第一章エルフの里① 移動中
ともかく、早めの昼食を摂ったオレたちは、ひたすら歩いた。
モルドレンからの追手がかかる、とまでは考えにくいが、それでも距離はとっておきたい。
…別に悪いことしたわけじゃないんだが。
歩く一同、誰も喋らない。
空気が重い、というわけでもなく。
ただ、話すネタがないだけだ。
それでも誰も言葉を発しないなら、自然と空気を重く感じてしまう。
「なぁ。これ、この方向でどこ行くんだろうなぁ」
独り言のようにオレは問いかけるが、誰も答えない。
そりゃそうだ、この中に誰一人、どこへ向かって歩いてるんだか分かってないのだから。
「役場で集めた情報ですと、モルドレンより西の近場では、かの街のような規模のものは無いそうです。おおよそ村、と呼べる規模の集落がほとんどで、そういった集落も、できたり消えたりで場所と規模を把握できないんだとか」
誰も何も答えてくれない状況のオレに気を使ってか、ユーリが答えた。
「ふーん、そうなのか」
「都市と呼べる規模のものは。ですが」
一旦ここで言葉を切り、そして続ける。
「『エルフの里』、と呼ばれる集落が、あるそうです」
「里? 森じゃなくて?」
「はい。僕も気になったところなので、聞き直して確認しました。やはり、里、と」
「ふーん…」
「おや。あまりご興味が無さそうですね」
「…ん? あ、いや、そういうわけではないんだが」
「…すみません、余計なことを言ってしまいましたね。やはりメルリさんが」
「ああ…まぁ、な」
エルフの、と聞いて、やはりメルリのことが気になった。
無論、今も目覚めていないこともそうなのだが、『焼かれたエルフの森』って何なんだろうな、ということとメルリの関係。どういうこっちゃ?と。
「なぁ、ユーリ。お前ら、あのよく分かんねぇメルリを『裏メルリ』って呼んでるんだろ?」
「…はい。それは僕が名付けました。それがカナートのお気に召さず、誹りを受けるのなら、それは僕が受けるべきものです。皆さんは関係ない」
「いや、そーじゃなくて。オレもあれ、なんて言ったらいいか分かんねぇから、まぁ『裏メルリ』って呼ぶのも仕方ねぇとは思うんだ。誰が悪りぃとかいう話じゃなくてな」
「すみません。ありがとうございます」
「いやいや、謝罪も感謝も要らんのだが。なんか名前があってもいいとは思うんだけど、メルリもあれを『メルリ』としか言わんからなぁ」
「え? ちょっと待ってください。メルリさんは『裏メルリ』の存在を知っている?」
「ああ、そう言ってた。サージエンスでオラシオン=ハウウェルぶっ倒した時、出てきたじゃん?あれ。で、あの後、メルリに聞いてみたのよ。あれは何だって」
「メルリさんは、何と?」
「ぶっちゃけ分かんねぇって。そういうのが自分の中にいるのは分かってんだけど、向こうが口を聞いてくんないんだってさ」
「そうだったんですか。だとすれば、彼女、『裏メルリ』は、メルリさんの意思で出せるものではない、ということに」
「まぁそうだろうなぁ。出せるもんなら出さずにも済むだろうし」
「その件、皆さんには?」
「まだ言ってねぇよ」
「では今夜、また会議をしてみましょうか。なんというか…こういう時だからこそ、気持ちをひとつにしたいところですし」
「ああ。そうだな」
などと軽く相槌で返したが、ユーリはユーリでなかなかに熱いところがあんのな。新発見だわ。




