第51話 頭を下げるな、手を振ってくれ
【リツ視点】
入学して205日目。平日の朝なのに、僕は学園の外にいた。
上着のポケットには学園長の外出許可証が入っている。
『殿方の友の門出につき、本日の欠席を認めます。顧問の判断です』
顧問の判断は、だいたい何でも通る。
殿方館の3つの門は朝から全部開いていた。白い壁の内側では、この国の男の人が40人暮らしている。この国では男の人を「殿方」と呼ぶ。男の子が生まれるのは100人に1人くらいで、殿方はほとんどこの館から出ない。
前世の病室で18年を終えた僕は、気がついたらこの国の草原にいた。体は15歳に戻っていた。友達帳には今、157人の名前が並んでいる。
今日はそのうちの1人が、この館を出ていく日だ。
最後の門の前に、赤い馬車が止まっていた。
「赤いんだから、3倍で行くよ!」
御者台のマルタさんが手綱を握ったまま叫んだ。まだ1歩も動いていない。
「マルタさん!」
名前を呼ぶと、マルタさんは手綱を握ったまま3回うなずいた。今日はひと回りしないらしい。
門の内側では侍女長のテクラさんがお盆を持って立っていた。
「おはようございます、リツ様。……縁組みの朝に赤い馬車が門に着くのは、30年で初めてでございます。アルフォンス様のご希望で、『3倍で行く』と」
*
庭にはもうみんなそろっていた。
20人の淑女。今日からアルフォンスさんの奥さんになる人たちだ。噴水のまわりになんとなく集まっている。先頭のカロリーネさんは、10日前の鬼ごっこで最初に捕まった人だ。
館長さんは玄関の前に立っていた。白い手袋をしている。35年、この館の殿方を見送ってきた人だ。
その横にエミールくんとノルベルトくん。エミールくんは14歳で、館でいちばん走るのが遅い。ノルベルトくんは16歳で、館でいちばん箱が似合う。今日も木箱を小脇に抱えていた。
2歩後ろにはイルゼさんがいる。
僕の専属護衛官で、この国に来た日に草原で僕を拾ってくれた人だ。3日前、僕の最初の友達だったことが女王様の決裁で決まった。
振り返ると、ちゃんといた。
「何か」
「何でもないです」
今朝はもう3回目だ。
*
玄関の扉が開いて、アルフォンスさんが出てきた。
白い上着に白い手袋。殿方館の筆頭だ。最初に会った日、僕は品位について1時間叱られた。次の週には2人でこの庭を走った。その夜から毎日、僕はこの人に手紙を書いている。
「来たか、リツ殿」
「はい。お誕生日、おめでとうございます」
「……18になった」
アルフォンスさんはそれだけ言って、口の端を少しだけ上げた。
ロジーナさんが大きな額を抱えて、そろそろと歩いてきた。
「が、額に、入りました」
10日前に噴水の前で描いた縁組みの肖像だ。廊下の壁にはこれまでの87枚が並んでいる。全部、正面を向いて笑っていない殿方の絵だ。
88枚目のアルフォンスさんは、前髪を額に貼りつけたまま笑っている。
87枚目の隣に掛け終わった瞬間、ロジーナさんの手の中で鉛筆が1本折れた。
*
出発は9時の鐘。その前に、婚姻院の院長さんが縁組みの書状を持ってくる。
「何か、遊びませんか」
僕が言うと、エミールくんが首をかしげた。
「門の前で、ですか」
「道具がいらない遊びがあるんです。じゃんけんっていうんですけど」
この国にはじゃんけんがない。
グーは石。チョキは鋏。パーは紙。石は鋏に勝って、鋏は紙を切って、紙は石を包む。
説明が終わる前にエミールくんが手を挙げた。
「紙で石を包むのは、ずるくないですか」
「ずるい、ですか」
「石のほうが硬いです」
言われてみると、たしかにずるい。
「じゃんけん、ぽん」
アルフォンスさんはグーを出した。
2回目もグー。3回目もグー。
「アルフォンスさん、毎回グーですね」
