宿坊あやかし奇憚 ( 獏 編4)
―― 朝か・・・?
半蔵は1人きりだというのに悪夢にも魘されず飛び起きもせず朝を迎えていた
必ず悪い夢を見ると思い込んでた半蔵は肩透かしを喰らい訝しがる
―― 未来が居ないのに・・・夢を見なかった?
「あぁ。やっぱり!お兄さんの夢はとっても美味し―♪」
その突然の声に頭を廻らせる半蔵
見れば枕元にちょこんと座る少年の姿があった
「何者だ?」
「あぁ。突然ごめんね。僕は獏と呼ばれています」
「獏?」
「はい。」
獏と称した少年はニコリと笑った
―― これが獏とは・・・
体は熊・鼻は像・目は犀・尾は牛・脚は虎
その昔、神が動物を創造した際に余った物を用い獏を創造したと言われている
悪夢を見たら獏・獏・獏。と3回唱えると悪夢を食べてくれるとか
この夢を獏にあげますと言うと悪夢を食べてくれるとも言われている
だが目の前に居る少年は長い髪をダルそうに束ね
ややサイズが大きそうだが・・白拍子姿だ
少女の様な中世的な顔は満面の笑みを湛えている
「美味しいとは?」
「あぁ。はい。お兄さんの悪夢が・・です
この家に入り込んでから狙ってたんだ
あの娘が居ると悪夢を見ないでしょ?」
「それで未来を追い出したのか?」
「違うよ~。ただ・・・夢の終わりに言っただけ」
「・・・何を?」
「ここに居ては夢の判じは出来ないよ~と・・」
「追い出したのと同じだろ?!」
「違うよ。助言しただけだし」
「そのお陰で俺はなぁ!・・・」
言いかけて半蔵は口を噤んだ
「悪夢は見なかったでしょ?僕が食べちゃったから」
獏はにっこりと笑う
「確かに・・・」
半蔵は憮然としたが次の言葉が出ない
「本当はあの娘に呼ばれて来たんだよ。」
「未来に?」
「うん。獏・獏・獏って3回」
「何か・・悪夢でも見たって事か?」
「僕が食べちゃったから覚えてないと思うけど・・嫌な夢なのかな?」
「どんな内容だ?」
「それは言えないよ」
「あ?!」
「だってそういうの・・・人はプライバシーの侵害って言うんでしょ?」
獏は賢しい顔をして言う
「俺の侵害は良いのか?!」
「誰にも言わなければ良いんでしょ?それなら良いじゃん」
涼しい顔で言い募る獏を半蔵は睨み付けた
「ねぇ。お兄さん僕を飼わない?」
獏は気にする風も無く言うと
「あ?!」
半蔵は虚を突かれた顔をする
「だって僕が居れば悪夢を見ないでしょ。
僕は美味しい食事(悪夢)にありつける」
良い思い付きだと思わない?と獏は嬉しげだ
―― ん・・朝・・?
翌朝キングサイズのベッドで未来は目覚めた
傍らには死神が居て「おはようございます」と目覚めた未来に微笑む
『あれ?沙羅・・・・・ えぇぇぇぇ?!』
―― ちょっと待って! ずっと・・寝顔見られてた?!
は・・恥ずかしいんだけど
「あぁ。あのまま眠ってしまったので一緒に居たんですが・・・
夢は見なかった様ですね?」
焦り顔を覆う未来に死神はサラリと言うと未来がコクリと頷く
『・・・沙羅?何かしたの?』
そう言えば・・
話せなかった幼い頃も、具合が悪かった修学旅行の時も沙羅が治してくれた
「えぇ。・・・未来? 私と居るとその夢は見なくります。
未来の心痛も減るでしょう。 だから・・・・」
死神は真剣な目を未来へと向けた




