第15話 遊戯部、はじめました
【リツ視点】
殿方館の庭に鍵がかかってから、僕は少しだけ元気がなかった。
アルフォンスさんたちはまた走れなくなった。僕にできるのは毎日手紙を書くことくらいしかない。
入学して42日目の夜。ログイン21日目の手紙を書きながら、僕は考えていた。
殿方館の外に、殿方が堂々と集まれる場所があればいいのに。
たとえば、部活みたいな。
*
部活。
青春小説で何百回も読んだ言葉だ。
放課後に同じ部屋に同じ仲間が集まって、同じことに打ちこむ。廃部の危機を乗り越えたり、合宿に行ったり、大会で負けて泣いたりする。
前世の僕はどこの部にも入れなかった。高校に籍はあったけれど、通えなかったから。
次の日は休日だった。
僕は朝から晩まで、部屋で紙に向かっていた。部活を作るなら、何をする部にするか。
最初に「麻雀」と書いた。
そこから手が止まらなくなる。
病室で本を読みながらやってみたかった遊びがたくさんある。どれも1人ではできない遊びだ。相手がいないと始まらないので全部読んだだけで終わっていた。
夕方には紙が3枚になっていた。
イルゼさんが夕食を知らせに来て、机の上の紙をちらりと見た。
「……それは、何の名簿でございますか」
「やりたい遊びリストです」
「遊びの、名簿?」
「はい。全部やるんです」
イルゼさんは3枚目の最後の行まで目で追ってから静かに扉を閉めた。少しして中庭から素振りの音が聞こえてくる。いつもより回数が多い。
*
休み明けの朝。入学して44日目。
ホームルームの終わりに、僕は手を挙げた。
「先生。この学園で、部活って作れますか」
ハイデマリー先生は出席簿を持ったまま固まった。
「……ぶかつ?」
「放課後に集まって活動する会、みたいなものです」
「同好の会でしたら、学則に定めがございます。部員4名以上、顧問の教師1名、活動の場所、それから生徒会長の承認です」
4人。顧問。部屋。承認。
ゲームで言えば、クエストの達成条件だ。
「それと、会の名を届けていただく決まりです。リツ殿、何の会になさいますか」
「麻雀部……じゃなくて」
僕は言い直した。
「麻雀だけじゃなくて、故郷のゲームを全部やりたいんです」
「げーむ、とは」
先生が首をかしげた。
説明しようとして、言葉が出てこない。遊び。勝負。みんなでやる楽しいこと。どれも少しずつ違う。
そのとき、隣の席から小さな声がした。
「……遊戯、部」
ロジーナさんだった。
言ったあとで本人がいちばん驚いた顔をして、下を向いている。
「それです!」
僕は思わず大きな声を出した。
「遊戯部。いいですね。なんか闇のゲームが始まりそうで、かっこいいです」
「……やみの?」
ハイデマリー先生の手から出席簿が落ちた。
「あ、闇っていうのは故郷の漫画の話で。罰ゲームとかは、ないです。たぶん」
先生は出席簿を拾わずに、黒板に「遊戯部」と書いた。字が少し震えていた。
*
部員は1時間目が始まる前に集まった。
僕は教室を見回して、麻雀を一緒にした3人の名前を呼んだ。
「コルネリアさん、リゼットさん、ロジーナさん。遊戯部に、入ってくれませんか」
「はい」
「はい」
「……はい」
3人とも1秒もかからずに答えてくれた。
そのとき、教室のあちこちで手が少しだけ上がりかけた。
「みんな、伸びですか?」
聞いてみると、上がりかけた手がそのまま上まで伸びて、27人がそろって伸びをした。朝は体がこるのだと思う。
僕は先生にもらった届けの紙に4人の名前を書いた。
1つ目の条件、達成。
問題は顧問だった。
*
休み時間ごとに、先生たちに順番に頼んで回った。
「先生。僕と契約して、顧問になってください」
故郷のアニメの台詞を借りたのがよくなかったのか、どの先生も最初のひと言で固まってしまう。
ハイデマリー先生は「担任の職務がございますので」。
グンヒルト教官は「実技の準備がございますので」と、いつもより小さな声。
