずだったのに…だから、せめてシャツくらいは…あんな嫌なことの跡は残したくなくて…バックアップのつもりで急いで買いに行ってみたんだけど、同じサイズは無くってね。がんばって洗ってみたんだけど、やっぱり無理で。それであんなことに…わたし、メルリちゃんにウソついちゃったんだな…やだな…」

「すげーな、お前」

「なんで?」

「いや、パイセンもユーリもだけどさ、みんな戦闘でズタボロだったじゃん? それでよくもまぁメルリのことまで頭が回るよなって」

「あれよ、好きな人のためにはがんばれるってこと」

「ふーん…でも大根おろしって、あれ、ネタでしょ?」

「ううん、ホントだよ?」

「マジかい! それが乙女の嗜みってのが分からん」

「そりゃそう。だって、男の子には無い事だからね」

「ん? …あーあーあー、そうかそういうことか!」

「そういうことだよ」

「二人ともー! いいよー、入ってー!」

「はーい」

「いいってよ。行こうか」

「うん」


◆


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