「品位である」
握った拳が品位らしい。
エミールくんは毎回パーだった。
「包むほうが、やさしいので」
アルフォンスさんはエミールくんに1回も勝てない。
ノルベルトくんは両手の指で四角を作った。
「ノルベルトくん、それは」
「箱だよ。石も鋏も紙も、しまえる」
最強の手が出てしまった。
テクラさんがお盆を持ったまま、まっすぐ前を見て言った。
「殿方が門の前で手の形を競われるのは、30年で初めてでございます」
*
「じゃあ次は、あっち向いてホイです」
じゃんけんで勝った人が「あっち向いて、ホイ」で上下左右のどれかを指す。負けた人は同時に顔を動かす。指されたほうを向いてしまったら負けだ。
アルフォンスさんとやってみる。
「あっち向いて——ホイ」
右を指すと、アルフォンスさんは右を向いた。
左を指せば左。上を指せば空。
5回やって、5回とも指したほうを見ている。
アルフォンスさんは自分の手袋の指を見下ろした。
「品位の指導では、指されたほうを見よと教わる。物心ついてから、ずっとだ。体が先に向く」
品位の指導、強すぎる。
困っていたのは、アルフォンスさんだけではなかった。
僕が右を指すと、庭じゅうの淑女がざっと右を向いた。20人の奥さんも侍女さんたちも全員だ。左を指せば全員が左。上を指すと全員が空を見上げた。
みんな、一緒に遊んでくれているのだと思う。この国の人は本当に優しい。
それから、うっかりテクラさんのほうを指してしまった。
全員の目がテクラさんに集まった。テクラさんはまっすぐ前を向いたまま、お盆の上の茶碗を3つそろって鳴らした。
イルゼさんだけは、指の先ではなく僕の指そのものを見ている。護衛なので、だそうだ。
最後に、僕は門のほうを指した。
ちょうどそのとき、門をくぐってきた人がいた。
婚姻院の院長さんだった。
30人ぶんの目が、院長さん1人に突き刺さる。院長さんは書状を抱えたまま、門の内側で止まった。
「……何か、ございましたか」
「ございません! すみません!」
テクラさんが小さく言った。
「院長様がお困りになるのを拝見するのは、30年で初めてでございます」
*
縁組みの書状は短かった。
院長さんが読み上げて、アルフォンスさんと20人の名前を1人ずつ呼ぶ。それで終わりだそうだ。
「この縁組みに、申し立てのある者は」
院長さんが言った。
前世のテレビで見たことがある。結婚式でこう聞かれると、花嫁さんを好きな男の人が扉を開けて走りこんでくる。そして「ちょっと待った」と叫んで、花嫁さんの手を引いて連れていくのだ。
「その縁組み、ちょっと待っ……」
口が勝手に動いて、自分で止めた。
もう遅かった。
20人の奥さんが、いっせいにこっちを向いた。カロリーネさんは両手で口を押さえている。ほかの人たちも息を止めたまま、まばたきもしない。いちばん後ろの人は、噴水のふちにすとんと座りこんだ。
背中で、イルゼさんの手袋の革がぎゅっと鳴った。
「……言ってみたかっただけです。前世のテレビで、結婚式に誰かが走りこんでくる場面があって」
20人が、そろって長い息を吐いた。
結婚式の前は、みんな緊張するものだと思う。
「申し立ては、婚姻院の窓口にて受けつけます」
院長さんは静かに答えた。
「クラリッサが」
クラリッサさんが聞いたら、たぶん眼鏡がずれる。
院長さんは書状を巻いてアルフォンスさんに渡すと、そのまま黙ってしまった。
アルフォンスさんが少し待ってから聞いた。
「院長。成ったのか」
「……成りました。言い忘れました」
20人がそろって静かに倒れて、テクラさんが1人ずつ起こしていった。
*
鐘が鳴る前に、僕は封筒を出した。
「アルフォンスさん。これ、今日の分です」
