宿坊あやかし奇憚 (獏編2)
―― 行って来ますという事は・・帰ってくるって・・事だよな・・?
心配するなと書いてあるから心配しないと思ってるのか!?
あいつは・・
しかし・・長期間の家出になると・・・
悪夢に耐えられないんじゃ・・
未来を追跡する事に失敗した半蔵は置手紙を見ながら1人考えていた
考えても見つからないのは変わらないが・・
先程の術の妨害の気は死神の物だと判じていた半蔵は
取り合えず数が多い烏達に探すよう言ってある
あとの現実的心配は眠れるかって事だけだ・・・
『さ・・・沙羅・・こんな高い所じゃなくても・・・』
「おや?未来は高所恐怖症でしたか?」
『や。そうじゃなくて・・・値段・・』
―― 高そうだと思っていたけど星の付くホテルだったなんて・・・
まず未来はフロントに掲げられている星に驚き
部屋に案内されて更に驚いた
―― さ・・最上階・・・私のお小遣いじゃぁ無理だよ?
地下でも無理だけど・・・
「支払いなら心配しないで下さい」
呆然と立ち尽くす未来を促す様に窓辺へと連れてくると死神は微笑み言った
『ぃや・・・。無理無理無理!そんなにして貰う訳にいかないよ』
「どうしてです?」
『・・・・どうしてって・・』
「じゃぁ。御爺様の葬儀の時のお詫びという事でどうですか?」
『お詫びって・・・御釣り来ちゃうよ?』
「なんともリーズナブルな・・・」
『え?』
「いいえ。 それでは・・・私の我侭も聞いて下さい?」
『う~ん。じゃぁ解った』
―― やはり未来は未来と言うべきですかね・・・
大抵の女子であれば超高級ホテルの最上階ともなれば喜ばない筈は無いのだが・・
―― ドレスを用意しましたから、ディナーでも?と言ったら・・
帰ってしまいますよね・・
死神はどんな時でも変わらない未来を愛おしく思いながらも
女の事で初めて手詰まり感を味わっていた
「では。ゆっくりして下さい。 私は隣の部屋に居ますから」
『沙羅。ありがとう』
いいえ。笑顔で死神は言うと隣の部屋に消えた
―― まさか・・こんな所に案内されると思ってなかったんだけど・・;
今朝、未来は死神にメールする前に散々ホテルや宿屋など電話をかけていた
ところが・・女子1人と言うと断られてしまうのである
本当の1人旅だったらどうしてくれる!切れ掛かった未来だが
そこで腹を立てても宿泊できる訳ではない
思案した挙句、死神に我侭を言った形となった
―― うわ~こんな大きいベッド初めて見た・・・
それに・・・こんなに沢山の枕、何に使うんだろう?
キングサイズのベッドに未来はポンと飛び乗るとゴロリと寝転がる
やたらとある枕の1つを手に取ると顔を埋めた
―― んー?夢をちゃんと見たいから出てきたんだけど・・
こんな豪華なベッドでイヤ夢を見るのも・・どうなんだろう?
まぁ見るとは限らないけど・・・
てか・・・寝れるかなぁ・・・;




