ガーランドの反則すぎる能力
前略、おふくろ様。
トラックに轢かれたと思ったら異世界に飛ばされ、生活の為に就職活動の真っ最中です。
ちょっとした悪ふざけで上司のセクハラに加担した結果、キレた女子に胸を剣で貫かれ、現在死に掛けております。
焼けるような痛みがありましたが、それも徐々に無くなり、今はもう何も感じなくなりました。
これが死ぬという感覚なのでしょうか。
短い人生でしたが、先立つ不孝をお許しください。
貴女の息子は苦しむことなくこの世を去れそうです。
「見たかった絵でも見て満足そうに天に昇りそうな顔をしとるが、そっちでノビとるセクハラ犬も一緒に燃やしてみるか?」
「偶には良いこと言うわね。でも、一回ぶっ殺したらサッパリしたわ。遊んでないで仕事しましょ。残業になったら特別休暇に差し支えるわ」
なんか、僕を殺しといてサッパリしたとか、遊びとか言ってます。女子って怖いです。
「ほれ、いつまでも寝とらんとさっさと起きるのじゃ。サラファーユは犬にヒールでも掛けてやれ」
「そんなこと言われても僕はもうすぐ死んでしまうし、こんなに血が出て……あれ?」
胸に手を当ててみても血が付いていない。服は破けているけれど、痛みどころか傷一つない。
確かに、間違いなく、僕は剣で胸を突きさされたはずなのに。
「ふっふっふ!驚いているなイツキ。説明してやろう!」
さっきまでボロ雑巾みたいだった犬……じゃなくて、ガーランド隊長が満面のドヤ顔で腕組みして立っている。
サラさんが治療魔法を掛けたのだろう。魔法ってまじすげぇ。僕のも魔法で治ったのか?
「先に言っておくが、それは魔法じゃないぜ?チートだよ、チート。俺のな」
「チート能力ですか!?死者を復活させるとか?」
「死者を復活か。それも確かにチートじゃが、こやつの能力はもっと出鱈目で超ド級の反則ものじゃ」
「隊長、もったいぶってないで早く。巻きでいきましょ、巻きで」
「あぁ、そうだな。簡単に言うと俺のチート能力は『決め事を履行させる力』ってとこだ」
「決め事を履行させる?つまり、約束したら絶対にそれを守らなくちゃいけないってことですか?」
「大体あってるが、ちょっと違う。さっき俺が言ったろ?お前は今日、絶対に死なないって」
「ええ。もしかしてそれだけで僕が今日一日不死身になったってことですか?」
「流石は異世界人。呑み込みが早くて助かるぜ。要は、俺とお前が取り決めをして、俺はお前の願いを叶えた。死に掛ける程の代償を払ってな。その対価が世界に認められた結果、『決め事』が履行されたわけだ」
「つまり、隊長と『決め事』をして、それに見合う対価を払えば、何でも叶うってことですか?」
「うん、そゆこと」
「マジっすか!!!???」
「うん、マジで」
チートだ。まごうことなきチートだ。それって、代償が払えるなら何でも出来ちゃうってことじゃないか!いいの!?そんな能力あっていいの!?ん?あれ?じゃあ隊長も異世界人ってこと?
「この能力は元々は王家の始祖。つまり、異世界から来た俺の遠い御先祖様が持ってた能力でな。どういうわけか俺が生まれた時から備わっていたみたいだ。覚醒遺伝ってやつ?」
「こんな没落寸前の貧乏貴族の五男坊で、なんの取り柄もない平凡な男が国王直属の部隊長なんて役職に就けている理由がわかったじゃろ」
「はい」
「はいじゃねぇよ!」
「苦労して魔法の修行してたのが馬鹿らしくなるわよね。私もチート能力持って生まれたかったわ」
「そうは言っても、対価が払えてナンボだからな?そこまで便利じゃないんだぞこれ。使えるのは最大で一日三回までだし、決め事の履行中はずっと使える回数が減ったままだしな」
いや、それでも十分便利でしょ。
「初代国王になった勇者が魔王にこの力を使って仮初の和平……酒場で話した『人と魔族の八百長戦争』を取り決めたからこそ今があるのじゃ。こんなエロ犬にそんな大それた力が宿っとると考えるとそら恐ろしい話じゃの」
「あっ、ターゲットが移動するみたい。今日は絶対に死なないって理解出来たなら行くわよ、変態外道な奴隷商人イツキ」
「やっぱりやるんですね……お芝居とか苦手なんですが……」
「嫌ならやめるがいい。一生酒屋のバイトで隠遁生活じゃがな」
「そういうこった、頑張れイツキ。お前はやれば出来る子だ」
「…………はい、頑張ります」
「では、ミッションスタートだ!コードネームは『変態外道奴隷商人とセクシーエルフ』!各自、持ち場に着け!」
やる気のない三つの生返事が返り、作戦は始まった。




