宿坊あやかし奇憚#38
『これ・・本当に全部、食べて良いの?』
好きな物を好きなだけ・・・その言葉通り料理を頼むと
いっぱいになったテーブルを見て御満悦の未来は死神に確認した
「えぇ。勿論ですよ」
未来の隣で笑顔で答える死神
『わ~ぃ♪いただきます♪』
早速、ハンバーグとオムライスを食べながら
ビーフシチューにも箸をつけ
『ん~♪柔らか~い!!美味しいー♪』
両頬を押さえる未来
―― 京で見た時も幸せそうでしたが、これはまた・・
両頬を押さえ美味しい顔満面な未来に死神も幸せな気分になる
暫くほんわかとした幸せを眺めていると
『 ん――!?』
未来は海の幸スパゲティーを頬張りながら突然声を上げた
「どうしました?」
喉でも詰まらせたか?と死神が水に手をやると
ぶんぶん首を振る未来、漸くイカを飲み込むと
『あの世の食べ物食べちゃった・・・』
ポツリと言いナプキンで口を拭く
―― 今更、そこですか?
思わず死神は心の中で突っ込んだ
『もう帰れないのかなぁ?』
―― 普通、帰れませんが・・・
「黄泉戸喫ですか?」
笑いを堪えながら未来に聞く死神
火傷を負い死んでしまった伊邪那美を伊邪那岐が黄泉に迎えに行った時
私は黄泉の食物を食べてしまったので、帰ることは叶わぬかもしれません。
と言った話だ・・・
その後、伊邪那美に見ないでと言われたにも関わらず遺骸を見た伊邪那岐との
仲違いへと物語りは進んで行くのだが・・・
『黄泉戸喫したら帰れなくなるんでしょ?』
心配顔で聞く未来
「えぇ。でもこれは黄泉戸喫に入りません。」
『え!!ホント?!』
「黄泉戸喫は遺体と共に供えられた物を、あの世で食べる事です
此処は私達職員用のカフェですから心配ないですよ」
そう言うと死神はチーズたっぷりホットサンドを未来に食べさせようと口に運ぶ
『そっかー。良かった♪』
安心した未来はパクリと食べ、これも美味しいー♪と頬を押さえる
―― 帰れなくなっても良いんですがね・・
親鳥の様に未来にホットサンドを食べさせながら死神は思った
「御爺様は本当に未来ちゃんの為に行ったと・・・お思いですか?」
「・・・何が言いたい?」
篁が言うと半蔵は何を言い出したか解らない風な顔で聞き返した
「・・・未来ちゃんがこのままで御爺様が神世に帰ったとして
血縁者が2人きりなので問題は無い筈です。
当にそれが高木神の狙いだったんですけどね・・
御爺様は貴方が居るから未来ちゃんを残す事にしたんですよ」
「俺が・・居るから・・・?」
「えぇ。神世だからと言って全てが視得る訳ではありません
現に高木神は貴方の存在を知らなかった・・・
まぁ。こちらの登録上も、不明者リストに貴方の名前があるだけですが・・
だから未来ちゃんさえ居なければと思ったんでしょうし
未来ちゃんなら・・・
決まってしまえば、あの世でもこの世でも気にしないでしょう。
御爺様は貴方の為だけにあの娘を残す決意をされた」
「そんな・・・」
「信じなくても結構ですよ。私は私の真実を申し上げてるだけですから」




