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宿坊あやかし奇憚  作者: あやと
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あやかし宿坊奇憚 外伝 閻魔2

『やっぱり船渡しは金のある奴だけか・・・』


青年は緊張ぎみに橋を渡っていたが中程まで来ると足を止めていた



彼岸の橋を渡るなど一生に一度の事だ。そうなればこれは見ておかなくては・・・


好奇心が勝り興味深々三途の川を眺める




どうやら三途の川は罪の度合いで深さを変えるらしい


今見る者は浅瀬をパシャパシャと歩いているし


先程見た者など溺れるのでは?という深みを必死の形相で手足をバタつかせる


それもその筈・・・生前何をしたのか・・必死に泳ぐ男の後ろからは


漆黒とも暗黒ともとれる色合いの龍が紅い顎門(あぎと)を開け追い立てていた




『まぁ・・眺めててもしゃぁないか・・』


青年は伸びをするとまた歩き出す。程なくしてあちら側に人が見えた 


長椅子に座り・・・どうやら寝ている様だ




『おい!おい! 起きろっ!!おい!! 婆ぁさん!!』


千年も居眠りしてるのか?青年が呆れた声音で言うと


「はっ・・・」


呼び起こされ婆は慌てた様子で立ち上がる


「いやぁ・・橋渡しなんて久しぶりなもんで・・・さぁさぁこちらです」



婆が指し示した堂は浅草の寺院も真っ青な程立派な門構えだ


案内の婆は門番に何やら耳打ちすると青年に一礼して去って行った



―― また・・居眠りしに行くのか?



そんな婆の背中を青年は見送りながら思っていると



「こちらでございます」


何所からか雑色が1人現れ案内に先立つ


案内のまま付いて行くとある部屋の前で止まり御簾の内に声をかけた


「連れて参りました」


「早(と)く参れ」


空かさず御簾内から声がかかる



―― とく?




「早(はや)く入れという意味ですよ」


青年が首を傾げていると御簾が上がり男が隙の無さそうな笑顔で説明してくれた



―― でかっ!!・・・6尺くらいか?


   


青年は自分と男の背を比べ驚く


それを他所に


「ほぉ~これが千年振りに橋渡しになった人間か」


奥からも声がかかった


見ればもう1人の髭の男が居て黒い道服には閻魔と書かれている



―― 閻魔様?




「なぁ篁(たかむら)良いだろう?」


閻魔は青年を他所に篁と呼んだ男の顔を窺う


篁はそれを綺麗に無視すると



「生前、1度も嘘を吐かなかったのですか?」


青年に問うた



『あぁ。お天道様に顔向け出来ねぇ事は何もしてねぇ!!』


青年はキッパリと言い返す


閻魔の目がキラリと光ったがまたもや無視された



「・・では酒は?」


『俺は下戸でな・・・1滴も呑めねぇ』


「・・・・では女は?」


続けて聞かれて・・・青年はキレた



『脱依婆と言い何なんだよ!!ったく!!あぁ。あぁ!!どうせ女と寝た事ないよ!!


 俺は何故だかモテないんだよ!!悪かったな!!』



「悪くは無いのですが・・・夜鷹も買ってないとは・・」


女を買えば童貞では無いだろう・・篁は遠慮がちに言い



青年がハッとした顔をし


『そうか!!その手があったか!!しまった~!!


 そうだ!!橋渡し記念に今からでも帰してくれ!!』


無茶苦茶な事を言い出す





「いや。それは流石に無理ですが・・・」


篁がちらりと閻魔を見ると閻魔は面白い物を見つけた子供の様な目で青年を見ていた



『無理かぁ・・あ!! じゃぁ人を庇って死んだ記念ならどうだ?!』


「あぁ。貴方は痴話喧嘩を止めに入って刃物を持ち出した男に刺されたんでしたね


 それでも生き返るのは無理ですけど・・・」



『む~り~かぁ・・・orz 』


「閻魔になれば天女見放題だぞ~。どうじゃ?閻魔にならんか?」



2人の遣り取りを見ていた閻魔が項垂れる青年に声をかけた



『天女??   マジか?!それ? マジか?!』


焦り掴み掛からんばかりの青年に閻魔は微笑みながら


「あぁ本当じゃ。」


そう答えると やるか?と青年に確かめる


『やる!!やる!!俺。閻魔になる!!』


青年の即答に篁は眉根を寄せた




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