宿坊あやかし奇憚 外伝 美弥4
「その者を神使いにしたい。とか願いに来たのではないのか?」
『え~?!そう願ったら叶うんですか?!』
驚きを隠せない風に美弥は聞いた
「そうでは・・ないのか?」
朱莉は首をヒトツ傾げ考えにふける
古から成り損なった者が神使いにしてくれとここに来て願うのは多い
この2人連れもてっきりそうだと思ってたのだ
『ねぇ・・どうなのよ?』
「いや・・願えば叶えない事もないだろうが・・」
「え?!マジで?」
朱莉の言葉を聞き飛び上がらんばかりに喜んだキツネだが
『そうなんだ・・でも良いです』
美弥はあっさりと否と言う
「「え?!」」
キツネと朱莉が揃って声を上げる事となった
『だって・・・捨てられたのって運命でしょ?
宿ってたんだから・・宿命?
それなら神使いに成れなかったのも宿命でしょ?』
「そうだけど・・」
キツネが納得行かない声音で答えると
『それにお礼もしてもらわなきゃならないから
神様の使いになったら忙しくて返してもらえないし~』
美弥は楽しそうに笑う
「う・・・;」
焦り顔のキツネ
「お礼とは・・・どのような成り行きで?」
朱莉は2人の遣り取りを面白そうに見ながら口を挟んだ
美弥はキツネと出合い今にいたった経緯を掻い摘んで話し
『助けた亀でさえお礼するのに、キツネがしないのは不義理でしょ?』
衒い無く言う
「それは大いにそうだ。礼は尽くさねばならないな。それで・・・望みは何なんだ?」
『初めて幽霊を見たのはいつだったか・・もう忘れちゃったんだけど・・』
美弥は答えを言わず語り出した
『物心ついた時にはもう見えててね。
小さい頃は他の人には視得ないって解らなくて
・・それで言い過ぎたのかな?親が段々と気味悪がってね
小学校に上がる頃にはもう・・だた機械的に食事が出てくるだけ
なぁ~んにも会話なんてないの・・
お小遣いはただ机に置いてある、洋服は箪笥に入れてある
そうして貰えるだけマシなのかな?
こうして修学旅行にも来られたし』
―― それで毎日、毎日・・婆ちゃん家に来てたのか・・
キツネはただ俯く美弥を見つめていた
『大丈夫。もう馴れたから』
視線に気が付いたのか美弥は顔を上げると笑んでみせた
『ただ・・・時々・・ホント時々なんだけど・・寂しいんだ
だから・・キツネに側に居て欲しいの それが私の望み』
「それではその者に名を付けよ それでそなたの望みは叶えられる。
異存は無いだろう?」
朱莉は美弥に告げるとキツネに確認する様に聞く
「何だ?イヤなのか?」
黙ったままのキツネに朱莉が言うと
『爽耶ってどうかな?』美弥は聞いた
―― 爽は暗やみがさっぱりと割りきれて除かれた事?・・・
耶で疑問形なのは気になるけど・・
「あぁ。いいよ。」
『良かった♪』
「ではもう一度、名を呼びお前は返事をしろ」
朱莉は理由を告げずにさぁさぁと煽る
『 爽耶・・』
「はい」
1人と1匹は不思議顔で名を呼び答えると・・
美弥が手にしていたキツネの寄代が仄かに光りだす
それは徐々に眩しい程の光を発し美弥を包み込んだ




