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『緋色の傭兵団の物語』「西方動乱編」  作者: 嵗(sai)
ゲルマニアからブリタニア

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第0話:これまでの物語

緋色の傭兵団の物語 ―――これまでの物語―――


【前史:黒鉄期1731年 - 1733年】合理の怪物の宣告と「捨て石」の覚悟

物語は、西方地域の中心に位置する大国フランク王国の腐敗と、南東部オルレアン伯爵領における戦火から始まる。


1731年 - 1733年:東ロマヌス帝国との激戦

フランク王国が内側から腐り落ち、地方領主たちが私利私欲のために戦を繰り返す中、南方の宿敵・東ロマヌス帝国が「失われた領土」の奪還を掲げて侵攻を開始した。この際、フランク王国軍の事実上の統帥権を掌握していたオルレアン伯爵アルマンは、正規軍を無傷で温存するため、各地の傭兵団を「防波堤」として最前線に投入する戦略を弾き出した。彼にとって傭兵とは人間ではなく、損害率と勝利への期待値を天秤にかけるための「消耗品」に過ぎなかった。


1733年 夏:憂国の傭兵団の壊滅と「死の宣告」

当時、騎士道精神を重んじていた「憂国の傭兵団」(団長バルロ)に所属していたシン、ガーブ(ガーベラ)、ヤミル、クリス、ハンス、そして兵站担当のオットーらは、死臭漂う最前線で泥沼の消耗戦を強いられた。 戦況が佳境を迎えた夏、オルレアン伯爵は傭兵団長たちに対し、「死んでくれ」という冷酷な宣告を下した。これは感情的な裏切りではなく、正規軍が戻るまでの時間を稼ぐための、最も安価で効率的な「戦術用語」としての使い捨てであった。結果、156名いた団員のうち122名が戦死し、育ての親である団長も再起不能の傷を負った。バルロ団長は、生き残ったシンら6名に対し、自らの死と引き換えに「卑怯者の汚名」を背負わせて逃がすことで彼らに未来を託し、団の解散を宣言した。シンはこの時、自分たちが「数式の一部」として扱われた世界の構造に対し、冷徹な復讐を誓った。

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【第一部:ゲルマニア編(1733年 - 1735年)】廃都の咆哮と新国家の産声


1733年 冬:「緋色の傭兵団」旗揚げ

フランク王国を捨てた6名は、傭兵が独自の秩序を持つ混沌の地、ゲルマニアへと亡命した。そこで「生き残るための合理」を掲げる新組織「緋色の傭兵団」を設立。シンは、組織を「人間の体」に見立て、戦闘部隊(手足)、斥候(目耳)、兵站(内臓)、作戦部(頭脳)を機能的に配置する近代的な軍制を構想した。


1734年 春:宿場町の「特異体」討伐

一行は実績を積むため、旧街道沿いの宿場町を脅かしていた熊型の魔獣の討伐を請け負った。そこに出現したのは、本来北方に現れるはずの災厄である「特異体」であった。シンは重傷を負いながらも、地形と個々の特技を組み合わせた精密な演算によって、人的被害ゼロでの討伐を完遂した。この「たった数名の新参者が特異体を狩った」という事実は、ミューラー公国の若き天才児、アレク・フォン・ミューラーの目にとまることとなった。


1734年 秋:旧帝都の掌握と「有機体」の構築

シンはゲルマニアの物流と情報のハブである神聖ロマヌス帝国の廃墟「旧帝都」を拠点に定めた。

人材の吸収: 裏社会の組織(壱~肆)を屈服・再編し、さらに宿場町で合流したマルコを教育隊長に任命して、孤児や新兵に読み書き・計算・集団戦闘を徹底させた。

職能の拡充: 鍛冶師ゲルドと発明家ノインを招聘し、後に戦場を一変させる「組み立て式攻城兵器カタパルト・バリスタ」の開発に着手した。

組織の変貌: 北方の冒険者アインツら狩人隊イエーガーを吸収し、団員数は160名規模へと成長した。


1734年 冬:鉄鎖傭兵団との宣戦布告戦

勢力を拡大する「緋色」を疎んだ茶の剣傭兵群団傘下の「鉄鎖傭兵団」が、ゲルマニアの掟に基づき宣戦布告を行った。敵53名に対し、シンらはわずか6名で対峙したが、シンの精密な指揮とガーブらの圧倒的な武勇により、わずか20分で敵を殲滅した。この勝利により、緋色の傭兵団は「無視できない新興勢力」としてゲルマニア全土に名を轟かせた。


1735年 春:アレク大公との同盟と「黒狼」との死闘

アレク大公は「緋色」を検分するため自ら旧帝都を訪問した。会談の場において、ガーブはゲルマニア最強のアドルフィーネ(黒狼騎士団長)に対し、無手の決闘を挑んだ。凄絶な肉弾戦は引き分けに終わったが、この武威の証明を経て、シンとアレクは対等な「同盟」を締結した。


