宿坊あやかし奇憚 外伝 美弥
「ん~・・・ここは・・?」
気が付くと緑の中に居た・・・
俺は家に祭られている小さな小さな祠の稲荷だったのだけど・・・
どう考えても今の風景は草むらだ
―― あ~ぁ・・捨てられたちゃったか
世話をしてくれてた婆ちゃんが死んでから突然やってきた
【遠く離れた所に住む息子】は俺の顔を見て気持ち悪いだの
厚化粧で香水臭い嫁は子供が怖がるだの不気味だの散々言ってたもんなぁ~
「お前の方が数倍不気味だつーの!」
だれも居ない所で悪態をついてもしょうがないのだが・・
う~ん・・これから先どうしようかなぁ~
せっかくあと少しで神使いになれたのになぁ・・
野晒しで終わるのか~
それなら意識の無い内に捨てられた方が良かったよな~
あ~あ~
捨てられたままに転がりながらキツネは一人ごちる
ガサガサガサ
ん・・・?誰か・・来た?
誰かが草を漕いで歩いてくるようだ
『お~い!!キツネ~!!どこよー!!』
ガサガサッガサガサッ
『もぉ~!!どこに捨てられたのよ~』
ガサッガサガサッ
―― ?!・・・あの声は隣の家の美弥
「お~ぃ!!此処!!ここだ~!!」
って俺の声が聞こえる訳ないっつーの!!
・・・隣の美弥はよく婆ちゃんの所に遊びに来て
話し相手になったり一緒に稲荷の祠を掃除してくれたり
飯を食ったり・・・って何であいつ他人の家に入り浸りだったんだ?
ガサガサッ
『あ~!!居た!!』
お~!!美弥。よくぞ見つけてくれた!!
『あ~あ・・壊れちゃってるよもー!!』
・・・・えっ?!・・・壊れ・・・てる?
『胴体が真っ二つじゃない!!』
マジかー!?マジかー俺!?
・・・でも痛くない・・うん。
痛くない・・・痛く・・ない・・・・・はず;
『さぁ。治してあげるからね?帰るよ~』
美弥はそう言うとキツネの像をそっとコンビニ袋に入れた
「おい・・俺は菓子と一緒か?」
プリンだのスナック菓子と一緒に入れられたキツネは思わず突っ込んだ
『まぁ。そう言わないでよ。帰りに慌てて探しに来たから これしか無いのよ』
「まぁ許してやるか・・」
『ありがとう。・・ってあんた偉そうなんだけど?』
「・・・・?! お前、俺の声が聞こえるのか?」
『今更何を・・・あんたが婆ちゃんの所に居る時から入ってるのは知ってたわよ』
「俺の声が聞こえてて黙ってたのか?」
『婆ちゃんに何て言うのよ?』
「そうだけど・・・稲荷寿司が食いたいって言ってたのも聞こえてたのか?」
『だから婆ちゃんにお供えしてあげたらって言ってあげたじゃない?』
「偶然だと思ってた・・・」
『鈍いんだね・・』
ふふっと笑うと美弥はコンビニ袋を大事そうに抱えなおした
「わ・・わ――――!!ヤメロ!!揺らすな!俺、真っ二つなんだろ?!」
『真っ二つにヒビが入ってるだけだから大丈夫よ』
「なんだそうか・・・ってお前さっき言ってたじゃないか?!」
『あぁ。急いでたから省いただけよ』
涼しい顔で美弥は言うと
『さぁ着いたから静かにしてよ・・』
小声で続け玄関のドアを開けるとすぐ脇の階段から真っ直ぐ自室へと行った