便箋の1行目にはいつもの字がある。『ログイン183日目』。押し花は白い花にした。白は特別な日だけと決めている。
「明日からは東の館に届きます。住所は院長さんに聞いてあります」
アルフォンスさんは封筒を受け取って眺めた。
「郵便を通らぬ手紙は、手紙なのか」
「ログインです」
「……そうか」
封筒は胸のポケットにしまわれた。僕がいつも手袋を入れている場所だ。
「1つ、言っておくことがある」
「はい」
「殿方の心得、第53条。見送りの作法には、後半がある」
アルフォンスさんは前を見たまま言った。
「『門を出る殿方は、振り返らぬものとする』」
「……え」
10日前の春の庭で、アルフォンスさんは館長さんに「頭を下げるな。手を振ってくれ」と頼んだ。館長さんは、今日手を振るつもりでいる。
でも、出ていく人は振り返らない。
「それ、館長さんが手を振っても、アルフォンスさんには見えないじゃないですか」
「そうだ」
アルフォンスさんはうなずいた。
「頼んでから、気づいた」
気づくのが遅い。
「館の筆頭が、最後の日に心得を破って出ていくわけにはいかぬ」
ゴーン、と9時の鐘が鳴った。
*
アルフォンスさんが門に向かって歩き出す。
背中がまっすぐだ。1度も振り返らない。
前世のテレビの卒業式なら、ここで答辞が始まるところだ。殿方館の見送りには答辞も歌もない。
門の内側には館長さんが立っている。両手は体の前で重ねたままだ。
アルフォンスさんが門の敷居をまたいだ。
館長さんの頭が、少しだけ下がりかけた。
87回の見送りで、ずっと頭を下げてきた人だ。体が先に覚えている。
僕は息を吸った。
「アルフォンスさん!」
背中は止まらない。
「あっち向いて——」
僕は館を指さした。
「ホイ!」
アルフォンスさんが振り返った。
物心ついてからずっと、指されたほうを向くように育った体だ。考えるより先に、顔がこっちを向いていた。
門の内側で、館長さんが右手を挙げていた。
手を振っていた。
肩より少し高いところで、白い手袋が小さく左右に動く。ぎこちない。練習したみたいな振り方だった。
アルフォンスさんはしばらく止まっていた。
それから右手を挙げて、振り返した。
前に、2階の窓から一歩下がった人だ。走る僕に手を振られて、振り返せなかった人だ。
今日は振り返した。
「……リツ殿」
前に向き直ってから、アルフォンスさんが言った。
「今のは、指されたから向いた。心得より古い癖だ」
「はい。僕のせいです」
「そなたのせいだ」
アルフォンスさんの耳が、少し赤い。
*
アルフォンスさんが馬車に乗りこむ。マルタさんが手綱を構えた。
「館長さん。走っても、いいですか」
僕は振り返って聞いた。
ここは門の外だ。殿方の心得第88条で、館の外では走ってはいけない。僕の館は学園なので、ここは外になる。
館長さんは右手を下ろして、まっすぐ前を見た。
「門から通りの角までの石畳は、当館の地所です。400年前の図面で確かめました」
館の中なら、走っていい。
馬車が動き出した。ゆっくりだ。
「マルタさん、3倍は」
「3倍は、角を曲がってから!」
僕は走った。馬車の横を、白い壁に沿って。2歩後ろをイルゼさんが走る。エミールくんも走った。遅い。ノルベルトくんは箱をかぶって走った。前は見えていないはずなのに、まっすぐだ。
後ろからは、裾をつまんだ20人が追いかけてきた。10日前の鬼ごっこで、殿方を追う走り方を覚えた人たちだ。
馬車の窓からアルフォンスさんが顔を出した。
「リツ殿。速いな」
「アルフォンスさんも、乗ってなかったら速いです」
角が近づいてくる。
頭の中に、前世のゲームの文字が流れた。『アルフォンスがパーティを離れました』。
……いえ。
フレンドのままです。
通りの角で僕は止まった。ここから先は地所の外だ。