1735年 夏 - 秋:ゲルマニア統一戦争

アレク大公による「ゲルマニア統一宣言」を機に、全土は戦乱の渦に呑み込まれた。

赤い鷹の合流: ゲルマニア屈指の「赤い鷹傭兵群団」(800名)を指揮下に収め、緋色は1,200名規模の軍勢へと膨れ上がった。

ヴィットマン領の屈服: 東部の難所、ヴィットマン子爵の「鉄鋼兵」に対し、シンは攻城兵器のデモンストレーションとガーブらによる絶壁からの急襲を組み合わせ、無血での帰順を勝ち取った。

ゲルニーハーヘンの決戦: 統一の最終障害、ガウス自治領(ホーハーベン商会)と四つの傭兵群団(計13,000名)に対し、統一軍2,450名が激突した。シンはカタパルトの野戦投入とアドルフィーネの「車輪の陣」を組み合わせた殲滅戦術を実行。結果、損害を2割に抑えて敵の9割を壊滅させた。最終局面でガーブが敵将「茶色の羆」ヨハンの首を狩り、傭兵支配の時代は終焉を迎えた。


1735年 冬:同盟解消とゲルマニア離脱

アレク大公は、シンの「自らの意思で盤面をひっくり返す力」を新国家にとっての危険因子と評価し、最大級の敬意を持って同盟の解消と国外退去を命じた。緋色の傭兵団は1,200万Gの報奨金を受け取り、精鋭150名と共に、宿敵オルレアン伯爵の待つフランク王国へと帰還を開始した。

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【第二部:ブリタニア編(1736年 - 1737年)】霧の国の再誕と影の執行人


1736年 春:北外海の私掠船と女王の招聘

フランク王国への帰還途上、北外海にてブリタニア海軍ヴェイン少佐の擬装私掠船と遭遇した。シンは「洋上の籠城戦」でヴェインを圧倒したが、ヴェインの正体は、内乱の危機にあるブリタニア(エンガード)の若き女王イライザからの使者であった。シンはこの招きを、将来のオルレアン包囲網のための外交的布石として利用することを決断し、全団員260名(合流組を含む)を引き連れてブリタニアへ渡った。


1736年 夏:情報の「Z」と「均し」の開始

ブリタニアに上陸したシンは、情報組織「Z」の大陸地域統括・ななと接触。この地が、神聖十字教と先住民の多神教的文化(八百万の神々)が衝突する歪な構造であることを把握した。

女王への帝王学: シンとオットーは、中立という名の優柔不断に陥っていたイライザ女王に対し、「損切り」という名の合理的な統治論を説いた。その結果、女王は国家を巨大な商会として再編する『ブリタニア四国連合王権国憲章』を自ら草案した。

影の執行: シンたちは「影の執政官」として、憲章発布の障壁となる強硬派貴族や腐敗した武器商人たちの「地均し」を開始した。


1736年 秋:経済戦と情報の罠

シンは「Z」や裏社会の組織「銅貨の天秤」と協力し、戦争を望む三大武器商人を経済的に自壊させた。さらに、開戦派の急先鋒であったガンツ侯爵やラングフォード侯爵を策謀によって追い詰め、政治的に失脚させた。


1736年 冬:グラス・ガレス事変とハイランダーの共闘

軍部の生き残りライル団長率いる「鉄理の規矩騎士団」が独断で暴走し、北方のスカイウェール領グラス・ガレスへ侵攻を開始した。

聖地への旅: シンは伝説の戦士団ハイランダー(クリシュ・アラン)の助力を得るため北進。

長老テツザンとの決闘: ガーブは、強者のみを信奉する長老テツザンと凄絶な死闘を繰り広げ、その「武威」によってハイランダーの協力を取り付けた。


1737年 初頭:グラス・ガレスの激戦と結末

包囲されたグラス・ガレスにおいて、混成軍(義勇兵+緋色)と騎士団800騎が激突した。

魔獣狩りの戦術: ゲルドとノインによる二重壁と巨大バリスタ、さらに「スリング」や「投網」など魔獣狩りの要領で騎馬を無力化する罠を多用し、騎士団の機動力を完全に剥奪した。

首狩りの完遂: 最終局面、増援として駆けつけたガーブが、混乱する敵陣の最奥でライル団長の首を狩り、事変を鎮圧した。


1737年 春:ブリタニアの再誕

この勝利により、ブリタニア四国は一つにまとまり、イライザはエリザベス1世として即位を宣言した。緋色の傭兵団は自らの功績を歴史の表舞台から消し去ることを条件に、多額の報奨金を得て大陸へ帰還した。

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結び:1737年 秋、新たなる嵐への帰還


黒鉄期1737年 秋。 ゲルマニアで国家を創り、ブリタニアで女王を救った緋色の狼たちは、いまや総勢266名の精鋭集団となってフランク王国の土を再び踏んだ。彼らの瞳には、かつて自分たちを使い捨てにしたオルレアン伯爵への冷徹な殺意と、それ以上に巨大な「盤面を支配する知略」が宿っている。

「行こうぜ。俺たちの、戦場へ」

シンの言葉と共に、緋色の軍勢は夜明け前の闇へと消えていった。彼らが次に描く数式は、フランク王国、ひいては西方大陸全土を焦がす「動乱」の序曲に他ならない。

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