ベアトリクス先生は「展覧会の準備が」と言いながら、なぜか目をそらしていた。
ほかの先生にも頼んだ。全部で9人。全員に断られた。
昼休みの終わり、僕は廊下の窓から校庭を見ていた。
「イルゼさん。顧問って、見つからないものなんですね」
「……殿方の会の顧問となれば、責任が重うございますので」
責任。
確かにそうかもしれない。僕は野外実習で前に出て、みんなに心配をかけたことがある。そんな殿方の部活の顧問なんて、誰だって引き受けたくない。
でも、ここでやめたくなかった。
前世で読んだバスケットボールの漫画に、白髪の監督が出てくる。どんなに負けていても穏やかに言うのだ。
「あきらめたら、そこで試合終了ですよ」
声に出して言ってみた。
自分で自分に言うのは少し恥ずかしい。でも少し元気が出る。
「……そのお言葉、もう一度よろしいですか」
後ろから声がした。
振り返ると、学園長のオティーリエ先生が立っていた。
「あ、えっと。あきらめたら、そこで試合終了ですよ、って」
学園長はしばらく黙っていた。
「顧問は、私が務めましょう」
僕はその場で飛び上がった。
「ありがとうございます! あの、部室なんですけど、寮の物置を使わせてもらえませんか。書見台の板をもらった、あの物置です」
学園長はまた黙った。
さっきより少しだけ長かった気がする。
「……よろしいでしょう」
*
放課後、4人で物置の掃除をした。
扉を開けると埃が舞った。古い椅子と古い棚と、古い何か。窓は1つだけで開けるのに3人がかりだった。
掃除の前に、僕はリストを出した。
「これを、壁に貼らせてください」
大きな紙をイルゼさんに押さえてもらって、ロジーナさんに書いてもらうことにした。僕の字よりずっときれいだからだ。
僕が読み上げて、ロジーナさんが書いていく。名前だけ。ルールはやるときに説明すればいい。
麻雀。大富豪。しりとり。すごろく。リバーシ。かくれんぼ。鬼ごっこ。だるまさんがころんだ。人狼。紙飛行機。羽根つき。雪合戦。百物語。
「全部、病室でやってみたかった遊びなんです。病室だと相手がいなくて、本で読むだけだったので」
ロジーナさんの筆が一瞬止まって、また動き出した。
最後の行は、昨日の夜に足したものだ。
「放課後、みんなでしゃべる」
ロジーナさんはそれも同じ大きさの字で書いてくれた。
壁の紙を見上げると、思っていたよりずっと長い。
ちょっと多すぎたかもしれない。みんな黙ったまま紙を見ている。
「あ、あと1つ。今、思いつきました」
僕は雑巾を持ち上げた。
「雑巾がけ競争。病室では看護師さんが床を拭いてくれていたので、一度やってみたかったんです」
ロジーナさんが、「放課後、みんなでしゃべる」のひとつ上に「雑巾がけ競争」と書き足した。
4人で床に並ぶ。
「よーい、どん!」
コルネリアさんが本気を出した。速い。商人の娘は、勝負となると手を抜かないらしい。ロジーナさんは途中で転んだ。リゼットさんは帳面を口にくわえたまま走っている。僕は2位。
床に座りこんで笑っていると、リゼットさんも少しだけ笑った気がした。
でも、もう一度見たらいつもの顔だった。
ロジーナさんが壁のリストの「雑巾がけ競争」に丸をつける。
最初の丸だ。
*
床を拭いていくと、奥の棚の後ろに何か大きなものが見えた。
「イルゼさん、あれ、何でしょう」
イルゼさんは黙って棚に手をかけた。大人2人でも動かせそうにない棚を、1人で持ち上げて横にずらしてしまう。
出てきたのは大きな四角い机だった。脚が太くて、天板がちょうど4人で囲める大きさだ。
「麻雀卓みたいだ」
「お出しいたします」
イルゼさんは机まで1人で運び出してくれた。護衛官は、何でもできる。
拭いてみると、天板には古い傷がたくさんあった。細い線が何本も並んでいる。誰かが昔ここで何かをしていたのかもしれない。
最後に、ロジーナさんが入り口の札を書いてくれた。
