宿坊あやかし奇憚 ( 桃太郎 編 3 )
「こんな事でもしないとケジメが付けられないとはな・・・」
半蔵は客間で1人ごちる
普通に好きだと言っても今なら未来は受け入れてくれるだろう・・
清姫の件で元からある変な自信が確信へと変わっていた
だが・・・
「随分と自惚れてるのぉ~」
前に御爺様の言った言葉が妙に気に掛かる
「未来の決める事かもしれんぞ・・」
そう言った通りなのかもしれない。
なんせ御爺様は隠世の神・・・大国主なのだから
自分と添う運命の女がその孫として生まれて来たのも・・運命か・・?
それならば・・未来に全てを話さなければならない。
半蔵として・・・いや。 桃太郎としても・・・
そうして宿帳に予約を自分で書いた
―― 宿帳・・自分で書いたんだ・・
てか桃太郎て・・半蔵いくつよ?
単に・・・泊まりたかったとか・・?
うちって物語の主人公騙らないと泊まれないのかなぁ?
それか・・女将試験とか?
やや斜めに行った思考を抱え不思議で宿帳を見つめる未来
鍋からは良い香りが漂って来ていた
『お食事をお持ち致しました』
声をかけ手を添え襖を開けると鍋を持っているイズナを先に部屋に入れ
続いて自分も入ると襖を閉める
―― あの時も思ったが・・・やはり接客では所作が丁寧になった。
普段もそうであれば、もっと淑やかで・・
ムードも出やすいんだがな・・
未来を見つめながら考えに耽っていると
鍋をテーブルにセットしイズナは失礼致しますと部屋を辞した。
未来が小鉢とグラスを置き鍋の蓋を開けると
ほっこりとした湯気と美味しそうな匂いが立つ
『最初はビールで宜しかったですか?』
銘柄は半蔵がいつも飲んでるビールだ
「あぁ。」
半蔵は頷きグラスを持つ
ビールを注ぐ未来の顔も手付きもまた美しい
半蔵は顔が赤くなるのを隠す様にビールを飲み干した
「一緒に・・・食べないか?」
『宜しいのですか?』
「あぁ。」
『・・・最初から言ってくれたら私の分も持ってきたのに!!』
もう。面倒だなぁ・・などと文句を言いつつ未来は笑顔で出ていった
―― 切り替えが早いと言うか・・・
客扱いは何所へ飛んでいった??
『ん―――♪』
早速、自分のグラスと小鉢を持ってくると鍋をつつく未来は満面の笑みだ
半蔵に注いで貰い嬉しそうに未来はグラスを口に運ぶ
―― 俺は客なんだが・・・
ここは俺を客として受け付けないの・・・か?
十数年前も同じ様な事を思った半蔵は腑に落ちないながら笑顔の未来に見とれていた
――1時間後――
『んで?』
お腹も満足してきたのか未来は突然に言った
「んで?って・・・」
焼酎の入った素焼きのコップを持ったまま固まった半蔵
『だから~ 態々予約を入れて此処に泊まる理由』
―― だから~って;
今の「んで?」にそこまでの問いが凝縮されているのか?
「いや・・・あの・・別に・・」
『別に? じゃぁ何で裏口から出てって玄関から帰ってくるのよ?』
「裏口から玄関?」
―― 何だそりゃ?
『うん。だって探すなって書いて裏口から出てった訳でしょ?
それで玄関から帰ってきたじゃない?』
「一応・・・客なんだが・・」
『そうそう。予約入れて、自分で御飯支度して裏口から出て
玄関から帰ってきた訳じゃない?』
―― 俺が間抜けに聞こえるのは・・・気のせい・・か?
遠慮の無い未来の物言いに
何時ぞやの日本武の気持ちが解る気がした半蔵だった




