宿坊あやかし奇憚 (清姫編5)
「・・・うっ・・」
「気が付いたか?」
半蔵が自分の部屋で気が付くと坂田が心配げな顔で覗いてるのが見えた
「あれ? 俺・・」
「あぁ。未来ちゃんが運んでくれって・・・」
「・・・;」
数十分前・・・未来は気絶した半蔵を見下ろし悩んでいた
―― え――?! 今ので気絶??
普段の半蔵なら有り得ないと思うんだけど・・・
出てってって言ったのに・・・私が出てく?
ってそれは無いでしょ。
でも今は半蔵を見たくないし・・
そうだ!!
未来は半蔵をズルズルと引き摺り廊下に出すと坂田を呼びに行った
と言っても清姫に会いたくない一心でパタパタと階段を降り
そこから叫んだのだが・・・
「何があったんだよ?」
「何って・・・・蹴られただけだが・・・」
「・・・はぁ?お前が?」
「あぁ」
「未来ちゃんに?蹴られて気絶?」
「そうだよ! だったら何だよ!」
「いや。ありえねぇって言うか・・何したんだよ?」
「何って・・・・キスしたらキレて蹴られたんだよ」
「はぁ?!」
「何だよ?」
「お前・・・口の端に口紅ついてるぞ・・・」
「あ?!」
「それ清姫のだろ・・」
「それで未来、他の女にした後するなって怒ってたのか?」
「・・・だろうな。」
「俺からはしてないじゃないか!」
「そういう問題か?」
「違うのか?」
「違うだろ。
未来ちゃんにそれが解る訳も無いし・・・」
「・・・大体お前が清姫に言ったからこうなったんだろ!
自分の嫁くらい抑えとけよ!」
「俺が止められると思うか?」
「・・・・。」
半蔵は眉根を寄せると深い溜め息をついた
「女将さん。ちょっと良いかしら?」
『・・・ダメです』
半蔵を追い出した後、未来はまたベッドに突っ伏せていた
清姫は構わず入るとベッドに腰掛ける
―― だからダメって言ってるのに・・・
どうして自分の部屋に居るのにこうも人が入ってくるのか・・
未来はそのまま考えていた
「ごめんなさいね・・私ね。坂田の嫁なのよ」
『え?! じゃぁ何で半蔵とキスなんか・・・』
驚きガバリと起き上がる未来
「あら。バレてた?」
『半蔵の口の端が紅かったし・・』
「妬いた?」
『え?何で?』
「嫉妬しないの?」
『・・・嫉妬?』
―― 嫉妬って・・・何?
「解らない?・・・みたいねぇ・・」
清姫は、ぽかんとする未来の頭を優しく撫でると溜め息をつく
「私ね・・坂田の親友に好きな人が出来たらしいって聞いて確かめに来たのよ」
『確かめに?』
「えぇ・・・その娘はちゃんと半蔵の事が好きかどうか」
『半蔵の事・・・信じてないんですか?』
「え?」
『いいえ。』
「ねぇ。半蔵の事・・・好き?」
『へ?好きですよ』
「それって・・恋愛感情?」
『・・・・・・・・・さぁ?』
未来は首を傾げ考え込んでいる
―― 幼い子供みたいね・・
「他に好きな人って居る?」
『お爺でしょ~あと友達の美弥に・・美弥の狐の爽耶くん。あとは・・・沙羅!』
「その沙羅さんって・・・お友達?」
『う~ん?・・・死神なんです』
「あぁ・・・あの」
『はい』
―― 今の間は気になるけど・・死神が名前を付けさせるなんて・・
よっぽど気に入ってるのね・・
名前を付けさせるという事はその名に縛られ使役されても良いという事だ
―― どっちを選んでも・・・大変だわ
何故なら死神も半蔵と同じ・・・
いや。愛を知らなかっただけに厄介かもしれない
清姫は母親の様な気持ちで未来をそっと抱き締めた