『遊戯部』
きれいな字だった。少しだけ、楽しそうな字に見えた。
*
夕方、エレオノーラ先輩が部室の入り口に来た。
「……承認、いたします」
先輩はコルネリアさんが用意してくれた部のペンで署名した。それから、もう1枚の紙を出した。
「遊戯部の活動中に限り、部室内での学園長通達第1項の適用を免除する。生徒会長の常設許可証です」
「ありがとうございます、先輩!」
「なお、生徒会として、月に1度、活動の監査に入ります」
「はい! いつでも来てください!」
先輩はなぜか小さくうなずいた。2回うなずいた。
それから、ペンを握ったまま帰っていった。
部のペンは、その1本しかない。
生徒会は、備品が足りていないのかもしれない。
*
次の日の放課後。最初の活動の日に、学園長が部室に来た。
「顧問として、一度お相手いたしましょう」
「どれにしますか、学園長」
僕は壁のリストを指さした。
学園長は上から下までゆっくり目を通していく。いちばん下の「放課後、みんなでしゃべる」で、少しだけ目が止まった気がした。
それから、いちばん上を指した。
「では、これを」
麻雀だった。
学園長は机の前に立つと、座る前に天板の角へそっと手のひらを置いた。
ほんの少しの間だけ。それから椅子を引いて座った。
僕と学園長と、コルネリアさんとリゼットさん。ロジーナさんは隣で見学だ。
学園長は強かった。
まったく表情が動かない。良い牌を引いても悪い牌を引いても同じ顔をしている。何を待っているのかまったく読めない。
ポーカーフェイスどころじゃない。彫刻だ。
その局の終わり近く、僕が切った牌を見て学園長が静かに手牌を倒した。
全部、萬子。
清一色。
「ロン」
学園長は僕の捨てた牌を指で軽く叩いた。
「……御無礼」
僕は牌を持ったまま固まった。
学園長が、御無礼と言った。
僕に向かって御無礼と言ってくれたのは、アルフォンスさんに続いて2人目だ。
「学園長、強すぎます……」
「年の功です」
学園長はそれだけ言って、牌を崩した。
ロジーナさんが立ち上がって、壁のリストの「麻雀」に丸をつけてくれた。2つ目の丸だ。
僕はうれしくなって立ち上がった。
「みんな、目指すは全国です!」
部室が静かになった。
「……全国、とは」
コルネリアさんが聞いた。
「えっと、国じゅうの強い人が集まる大会のことです。部活といえば全国大会なので」
「どの遊戯で、でございますか」
「えっ」
僕は壁のリストを見た。雑巾がけ競争を入れて、遊びは14個ある。
「……全部、ですかね」
コルネリアさんは黙って帳面を開いた。
それから、ものすごい速さで何かを書き始めた。
「練習の計画ですか?」
「……ある意味では、ですわ」
コルネリアさんは顔を上げずに答えた。14個ぶんの計画ならすごい量になる。商人の娘は計画を立てるのも本気らしい。
いつかこの部室に、アルフォンスさんたちを呼べたらいい。
鍵のかかった庭の代わりに、ここでみんなで遊べたらいい。
壁のリストの丸は、まだ2つだけだ。
でも、それでいいと思った。全部に丸がつくころには、きっと友達が増えている。
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【リゼット視点】
学園新聞部、部長。部員1名。
このたび、遊戯部、部員。
兼部である。
*
ホームルームの終わりに、殿方は「遊戯部に、入ってくれませんか」とおっしゃった。
わたしは1秒もかけずに「はい」と答えた。
記者として、取材のためである。
ということにしておく。
問題はそのあとだ。
殿方は先生にもらった届けの紙に、部員の名前を書かれた。ご自分の名前。コルネリア。ロジーナ。
それから、リゼット。
落ち着け、わたし。
記者は記事を書く側だ。部員名簿に名前を書かれる側ではない。
……書かれた。殿方の字で。
