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宿坊あやかし奇憚  作者: あやと
8/106

お茶の時間ですよ~

『ちょっと!!半蔵―!!なにやってるのよ――!!』


ドカッ☆


未来は言うなり半蔵に飛び蹴りを喰らわした


「おっ・・・お嬢!?」


イキナリの登場に面食らう半蔵を未来は怒りを露に睨んでいる


『何よっ!!』


「御無事でしたか・・」


『無事も何も・・・それよりその子放してやりなよ!』


ホッとした顔の半蔵に怒りが収まったのか・・


訝しげな顔をしながらも未来は半蔵の手の内に居る動物を指差す


「こいつは放せません」


半蔵も譲れないとばかりにキッパリと言い切る


「こいつは朝からお嬢の振りして此処に入り込んでました


何か企みがあるに違いない。」


「チチッ」半蔵の手に居る動物が鳴きながら首を振った


『何だか判らないけど理由があるみたいよ?』


「チッ」今度はそうだ!とも言わんばかりに鳴く


『人の言葉がわかるみたい?・・・この動物なに?イタチの新種?』


見れば胴は長く手足は短い、ちょっと短い尻尾に顔は丸顔で丸い大きな瞳


丸い耳をピクピクと動かしている


「イズナです」


『イズナ?』


「えぇ・・単独で居るのは滅多に居ないんですが・・


飯綱(イズナ)は飯綱法という妖術に使われる動物です」


『どうして私に化けたのかしら?』


イズナは使い手の心を読み好みの容姿に化ける・・・


「・・・さぁ?」


『ふ~ん~・・・』


未来は半蔵の不明瞭な答えに唇を尖らせた


『本人に聞いた方が早いわね?』


「チチッ」イズナが嬉しそうに鳴いた


『はら・・半蔵、放して上げてよ』


「いや。しかし・・」


『しかしも案山子(かかし)もあるかってーの!』


未来は半蔵からイズナを取り上げるとポンと放した


「お嬢!」


未来とイズナの間に割ってはいる半蔵


イズナはクルリンと回ると未来になった


「・・・・他の姿はとれんのか?」


イズナは少し考え込むとフルフルと首を振った


「ややこしい・・」


『いいじゃない・・ね~?』


2人の未来はね~っと首を傾げる


ドンッ!!


「さっさと話せ!」


半蔵は我慢ならないという風にテーブルを叩くと


イズナはさっと未来の後ろに隠れた


『ダメだよ半蔵!動物には優しく!!』


半蔵が動物に優しくないって・・・珍しいなぁ


『そこ座って話を聞かせてくれる?』


未来はイズナに微笑むと椅子を勧めた


「・・・。」


おずおずと座るイズナ、半蔵はと言うと憮然としている


未来はチラリと半蔵を見つつ


『・・半蔵。お茶ッ!』


わざと高飛車に言い放つ


「・・・。」


渋々半蔵が茶を入れ始めたのを見ると


『さぁ・・恐い顔のオジサンは見てないから話してくれる?』


にこやかにイズナに言った


「はい・・実は私・・数年前に山で半蔵さんに助けられまして」


半蔵はハーブ紅茶を入れながら首を傾げた


「・・・溺れてる所を助けて頂きました」


『それでお礼に来たの?』


「えぇ・・恩返しと言うのも恐れ多いですが・・


本当はすぐにでも来なければいけないんでしょうが


水に濡れて力が弱まった私には無理でした」


『半蔵・・思い出した?』


「えぇ・・」


――イズナの使い手が寿命前にイズナとの契約を解除するには


使い手が水に入りイズナを流す・・・片割れはきっと・・


イズナをじっと見つめる半蔵


『じゃぁやっぱり恩返しって事?』


「鶴でさえ恩返しすると言うのにイズナが返さぬとは


不義理な事だと思いまして・・」


『半蔵・・納得した?』


上目使いに半蔵を見ると未来はカップに口をつけた


「はい。」


『そう・・』


カチャリとソーサーにカップを置くと半蔵に渡す


「まだ残ってますが??」


『ちょっと持ってて・・・』


ダァ――ン!!


言い終わるのが早いか未来はテーブルを両手で叩くと


『その後の人の気持ちを考えろっつーの!!』


怒り収まらぬ感じで叫んだ


『あのね~鶴もそうだけど・・恩返しに来て優しくして


急に居なくなる・・どこが恩返しなのよ?!


残された人がどれだけ寂しいか・・


それなら最初から名乗って期間限定ですって言えってーの!!』


「まぁまぁお嬢・・鶴は決して覗かないで下さいって言った訳ですし・・」



『それこそ他所様(よそさま)の家で何を我侭いってんだ!!


人家(ひとんち)の1部屋占拠して・・覗かないで下さいだぁ~あ?


覗いたから居れない?!ちゃんちゃら可笑しいわ~


だったら最初から出来上がった反物持って来いつーの!!』



「あの・・ごめんなさいっ!!そうですよね・・恩返しって言いつつ


とんでもない押し付けをしてました」


鼻息荒い未来に圧倒されつつイズナは両手をついて頭を下げている


『あ・・私こそ大声だしてごめんね。もう良いから頭を上げて?』


言いたい事言って気が晴れたのか・・未来は笑顔だ



「はい。あの・・あの・・


これからこちらで恩返しさせて頂いて良いでしょうか?」


『へ?』


「住み込みで働かせて下さい!!」


『いや。それじゃ恩返しじゃないでしょ?』


「あぁ・・そうですね」


ガクリと肩を落とすイズナ・・


未来は半蔵をチラリと見ると


『じゃぁ半蔵の肩に居る子のお嫁さんになったら?


行く所ないんでしょ?』


とんでもない事を言い出した


「お嬢!?見えてたんですか?」


驚いたのは半蔵だ


『うん。小さい頃から見えてたよ?』


「何故・・黙ってたんです?」


『だってその子・・目が合うといつも消えるんだもの


話して欲しくないのかな?と思って』


「・・・。」


・・・お嬢はどこまで視えて・・どこまで理解しているのか。


『それともイズナって再婚しないの?』


「雄を媒体として雌を使役するんで・・


イズナは一生連れ添うんですが・・再婚は聞いたことないですね・・」


『半蔵が聞いたこと無いだけかもしれないよ?』


「お嬢・・飼いたいだけなんじゃないですか?」


不振な目で見る半蔵に


『ううん。飼いたいのはこの子』


未来は小さく首をふると年老いた猫を抱き上げた


「あ・・この子の手当て忘れてました」


『この子・・猫又(ねこまた)になってしまって


怪しんだ人に捨てられたんだって』



猫も十数年たつと猫又(ようかい)化するという・・



「良いですけど・・お嬢。面倒みられるんですか?」


「にゃ~あ!!」


『自分でやれるから心配ないって』


猫の言葉に未来はクスクスと笑う



「あの~私は?」


話が逸れて行くのでイズナが申し訳なさそうに割り込む



未来は、う~ん?と腕を組むと


『捕り合えず・・通ってきたら?』


と言った


「通う?」


キョトンとするイズナ


『うん。半蔵のイズナにも好みがあるだろうし・・


相性もあるでしょ?来る時はイズナの格好で来てね?』


「はい。じゃぁ今日は山に帰ります」


納得顔で頷くとイズナの姿に戻りペコリと頭を下げて出ていった。






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