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宿坊あやかし奇憚  作者: あやと
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宿坊あやかし奇憚 (清姫3)

「・・・近くで見ると迫力の美人ね~」


「お前に関係あるか?」


「あるわよ~私の気持ち知ってるくせに・・」


「昔の男を殺した執念さなら知ってるがな」







あれは醍醐天皇(だいごてんのう)の御世だったか・・




若い僧、安珍は熊野大社(くまのたいしゃ)へお参りする途中庄屋の家に1晩泊めてもらい


1人娘の清姫と出会い互いに心惹かれあった



「熊野大社からの帰りに、必ずまた立ち寄ります」


そう清姫と約束すると庄屋の家を出た



しかし・・・


到着した熊野大社の僧侶に心の迷いを見抜かれ、諭される



修業中の身であった安珍は改心すると


清姫と会わないよう帰り道とはちがう道を帰る事にした


そんな事とは知らない清姫は、安珍の帰りを待ちわび旅人に声をかけた。


「熊野詣からの帰り道、若い御坊様にお会いになりはしませんでしたか?」


「その御坊様なら違う道を行かれましたが・・」




清姫は、訳が解らず必死に安珍を探す


日高川を船で渡る安珍を見つけたが・・・追えば追うほど逃げて行く


清姫は裏切られた恨みと悲しみで、紅い火を吐く恐ろしい大蛇に変化し


尚も安珍を追い続けた。



必死の思いで道成寺(どうじょうじ)に逃げ込み、釣鐘(つりがね)の中に隠れる安珍


大蛇になった清姫は、安珍の隠れた釣鐘に体を巻きつけ、真っ赤な炎を吐き続け


とうとう・・・安珍を焼き殺してしまった








「一途なだけよ?」


清姫はそう嘯(うそぶ)き妖艶な笑みを浮かべると半蔵にしな垂れる


「あほか・・」


半蔵は呆れ顔で清姫をかわすと立ち上がった


「いたぁーぃ!!半蔵。何処行くのよ?!」


「坂田に遊んでもらえ」


そう言うと部屋を出て行ってしまった






















『半蔵の馬鹿・・・』


未来は塀の上に座り項垂れていた




―― 大体、彼女と会うなら外で会えって!!


  それか私を出掛けさせれば良いじゃない・・・馬鹿


  私を名前で呼ばなくなったのって彼女が出来たから・・・かな


  

  

そう思うと何だか泣けてきた


頬に1粒また1粒と涙が伝い、ハラハラと足元へ落ちる


未来は、その度に深々(しんしん)と心が凍ってゆく気がした
















「お嬢。もう御休みですか?」


半蔵は未来の部屋の前まで来ると静かに声をかける


食堂に居るだろうと思い行ったら居なかった・・・


「お嬢?」


不自然なまでの静けさにドアノブに手をかけ回す半蔵



―― この部屋・・鍵なんてあったのか?




未来は普段、自室の鍵などかけない。


何時も声はかけるが躊躇なく戸を開ける半蔵は鍵の存在すら知らなかった



掴んだノブをガチャガチャと動かしてみても当然開かないのだが・・



―― ・・・何があった? 何故、気配がしない・・




前に未来は浚われるのが趣味か?と爺が言った程、浚われ癖のある未来の


現実的な心配を半蔵はした




―― まぁ・・戸は後から直せるし・・・


   未来は怒るだろうが・・



半蔵は少し考えたが手刀でノブを叩くと力無く開いた戸を開け部屋へと入る



―― やはり居ないか・・・



開いたベランダからは冷たい風が入りカーテンがハタハタと揺れていた



―― ・・・窓から浚われた?



半蔵は訝しがり窓に近寄ると辺りを見回すと



未来がお気に入りの場所で座ってるのが見えた




―― 浚われてなかったか・・


   しかし・・あんな所で何やってるんだ?!





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