宿坊あやかし奇憚#42
―― 1週間か・・如何した物かの・・
爺であれば老衰で十分だろう・・
だが、未来を残して逝くのに未練が無いかと言うと嘘になる
あの若さで血縁者が居なくなる孤独感を半蔵で補えるか・・不安はある
が・・あの男と孫の行く末が見てみたいそう思ったのも事実だ。
半蔵・・あの男に初めてあった時から面白い男だと思った
不死である事も・・1人の女を追い求める心も・・
求めて居るのは未来だと解って楽しみでもあった・・・
だがもう・・側であの2人を見守る事は出来ない。
そうじゃ・・・行く末なら見られるかもしれん
爺は悪戯を思いついた子供の様に突然ニヤリと笑みを浮かべた
「・・・未来。お前・・何時になったら帰ってくるんだ?」
返事が無いのは承知で半蔵は声に出して言ってみる
未来と呼ぶのも久しぶりだ
未来をお嬢と呼ぶのは半蔵なりのケジメでもあった
幼い頃から一緒に居るが女性として扱いたいと思っているから・・
と言うのは自分への言い訳で
呼び捨てにしてしまうと優しげな声音になり
自分だけが惚れている様で悔しいから・・・
というのが本音だが勿論、未来には内緒だ
輪廻し何度となく名前が変わろうと、求めるのは未来の魂でしかない
未来に愛してると言ったら驚くだろうか・・
「さぁ・・未来。送りますから帰りましょう」
暫く未来を抱き締めていた死神は決心したかの様に言った
『え?泊まっていくよ・・』
「いいえ。未来が傍に居ると約束を違えてしまいそうです
その覚悟は無いでしょう?」
『 約束を違える・・・覚悟?! 無い無い無い!!』
「そうですよね・・だったら帰らなければ」
『うん・・でも沙羅 大丈夫?』
「何がですか?」
『ずっと・・寂しそうだから』
―― 未来に甘えているのは私でしたか・・
子供も様に危なっかしくて儚げな未来を護りたいと思ったのに
未来は強く、どこまでも優しい
「大が付くほど丈夫ではありませんが・・・約束は守りたいです」
『いや。それを言うなら私だって泊まる約束してるんだし・・』
―― 強情ですね・・
「ケーキの例えも解りましたから・・今日はこれで良いですよ」
『う~ん・・』
納得出来ない顔で死神を見つめる未来
「送ると言ってもそのドアから出れば元に・・体に戻ります」
『・・・沙羅。全然、大丈夫じゃない顔してるよ』
「大丈夫・・・ですよ。早く行って下さい」
死神はそう言い未来の背中をそっと押すと
『うん・・・』
未来は頷き真っ直ぐドアへと歩いて行く
振り向いて欲しい・・・ いや。振り向かない方が良い・・
振り向かれたら・・抱き締めて離したくなくなる
死神は祈る様な気持ちで未来の背中を見つめた
ノブへと手をかけカチャリと扉を開ける音がする
扉を押す未来の向こうには
日常のそれとは違った・・ただ只管に眩しい光しか無い
未来がすっと光に吸い込まれるように消えかかる
「未来・・・」
―― 振り向かない・・・か・・
気の遠くなる様な孤独感が死神を襲った
―― 振り向かない方が良いと思っていながら・・・身勝手な・・
やり場の無い気持ちに小さく舌打ちをする
扉が閉まる寸前
『 沙羅!またね♪』
未来はヒョイと顔を出し笑顔で手を振ると
一寸の間を置いて扉が閉まり輝きも消え失せた
―― まったく・・そこじゃ抱き留められないじゃないですか・・・
先程とは違い未来への愛おしさか胸を満たしていった