赤い馬車が角を曲がる。曲がった瞬間、本当に速くなった。たぶん3倍ではない。
見えなくなるまで、手を振った。
振り返ると、2歩後ろでイルゼさんも手を挙げていた。挙げてから自分の手に気づいたみたいに、ゆっくり下ろした。
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【テクラ視点】
殿方館、侍女長。テクラ。勤続30年。
本日、私は門で手を振った。
侍女の作法の教本に、その項はない。
*
館長様が縁組みの殿方を見送られるのは、88回目である。
館長様は1度も手を上げなかった。殿方が門を出ると深く頭を下げ、馬車が角に消えるまで上げない。心得第53条のとおりである。私はその後ろで、館長様より指1本ぶん深く頭を下げる。侍女の作法である。
*
今朝、館長室へ茶を運んだ。
扉を叩く前に、隙間から見えてしまった。
館長様は窓の前に立っておられた。右の手袋の指を開いて、閉じる。もう1度開いて、閉じる。3度目も同じ。
何の練習なのか分かったとき、盆の上で茶碗がかちりと鳴った。
落ち着きなさい、テクラ。館長様が手袋の指を開いて閉じておられるだけである。……手を振る練習を。58歳の館長様が。窓に向かって。
落ち着く理由が見つからないまま、私は扉を叩いた。
館長様は振り向くと、何も持っていない右手を口元へ運びかけて、やめた。茶を飲むおつもりだったのだと思う。茶はまだ私の盆の上にあった。
「テクラ。本日の見送りは、例年どおりです」
「かしこまりました」
例年どおりでないことを、私は知っている。館長様も、私が知っていることを知っている。30年勤めた侍女長は、理由を聞かない。
*
門の前で、リツ様が「あっちむいてほい」という遊びを教えておられた。指をさされたほうを向かぬよう、顔をそむける遊びだそうだ。
難しい遊びである。殿方に指をさされて、そちらを向かぬ淑女はいない。アルフォンス様も5度とも向かれた。指されたほうを見よ、という項は品位の教本の初めのほうにある。私も5度つられて首を回した。
6度目に、リツ様の指がまっすぐ私を指した。
殿方に指をさされた。
落ち着きなさい、テクラ。指されたのは方角である。私はたまたまその方角に立っていただけである。……30年殿方の後ろに控えてきた侍女が、殿方の指の先に立っている。庭じゅうの淑女の目が私の顔に集まっている。
盆の上で、茶碗が3つそろって鳴った。止めようとしたら、4つ目も鳴った。
*
リツ様が「ちょっと待っ……」と言いかけたときは、庭の空気が凍った。
縁組みに殿方が待ったをかけるなど前例がない。だが奥方たちは意味をすぐに悟った。殿方が縁組みを止める。それは誰かをご自分のほうへ連れていかれるということである。
20人の顔が、いっせいに白くなった。
カロリーネ様は口を押さえたまま、目だけでほかの19人を数えておられた。誰が選ばれるのか。私か。隣か。いちばん後ろの方は噴水のふちに座りこんだ。
リツ様が「言ってみたかっただけです」とおっしゃると、20人がそろって息を吐いた。少しだけ残念そうな息だったのは、私の気のせいである。たぶん。
あの方は、言葉ひとつで庭じゅうの淑女の息を止める。ご本人だけが、それをご存じない。
*
9時の鐘が鳴った。
アルフォンス様が門へ向かわれる。私は侍女の列の端、館長様のすぐ後ろに立った。
頭を下げる支度をする。
アルフォンス様の靴が敷居をまたぐ。
館長様の頭が、少しだけ前へ傾いた。
ああ、と思った。35年の首である。87回の首である。朝に指を3度開いて閉じても、首のほうが先に覚えている。
そのとき、リツ様の声がした。
「あっち向いて——ホイ!」
リツ様の指は館を、つまり私どもを指していた。