帳面に「本日、殿方の字にて名を書かれる」と書こうとした。字がどんどん大きくなって最後の「る」が帳面からはみ出していく。
頭の中で見出しが勝手に立つ。『記者、殿方の名簿に載る』。駄目だ。それは記事ではない。わたしの日記である。
ちなみに、ほかの27人も手を挙げかけていた。殿方が「みんな、伸びですか?」とおっしゃったので、27人はそのまま伸びをした。今日1日、27人は本当に伸びをしていた人として過ごすことになる。
*
会の名を決めたのはロジーナだった。
「……遊戯、部」
殿方の隣の席から、聞こえるか聞こえないかの声で。
あのロジーナが、殿方の会に名前をつけたのである。授業で当てられても声が出ない子が。
殿方が「それです!」とおっしゃると、ロジーナは下を向いた。耳まで赤い。
遊戯。
王都の茶店の看板にも、その2文字が書いてある。「殿方考案の遊戯 まーじゃん」。コルネリアの家の看板だ。
殿方の会の名と王都の看板の言葉が、今日そろった。殿方ご本人だけがそのことをご存じない。
そのあとの「闇のゲーム」は、わたしにも分からなかった。
ハイデマリー先生は出席簿を落とした。わたしの頭の中には『殿方、闇を宣言』という見出しが立つ。
急いで消した。殿方は「罰ゲームとかは、ないです。たぶん」とおっしゃった。帳面の中で、「たぶん」の3文字だけが妙に大きい。
*
顧問探しは半日かかった。
わたしは全部、後ろから見ていた。9人の先生が9通りの言い訳で断る。
本当の理由は言い訳とは違う。わたしは知っている。
殿方の部の顧問になれば毎日放課後に殿方と同じ部屋にいることになる。殿方の前で淑女の平静を毎日数時間保つ。そんなことができる淑女は、この学園に何人もいない。
グンヒルト教官は廊下の角で壁に手をついていた。ベアトリクス先生は目をそらしたまま3歩下がって、扉にぶつかった。
そして昼休みの終わり、殿方が窓辺でつぶやかれた。
「あきらめたら、そこで試合終了ですよ」
あきらめたら終わる。だから、あきらめない。
当たり前のことを言っているだけなのに、殿方の口から出ると剣の誓いのように聞こえる。
学園長がそれを聞いておられて、顧問を引き受けられた。
学園長オティーリエ。この学園で40年、表情を一度も変えたことがないと言われる方である。淑女の平静の、生きた手本。殿方の顧問が務まる淑女がいるとしたらこの方しかいない。
ただ、1つだけ気になったことがある。
殿方が「寮の物置を」と言われたとき、学園長が返事をするまでに3秒かかった。
顧問を引き受けるのにかかった時間より、長い。
帳面には書いた。意味は分からない。
*
部室の掃除は楽しかった。
掃除の前に殿方は壁に大きな紙を貼らせた。殿方が読み上げて、ロジーナが筆で書いていく。
遊戯の名前がずらりと並んだ。半分以上、聞いたこともない名前だ。
殿方は「全部、病室でやってみたかった遊びなんです」とおっしゃった。「病室だと相手がいなくて、本で読むだけだったので」と。
病室。
殿方はときどきその言葉を使われる。何のことなのか、まだ誰も聞けていない。
でも「相手がいなくて」のところは分かった。
分かったので、帳面には書かなかった。
リストの最後の行は『放課後、みんなでしゃべる』だった。
遊戯ではない。たぶん、遊戯ではない。
ロジーナはその行をほかと同じ大きさの字で書いた。筆を持つ手が少し震えていたのを、わたしは見なかったことにする。
それから殿方が、その場で1つ足された。
「雑巾がけ競争」
コルネリアが本気を出した。殿方は2位。ロジーナは途中で転んだ。わたしは帳面を口にくわえて走った。記者は、両手がふさがっていても記録を止めない。
ゴールのあと、殿方が雑巾を持ったまま床に座って笑っておられた。
わたしも、笑った。
しまった、と思う。でも殿方が振り向かれたときには、もう元の顔である。
間に合った。
たぶん、間に合った。
*
夕方、生徒会長様が承認に来られた。
