宿坊あやかし奇憚#37
「未来に触るな!!」
「しかしそれでは・・」
「若造。自分でなんとか出来るんじゃな?」
半蔵と篁の長い睨み合いを爺の声が割ってはいる
「自分で・・なんとか?」
「そうじゃ。そのまま未来を抱いていて生き返るかのぉ?
それとも病院に連れて行き葬式でも出すか?」
「・・・・。」
「私は未来ちゃんを助けたいと思い来ました
そのままでは、体が腐ってしまいます。離して頂けますか?」
篁が再び静かに言うと何も言わず未来から離れる半蔵
篁は未来の体に手を翳すと短い呪と唱える
未来の周りは水色の膜を張った形に囲われ、ゆるりと輝いた
「これで一先ず体は大丈夫です」
篁は確認する様に結界を見回すと爺に言った
「ワシの為に手数をかけるのぉ」
「ワシの為?・・・・おい。爺!
お前のせいで未来がこうなったってのか?!」
「あぁ。そうじゃ。」
爺はあっさりと言い放つ
「このクソ爺!!!」
掴みかかろうとした半蔵の手を篁が押さえた
「何も知らないのに、そう吠えないで下さい」
「なんだとッ!!」
篁の言葉の丁寧さが返って半蔵を逆撫でる
「まぁまぁ2人共・・若造にも話さなければなるまいて」
「どういう事だ?」
「今回、未来がこうなったのは高御産巣日神のせいなんじゃが・・」
「は?」
いきなり神の名が出て半蔵は面食らった
「なんじゃ・・高御産巣日神を知らぬか?高木神とも言うが・・
造化三神の1柱で天照大神の補佐をしとる」
「いや。それは知っているが・・・何故、こんな爺が・・」
「昔々、兄弟に殺された時、神産巣日の神に助けていただいたのじゃが
その大恩故、国譲りし黄泉へと行った後も何かと連絡は取り合っていたんじゃ」
「兄弟に殺された?・・・国譲り?」
「黄泉もちーっと暇でな・・・人に成り度々この世を楽しんでいたんじゃが・・
再三の帰還を無視したのが、とうとう高木神にバレてしまってのぉ~
未来が居なければ帰るだろうという事で今回の件じゃ。
わしが帰れば型が付くじゃろて・・
神産巣日神が怒られるのも可哀相だしのぉ~」
「・・・・・・・大国主?」
「そうじゃ。今の話で解らなかったか?」
「未来の祖母は何人目の嫁なんだ・・」
「200人目だったかの?あれは歴代に残る美人じゃった・・
まぁ。鬼の血を引いてるせいもあるかもしれないが」
目を細め想いを馳せる爺
「いや。それより・・帰る帰るって気軽に言ってるが・・
この世・・つまり此処での扱いはどうなる?」
「まぁ。死んだ事になるのぉ」
「未来は1人になってしまうじゃないか・・」
「若造。お前が居るじゃろ」
「そういう問題ではないだろ・・血縁が誰も居なくなる」
「じゃぁお前が逝くか?」
「俺の命で足りるなら・・・」
「未来に命を賭けてくれとは・・・嬉しいがのぉ・・
寿命の無い、お前ではダメじゃろう」
爺の言葉を聞き半蔵の片眉が上がる
「じゃぁちょっと行ってくるかのぉ~」
爺は近所に買い物でも行く様な気軽さで言うと部屋を出て行った
「爺・・・」
半蔵はただ黙って見送るしか出来なかった