アルフォンス様が振り返られた。
振り返らぬと心得に書いてある殿方が、指されたほうをまっすぐ見ておられる。教本の初めのほうの1項が、心得の第53条より先に体を動かしたのである。
館長様の頭が止まった。
それから、上がった。
右手が上がる。白い手袋の指が開く。今朝、窓の前で3度練習した指である。左右に小さく動いている。
88回目にして、館長様は手を振っておられた。
アルフォンス様が手を振り返された。
私はどうすればよいのか分からなかった。
侍女の作法は、館長様より指1本ぶん深く頭を下げることである。その館長様が頭を下げておられない。手を振っておられる。前例がない。教本にもない。
落ち着きなさい、テクラ。30年である。殿方の茶を1滴もこぼさずに運んできた手である。
その手が、いつの間にか盆を左手に持ち替えていた。
右手は盆の高さまで上がっている。上げたつもりはない。上がっていた。
振った。
盆の茶は、少しこぼれた。
アルフォンス様の目が、館長様から私に移る。
「館長。テクラ」
あの方は、そう言われた。
「行ってくる」
館の殿方に名を呼ばれたのは、30年で初めてである。
リツ様、ありがとうございます。侍女は殿方に礼を申し上げる立場にない。だから心の中で3度申し上げた。
*
馬車が見えなくなってから、館長様は右手を下ろされた。
私は申し上げた。
「門で館長様が手を振られるのは、30年で初めてでございます」
「本日は、4回目です」
館長様はまっすぐ前を見たまま言われた。
「赤い馬車。手の形。院長。そして、今のです」
数えておられた。
「……5回目が、ございます」
「何です」
「侍女長が手を振るのも、初めてでございます」
館長様は少しだけ黙られた。
「それは、私も初めて見ました」
通りの角の手前では、リツ様がまだ手を振っておられる。昨夜、館長様が書庫から400年前の図面を出しておられた理由も、私は聞いていない。
*
夜。
食堂に茶碗を並べたら、40客になっていた。
30年並べてきた手が、勝手に数えたのである。1客を棚に戻して、39客。
空いた椅子に、エミール様が座ろうとしてやめた。ノルベルト様は箱を置こうとしてやめた。お2人とも、何も置かないことにしたらしい。
アルフォンス様のお部屋の花瓶には、押し花が1枚も残っていなかった。全部お持ちになったのだと思う。
*
館長室へ茶を運ぶ。
館長様は机に向かっておられた。机の上には紙が2枚ある。
1枚目はセレスタ学園の入学願書だった。名の欄に、館長様の字で『ノルベルト』。
2枚目は男性保護局長あての上申書である。侍女は館長様の書類を読まない。宛名は、目に入っただけである。
私は茶碗を机の端に置いた。
館長様の右手が、いつものように口元へ動く。何も持たない手を運びかけて、やめる。35年の癖である。
今夜は、その手の先に茶碗があった。
館長様は茶碗を持ち上げて、飲まれた。
「……温かいですね」
「淹れたてでございます」
「テクラ。館の殿方が、館の外の学び舎へ通うのは」
「400年で初めて、でございますか」
「前例は、作るものだそうです」
私は盆を下げて、扉の前で一礼した。いつもより指1本ぶん浅かった。直さなかった。
廊下の壁には88枚の肖像が並んでいる。
87枚は笑っていない。
いちばん端の1枚だけが、前髪を額に貼りつけて笑っている。
明日の朝から、この絵の前を通るたびに、私はたぶん少しだけ遅れる。侍女が勤務中に絵の前で足を止めるのは、30年で初めてになる。
数えるのは、館長様にお任せすることにする。
【あとがき】
この第51話から第二部80話(~第130話)となります。
第一部と同じく、当面は毎日2話公開で進めていくつもりです。
引き続きよろしくお願い致します。




