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宿坊あやかし奇憚  作者: あやと
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宿坊あやかし奇憚 (清姫編1)

「遅くなりました・・・ちょっと迷いまして」


『お待ちしておりました』


久々のお客様を前に未来はニッコリと笑顔だ





『どうぞお上がり下さい。 ・・ここへの道は判り辛かったですか?』


「いえ。」


女は笑顔であっさりと答える



『・・・? すぐにお食事になさいますか?』


未来は部屋に案内しながら聞いていると


丁度、半蔵が食堂から出てきた所だった



「やっと見つけた!! 」


半蔵を見るや女は抱きつくと会いたかったの・・と胸に顔を埋める


「 はぁ?!」


面食らった様子で両手を上げる半蔵



『どうぞごゆっくり』


そう言い未来は丁寧に頭を下げるとスタスタと行ってしまった




―― その台詞をこのタイミングで言うか?




未来の後姿を見つつ溜め息をつくと半蔵は女を剥がしにかかった


「 清姫。どういうつもりだ?」


「だって・・・会いたかったの」


清姫と呼ばれた女は潤んだ赤い瞳で半蔵を見つめる



「あのなぁ・・・」


「こんな所では難でしょう?部屋へ来て」


「俺とお前に何も無いだろ。難でもないがな・・」


「そう?女将・・あの女の子に惚れてるって話だけど」


「なっ・・・だ・・誰が?!」


「坂田」




―― あいつ・・やっぱり殺す・・























―― ビックリした・・半蔵って彼女いたんだ・・



戻った未来は食堂で用意されていたお膳に乗せる為


小さな土鍋を温めながら考えていた


今日は半蔵特製、地鶏のつくねが入ったおでんだ





―― ちょっと言ってくれれば美弥の所にでも行くのに・・・


   これから・・・って無理だし


   よし!さっさと持って行って私は此処で食べよう! 





「すみません!おい!半蔵!!」


未来がさっさと作戦を実行しようとお膳を手に食堂を出ると


玄関から声がする


見れば今日はパン1ではない坂田が立っていた


「あぁ未来ちゃん。今日のお客・・・」


『今、半蔵と部屋に居ると思うけど・・』


「上がらせてもらうよ」


そう言うが早いか坂田は靴をもどかしげに脱ぐと上がる


『坂田さん。ちょっと待って! 行くならこれ・・持って行って!!』


「え?」


未来はポカンとする坂田にお膳を手渡した























『うん♪美味し~♪』


今日はおでんだから冷酒!


坂田の登場で「さっさと作戦」短縮化を図れた未来は


大根に辛子をたっぷり乗せると食べ冷酒を煽る


『ん――♪』


ツンと鼻に抜ける辛味もたまらない



「未来ちゃん。半蔵が酒とつまみ持ってきてくれって・・」


未来がおでんを楽しんでいると坂田が再び現れた


『あ・・おでんはそこの鍋から取って。お酒はそっちにあるから』


箸で指し示し言うと未来は手酌で酒を注ぎ、ハンペンを頬張る



『ん――♪』


「・・・未来ちゃん怒ってないの?」


『え?何で?』


未来はきょとんとした顔で坂田を見つめた




―― 妬かないのか?




「いや・・・。俺、おでん持って行くから、未来ちゃんお酒頼むよ」


『え~!? 御飯中なのに』


「女将だろ?」


そう言われると弱い・・


未来は渋々、一升瓶を抱えると部屋へと行く羽目になった




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