宿坊あやかし奇憚#41
「さぁ此処ですよ」
エレベータで最上階へと着くとカードキーを差し込む
『ひろーい!!』
―― 1フロア全部かな?
大理石の床に家具はアンティーク調で揃えられている
―― シャンデリアや燭台って・・家にある物なんだ・・・
そして暖炉って・・・
「そこに掛けて待っていて下さい。お茶を淹れますから」
指し示されたソファーは自分のベッドより大きい
『・・・は~ぃ』
未来は気後れしながら端の方にちょこんと座ったものの
落ち着かずウロウロすると窓辺に行った
都会なら眼下に夜景が広がるのだろうが・・此処は黄泉
三途の川の欄干を燈す明かりが見えるだけだ
ガラスに後ろでお茶の用意をしている死神が写る
―― ソツの無い手付き・・・沙羅って所作が丁寧だなぁ
「お茶がはいりましたよ・・・どうかしましたか?」
『な・・何でもない!!』
―― ガラスに映る沙羅に見惚れてたなんて言えない・・;
『わ~ぃ♪どれから食べよっかな~』
ピンポーン ピンポーン
未来が照れ隠しのテンション上げに入った時チャイムが鳴った
「あぁ。篁でしょう・・・未来?食べてていいですよ」
『うん♪』
まずは定番の苺のショートケーキから・・未来の顔が思わず顔が綻ぶ
『ん~♪おいしいー♪』
「やぁ。未来ちゃんお邪魔するよ」
『こんばんは♪篁さん』
死神はティーカップに紅茶を注ぎ篁に出す
「ゆっくりお茶を飲んでもられないかな?・・未来ちゃん帰らなければならないし」
『私 今日、沙羅の所に泊まるんです』
そう言うと未来は2個目のレアチーズケーキをパクリと食べる
「泊まる?・・・此処に?」
「えぇ。」
死神は微笑み未来の喰いっぷりを見つめながら答えた
―― 女を家に入れる自体、珍しいというのに・・・
いや。初めてか?
それだけ本気って事か・・・
『すぐ帰らなくちゃいけないですか?』
「普通、帰りたいと思うんだけど・・未来ちゃんは違うのかな?」
『帰りたいですよ~でも約束したんです』
「死神と?」
うん。と頷く未来
篁は死神の方を見ているが死神は気にせず未来を見ている
「じゃぁ明日の朝・・未来ちゃんが目覚めたら元の世界って事で良いかな?」
『・・・帰る時間って選べるんですか?』
「未来ちゃんの場合は選べるけど・・・」
『じゃぁ・・・もう少し後にして下さい』
「良いけど・・・どうしてかな?」
『朝、目が覚めて隣に居ないと寂しいから』
衒い無く言う未来に死神は顔を赤くしたが・・黙っている
―― こいつこんな顔もするのか・・
未来が来てから死神の表情は崩れっぱなしだったが
少なくとも篁は女を理由に顔を赤らめてる死神は見たこと無かった
「未来ちゃんはそういう・・・寂しい想いをした事があるのかな?」
死神をカラカイたい気分で篁は未来に聞くと案の上、睨んでくる
『うん。パパとママ・・』
その言葉に2人の男はハッとした様に未来を見つめた
未来の両親は何者かによって惨殺された
その場に居た未来は想像を絶する光景を目にし
気が付いた時には両親に2度と会えない状況に居た
「辛い事を思い出させたね・・・明日は死神に送って貰うと良い」
では私は帰るよ・・と言いながら篁は出て行き
死神はそっと未来を抱き寄せる事しか出来なかった




