宿坊あやかし奇憚 ( 獏 編5)
―― 未来が居なくても・・・悪夢を見なくなる?
半蔵は驚きを隠せない顔で獏を見つめながら考えていた
最初にあの夢を見たのはいつだったか・・・
勅命とは言え男達を当たると幸いに斬りつけた・・
逃げ惑う女子供さえも容赦なく。
猩々緋に染まる場で最後に聞いたのは女の怨嗟の声
「何故、このような無体が許される!?
人は人だというだけで偉いとでも言うのか?尊いとでも?
人とは何処までも傲慢で弱いだけではないか!!
この怨み忘れない!!忘れさせはしない!!
いいか。覚えておれ!!末代まで祟ってやろうぞ・・」
そう吠える女も子供ごと斬り捨てた・・
半蔵の額が嫌な汗でべたりと濡れる
「どうかした?」
獏はそんな半蔵の顔を覗き込むと聞いた
「いや・・・。」
「それで?どうする?」
「どうするって・・・」
悪夢を見ないから未来が必要なのか・・・見なくても未来を愛しているのか?
半蔵は一抹の不安に駆られたが
「未来が帰ってきたら聞いてみろ」
ぶっきら棒に言い放った
「私と一緒に居ませんか?」
真剣な様子で言う死神の瞳はいつになく綺麗な緑で吸い込まれそうだ
『あの夢を見なくなる?』
「えぇ。」
死神は答えながら未来の頬にキスをする
『でも・・・夢を見なくても私の記憶にはあるよ?』
「必要なら消しますよ?」
『え?! 消せるの??』
「えぇ。それで未来の愁いが晴れて、そう望むなら」
『沙羅って・・・器用だね・・』
関心した様に未来は言った
管理ファイルの記憶欄を削除するだけだ
「そうでも無いと思いますが・・・」
死神はちょっと考えると答えた
『・・・それで私は良いのかな?』
「え?」
『自分が嫌だと思う事を忘れて・・・沙羅に優しくされて・・
それで・・・良いのかな?』
「それは・・・」
『・・・駄目。』
今度は未来がしっかりと意志を示す番だった
―― 弱いだけが未来じゃない。
あんなに凍てつく悲しみを湛え泣いていたのに・・
それでもちゃんと歩もうとする・・・
その身に纏う輝きの如く・・凛としていて美しい
「仕方が無いですね。では・・・朝御飯を食べたら帰りますか?」
死神は溜め息混じりにそう提案すると優しく頭を撫でた
『・・・う~ん。』
―― そう言えば・・ 晩御飯・・・食べ損ねてた・・・orz
「・・・晩御飯も食べたいですか?」
浮かない顔の未来にクスクスと笑いながら死神は聞いた
『凄い沙羅!! どうして私の考えてる事が解るの?
・・・心を読めるとか?』
驚き顔を不信顔に変え聞く未来
「それは出来ませんが・・・」
心を読まなくても強く思ってる事はダダ漏れである。
という真実は言わない事にした
『本当?』
「えぇ。未来に嘘はつきません。それより・・何が食べたいですか?」
『う~ん?何があるんだろう?』
「勿論、コース料理なんかもありますが・・
未来は色々な物を沢山食べたいですよね?
それなら・・
中華で100種類から食べ放題ってのもありますし・・
デザートなら・・ケーキバイキングなんかもありますよ?」
『え―?!迷う・・』
「両方でも構いませんよ?」
『わぁ~い!! 沙羅 大好き♪』
未来がぎゅっと抱き付く
―― はいはい。
でも・・ドレス姿は見られそうですね?
未来を抱き締められたまま死神はふっと微笑んだ