署名して常設許可証を出して、「月に1度、監査に入る」とおっしゃる。殿方が「いつでも来てください」と答えると、生徒会長様は2回うなずかれた。
月に1度では済まないと思う。
それから生徒会長様は、部のペンを握ったまま帰っていかれた。
わたしは見ていた。廊下の角を曲がるところで、生徒会長様は左手で右手の指を1本ずつはがそうとしておられる。はがれない。そのまま、角の向こうへ。
遊戯部の備品は、創部の日に1つ減った。
*
次の日。最初の活動に、学園長がお見えになる。
学園長は壁のリストを上から下まで読まれた。
いちばん下の『放課後、みんなでしゃべる』のところで、目が止まる。わたしは記者なので、止まった時間を数えていた。2秒。
それから学園長はいちばん上の『麻雀』を指して「では、これを」とおっしゃった。
卓に着く前に、学園長は机の角に手のひらを置かれた。
撫でたのではない。置いただけだ。古い傷の上に、そっと。
わたしは帳面に書いた。『学園長、着席の前に、机の角に手を置かれる』。
なぜかは分からない。分からないことも書いておくのが、記者の仕事である。
対局のあいだ、わたしは学園長の顔をずっと観察していた。
1mmも動かない。殿方が笑っても牌を落としても、ロジーナが見学席で鉛筆を握りしめても何も変わらない。
その局の終わり、学園長は清一色で上がられた。
「……御無礼」
そのときだけ、学園長の口の端が1mmだけ上がった。
わたしは見た。記者の目に間違いはない。
殿方は「強すぎます」と言って、うれしそうに笑っておられる。それから立ち上がっておっしゃった。
「みんな、目指すは全国です!」
全国。国じゅうの強い者が集まる大会。
コルネリアが「どの遊戯で」と聞くと、殿方は壁を見て「……全部、ですかね」。
その瞬間、コルネリアが帳面を開いた。
商人の目である。
わたしは横から帳面をのぞいた。
遊戯部の遊戯(14種)
うち、既に売れている品:まーじゃんのみ(累計1200組を超える)
ほか13種:未発売
→全国は、まーじゃんにて
『第1回 王国まーじゃん大会(仮) 主催:ヴァーレン商会 会場:王都中央広場 参加者:見込み1000名以上』
コルネリアはもう、全国を作り始めていた。
殿方は「練習の計画ですか?」とうれしそうに聞かれ、コルネリアは「ある意味では」と答えた。
ある意味では、確かにそうだ。そのうち全国の淑女が練習を始めることになるのだから。
*
その夜、わたしは号外を書いた。
セレスタ学園新聞 号外 第6号
見出し:殿方、部活を創設 その名も「遊戯部」
殿方リツ殿が、学園初の殿方による同好の会「遊戯部」を創設された。
部員は4名。顧問は学園長オティーリエ殿。部室は寮の旧物置。
殿方は創設にあたり「あきらめたら、そこで試合終了」と述べられた。
部の目標:故郷の遊びを全部、ならびに全国。
なお、会の名を「闇の」と評されたことについては、本紙では論評を控える。
また、初めての活動において、学園長が「御無礼」と発せられた際、口の端が1mm上がったことを、本紙は確認している。
*
号外を書き終えて、わたしは新聞部の部室を見回した。
小さな部屋だ。机が1つと椅子が1つ。印刷機と、紙の束。
入学してから、わたしはずっとここで1人だった。
部員1名。部長1名。それで困ったことはない。記者は1人でも書ける。
でも昨日、遊戯部の部室で4人で床を拭いた。
殿方が雑巾がけで競争しようと言って、コルネリアが本気を出して、ロジーナが転んで、わたしが笑った。
笑ったのは、記者としてではなかった。
壁のリストの丸は、まだ2つしかない。残りは12と、最後の1行。
全部に丸がつくまで、何か月かかるのだろう。
わたしは号外の最後に1行だけ書き足そうとして、やめた。
部員は、わたしを入れて4人になった。
それは、記事にしなくてもいいことだと思った。




